高知県で「社会を変える市民の学び舎」をコンセプトに2014年に設立された土佐志民大学。新しい視点をもって市民活動に関わりたいと集まった人たちのNPO『高知市民会議』から誕生した。このNPOの理事長で学長を務める東森歩さんは、若い世代を応援する講座を意識して開講している、と話す。3月の日曜日、高知の第二次産業にスポットを当てるプログラム「made in 高知を造る会社たち」に参加した。
「made in 高知」に携わる多様な世代が、膝を交えて語り合う。
「高知県の第二次産業は全国で何位くらいか知っていますか?」。この日、最初に登壇した高知県工業会の西内豊さんが問いかける。工業製品出荷額を2016年速報値でみると全国46位。これは沖縄県に次ぐ低さ、ではある。
しかし数字をよく見ると、7年前と比べて出荷額で1000億円以上増加するなど、実は、高知県では年々、第二次産業が盛んになりつつある。山と海の恵み豊かな環境が働きやすさという観点から働く人にも選ばれている。この日の講座には、市内の工業高校を卒業し、もうすぐ社会人として歩み始める予定の高校生6名を中心に、高知の第二次産業に関心のある人たちが集まった。高知県産の竹で集成材など高品質の加工品を生産する『コスモ工房』、見本市に出展するための製品や装置の模型を製造する『サーマル工房』、そしてNCフライス盤を製造したりマダイの養殖も手がける『山崎技研』の3社が登壇した。それぞれに特徴ある分野を極めながら、社会課題を先取りし、環境問題に対応し、通信環境を最大限に活かしながら、国内外で仕事を生み出している企業ばかりである。仕事の内容を聞いたあとは、理想の職場について高校生と大人たちがテーブルを囲み、一緒に考える時間となった。
高知のものづくりの多様さを多くの人に知ってほしいと、今回の授業を企画した牛窓昌代さんは、第二次産業のおもしろさを「オーダーメイドでものづくりをしていくこと」と説明する。『山崎技研』で働く予定の若者は、子どもの頃から機械が好きで高校でも機械の勉強をしてきたが、3年生になって訪れた工場見学で仕事の現場を見て企業への就職を決めた、と話す。ハウスメーカーに勤める予定の若者も、仕事を通して人の暮らしに向き合えることを知り、高知での就職先を決めた、と話してくれた。
「高知はいつも世の中の課題を先取りしているんです」と東森学長。たしかに県内の高校を卒業しても進学や就職で他県に出ていく人も多く、人口流出は地域にとって看過できない問題ではある。けれども、土佐志民大学のスタッフの中にも、Uターンを機にNPO活動を始めた人もいる。街中でも新しいフードビジネスが立ち上がっている。何より、若者の話に耳を傾ける大人たちがいる。「made in 高知」に携わる多様な世代が、膝を交えて語り合う、魅力的な講座だった。
土佐志民大学
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