和歌山県田辺市と都市部をつなぐ関係人口講座「たなコトアカデミー」を、地域に興味を持つ大学生を対象として田辺の食をテーマに開催しています。東京で田辺の食の魅力を伝えるマルシェを開くため、受講生が生産者のフィールドを訪れました。
大学生が田辺の食を学ぶ、6年目の「たなコトアカデミー」。
和歌山県田辺市と都市部に住む人の関係を育む講座「たなコトアカデミー」は、2023年で6年目を迎えた。主に首都圏に住む人々と田辺で活動をするプレイヤーがつながり、参加者それぞれの視点で田辺に関わる人が増えつつある。これまでは受講生の年齢を限定せずに広く募集していたが、今回は対象を大学生に限定する新たな試みを行った。
講座を主催する同市たなべ営業室の担当者は「大学進学の際に田辺から離れてしまう若者が多いため、この地域は大学生との関わりが比較的少ない傾向があります。また、過去5年間の関係人口講座開催の実績を元に新たなチャレンジをしたいという思いで、対象を大学生に絞る今までにないアプローチをしました」と話す。そして、一次産業が盛んな地域性から「食」を入り口にすると首都圏の人々とのつながりをつくりやすいと考えて、今回のゴールを東京での田辺の食品を扱うマルシェ開催に設定した。講座には首都圏と関西圏から12人の大学生が集まり、2023年9月5日から7日の3日間、田辺の食について学ぶ現地フィールドワークが実施された。
ローカルヒーローと出会う
現場で感じたことをマルシェで表現するために。
田辺の景色を一望できる高尾山の頂上へ向かい、食の豊かさを生み出す、海も山もある地形を知ることからフィールドワークは始まった。その後受講生たちは、グループごとに中心市街地を散策してまち並みや雰囲気を体感。そして、古民家を改修した高校生の自習スペース『トウザン荘』で、本講座の「地域ナビゲーター」を務める山田かな子さんのレクチャーを受け、よりよい学びにするための生産者への質問を考えた。
2日目は生産者の方々から田辺の食を学ぶため、動きやすい服装に着替えて、米の生産や販売を手がける『たがみ』代表の田上雅人さんの畑へ。カボチャが栽培されていた畑の防草などに使われるシートをはがす作業を手伝った。
そして、梅や柑橘を栽培する『十秋園』五代目園主の野久保太一郎さんの畑を訪れて、田辺の特産物である梅について話を聞いた。受講生たちは、塩漬けにした梅を「梅干しコロコロ」を使ってひっくり返す作業を体験。このていねいな作業を加えた梅干しは約10年間も保つという話に、受講生たちは感心していた。
最後は、柑橘の栽培・加工のほか、耕作放棄地や鳥獣害被害などの地域課題を解決する事業を行う『日向屋』代表の岡本和宜さん、地域おこし協力隊隊員で岡本さんの右腕として働く田中和広さんとの時間。担い手不足という理由から同社が借りた梅畑を見学して、今後の活用方法を考えるワークショップを行った。
最終日、ボリビアにある「ウユニ塩湖」のような景色が見られる田辺湾の岬「天神崎」を見学し、産直市場『よってって』で田辺のお土産をリサーチした後、マルシェでどう田辺の食を伝えるのかを話し合った。これまで受けたレクチャーやこの3日間で感じたことをベースにマルシェの企画について真剣に考える受講生たち。2024年2月4日のマルシェ開催までの5か月間、切磋琢磨する日々が続きそうだ。
田辺を体感
田辺を知る
食を知る
振り返る
参加してみての感想
受講生:吉村悠司さん
自身が学生団体でマルシェに出店しているので、そのノウハウを生かせたら。田辺で暮らす人の思いを聞いて、課題解決に近づく行動につなげていきたいです。
受講生:土肥佐奈子さん
自分たちのアイディアでマルシェが企画できるのは貴重な機会。農家さんのパワーを感じたのが印象的でした。田辺の魅力を伝えるマルシェにしたいです。
photographs by Katsu Nagai text by Mari Kubota
記事は雑誌ソトコト2024年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。