宮崎県児湯郡新富町に拠点を置く『こゆ財団』は、「世界一チャレンジしやすいまち」というビジョンの下、地域資源を活かした特産品販売と起業家育成を軸に地域経済の創出を行う。ローカルベンチャーに必要なのは、ものごとの見方・捉え方を拡張すること。その感覚を鍛える5冊とは。
高橋邦男さんが選んだ、地域を編集する本5冊
『こゆ財団』の活動は、ローカルベンチャーそのものです。なので、ここではローカルベンチャー関係のビジネス書などを紹介するべきかもしれませんが、私にとってより重要なのは、今回選書した本が教えてくれた、ものの見方・捉え方でした。
『知的創造のヒント』はユニークな発想を生むためのヒントがたくさん詰まっていて私のバイブルです。編集者として仕事をしてきたので深く実感できるのですが、この本には編集というのは特定のスキルではなく、すべての人が編集者だと書かれています。誰もがエディターシップを持ち、今日一日を一冊の雑誌にするつもりで、一日一日を編集して生きる。表紙や特集記事を周囲の素材から選び、切り取り、組み合わせる。そうすれば、ただの一日が特別な一日に見えてくる。これこそが編集の醍醐味だと感じさせてくれます。
私はローカルベンチャーにも、エディターシップが大事だと思います。地域資源AとBを見つけ出し、掛け合わせて新しい価値をつくる。地域資源に対する見方・捉え方を変えることで、生まれる価値は無数に広がると思います。
『わかりあえないことから』は、コミュニケーションについての基本姿勢を示してくれた本。劇作家である著者の平田さんはロボットを使った演劇などを通し、「コミュニケーションとは何か」を考察しています。印象的なのは、他者と話すことで違いを感じることが大切、という考え方。だからお互いその前提に立って、違いを感じることこそがコミュニケーションだと。わかりあえない前提があれば、話の仕方ひとつも大きく変わります。地域にはいろいろな方がいます。まずはこの前提に立つのが大事ではないでしょうか。
『幸せのメカニズム』は、幸福学者の前野隆司さんの本です。前野さんは元々ロボットの研究者でもあります。前述の平田さんもそうですが、僕はロボットとは何かを突き詰めて、人間の研究に至った方の本が好きなのかもしれません。
前野さんは、長続きする幸せには4つの因子があるとおっしゃっています。「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「あなたらしく」です。ローカルベンチャーもそこに関わる人がいかに長続きする幸せを感じられるかが、ひいてはビジネスが長続きするかにも関わると思っています。そうした理由から、僕らはこの4つの因子を、町全体でも浸透させたいと思っていて、『こゆ財団』のコアバリューにもしています。
▶ 一般財団法人『こゆ地域づくり推進機構』執行理事|高橋邦男さんの選書 1~2
▶ 一般財団法人『こゆ地域づくり推進機構』執行理事|高橋邦男さんの選書 3~5