今月のまちのプロデューサー 早川 輝さん
今回紹介するのは、岩手県宮古市で高校生に社会参加の機会を提供する『みやっこベース』の早川輝さんだ。地元の魅力や課題を発見し、宮古の復興・発展に向けた行動を起こすための「高校生サミット」や、コミュニティスペースの運営、放課後学習のサポートなどを行い、当事者意識を持って地元の将来を考えられる若者を増やすことに力を注いできた。震災から6年が経ち、今もなお活動を続ける理由に迫った。
早川さんは大学を卒業後、オーストラリアで2年間のワーキングホリデーを経験。改めて日本のよさを実感し、旅行関係の仕事をしたいと就職活動を始めようとしていた矢先、東日本大震災が起きた。「被災地のために自分も何かしたい」と、縁もゆかりもなかった宮古市を訪れた。
夏までに区切りをつけようと始めたボランティアだったが、宮古の若者が県外から来た人たちを巻き込んでまちを盛り上げようとしている姿に感銘を受け、「自分だけ帰るなんてできない」と思ったという。同時に、「よそ者の自分だからこそ、ここでできることは多いのではないか」と感じ、宮古に残ることを決意した。県外から来る物資やボランティアはありがたく、きちんとした受け入れ体制を整えたいと考え、その需要と供給をつなぐ懸け橋になりたいと強く思ったのだった。
6年が経ち、早川さんは「被災地」という言葉を使うことをやめた。復興が進むにつれ、現地の若者の間に芽生えているのは、「被災地の宮古をなんとかしよう」というよりも、震災を機に「自分たちのまちをもっとよくしたい」と思う気持ちだからだ。でも、何から始めればいいか分からない。そんな地元の高校生のために、まずは集まれる場所を提供し、彼らの頭で考えるきっかけをつくるのが、彼の役割だ。
事業を運営するための寄付は、日が経つにつれ、明らかに集まりにくくなった。来年度も続けていくことができるか分からない綱渡り状態だが、「意地でも続けていく」という。それはひとえに、「仕組みを残すことが、今の自分の役目だから」だという。たとえ自分がいなくなる日がきても、ここでできたコミュニティを維持する体制づくりはしておかなければ。そのために、必死でもがいている。「僕が何者かなんて関係ない。地元の人たちが主人公であって、ただ僕は真摯に向き合い、できる限りのことをするだけです」と語る早川さんの声は力強い。
高校生たちは今、早川さんの思いを汲んで、自ら助成金を獲得してイベントを開催するなど、次のステップに向けて動き始めている。みんなの力で宮古を盛り上げたいという彼の気持ちは、確実に未来につながっている。