「第2回「道の駅」災害時支援事業研究会」が開催された
災害時の支援拠点の役割を担っている「道の駅」の今後のあり方について、「道の駅」災害時支援事業研究会が東京国際フォーラムで開催された。(主催:一般社団法人 民間活力開発機構)
来賓である熊本県阿蘇市長・佐藤義興さんは「2019年4月14日で熊本地震から3年が経った。災害時、住民を守るため、自治体は何ができるかを常に模索している。避難所となる小中学校とは別の、手の届かないところに支援がいきわたるような体制を道の駅に担ってもらえるよう、タッグを組みながら整えていく必要がある」と話した。
さらに、阿蘇市経済部まちづくり課課長・荒木仁さんは、災害支援拠点としての道の駅の実際について講演した。地震後の初期段階で、道の駅「阿蘇」が果たした役割について「比較的大きな余震が続いていた中、支援物資の不足やインフラの復旧もしていない中で、避難所への炊き出し、支援物資や緊急車両の中継基地として機能した。また、手書きの道路情報掲示、SNSや地域FMを通じて被災箇所情報の発信を行った」と話した。課題として挙げられたのがトイレの問題。「断水時に対応できる貯水タンクや、トイレは夜も必要なので停電時の電源対策が必要だ」と話した。
実施主体である道の駅の事例共有として、「道の駅と防災」をテーマに、道の駅「庭園の郷 保内」駅長・加藤はとこさんは「道の駅は、道路利用者のための「休憩機能」、道路利用者や地域の方々のための「情報発信機能」、そして道の駅をきっかけに町と町とが手を結び活力ある地域づくりを共に行うための「地域の連携機能」を持つ場所とされている。しかし、今後は災害支援機能や子育て支援機能の充実が必要」と語った。ロングライフ食品推進協議会のメンバーでもある加藤さんは「ロングライフ食品が災害非常食という側面を持っていることから、全国にある道の駅でロングライフ食品の普及活動するという取り組みをしている。ポップの作成やスタッフ教育を通じて、ロングライフ食品やローリングストックの概念が道の駅から波及するよう地道な活動を続けていく」と述べた。
道の駅における災害支援機能の充実は、近隣住民だけでなく観光客や利用者にとって強い味方になるのではないだろうか。
ロングライフ食品や防災用品を扱う企業からもプレゼンテ―ションがあった。山崎製パン株式会社からは道の駅ベーカリー機能について、「通常時はカフェと併せた休憩機能、地域の特産物の地産地消、地域住民の雇用の確保として機能しているが、非常時には賞味期限90日の特性を活用した冷凍生地のローリングストックにより非常食としての備蓄の側面をもたせる」と地域の導入事例を織り交ぜての提案があった。その他には株式会社AOIから水害・浸水など緊急時の初動対策に効果を発揮する「アクアブロック(吸水性土のう)」、江崎グリコ株式会社からは乳児用液体ミルク「アイクレオ赤ちゃんミルク」における災害時の活用について提案があった。
災害イツモマインドセットプロジェクトの事業会社である株式会社フェザンレーヴからは道の駅の災害支援拠点化でお手伝いできることとして、「覆ってしまった3つの防災の常識」についての話があった。1つは自宅の押し入れや会社の倉庫に「非常用持ち出し袋」を用意していても外出時にはそれらを常に携行しているわけではないこと。2つ目は3日間分の食料や飲料水の備蓄を準備していたとしても3日たっても救援物資は届かないところが多かった。そのため被災者は公助ではなく、自助や共助に頼らざるを得なかったということ。3つ目は避難所へ身を寄せたとしても、避難所は、暖房面・衛生面・避難者同士のトラブルなど想像以上に厳しい場所であり、結果的にマイカー避難が多くなっているということ。そういった中で、被災地の避難所で望まれるものであり、支援物資として届くことが少ない、非常用トイレの必要性を話した。飲料水以外の水まわりに対応できる「断水時BOX」や暗闇の中でも両手が自由になるヘッドライトや携帯電源が切れても情報が入手できる薄型ラジオが入った「常時携行パック」の紹介があった。
災害時の支援対策には民間活力が重要になる。しかし、それが成立するためには平時から道の駅とビジネスを通じて交流がなければならない。今回の研究会では、被災地からの事例共有や民間企業からの提案があったが、道の駅の災害支援事業が今後どうしたらビジネス的に成立するのか。国や地方自治体の支援のあり方など、より一層の議論の必要性が確認された会だった。
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