【ソトコト×ヤモリの空き家エコノミー連載】第1回目(中編)。日本の各地域を再生して、地域を活性化、関係人口を推進していくプロジェクトが「ソトコト×ヤモリの空き家エコノミー」。毎回ゲストを迎えてソトコトと一緒に対談。
日本の築古戸建ての再生賃貸事業を手掛ける株式会社ヤモリ代表の藤澤正太郎さんが毎回、ソトコトと一緒にゲストを招いて、日本の各地域の空き家から推進する地域活性化、関係人口作り対談。
前回の第1回目(前編)に続いて、中編として、ソトコトの会長、大久保清彦と一緒に、空き家の魅力と地域活性化について語ります。今回の中編では、空き家の活用事例を写真付きでお届けします!
制約があるから、クリエイティブが光る!
大久保 「住まいを編集していく」っていうのは、まさにヤモリさんが今やってることで、編集者目線で見ると、すごく面白いと感じます。これまでのストーリー(歴史的背景)と、現代のライフスタイルをどう融合させてカッコよく見せて編集していくとかいった観点が大事です。
しかも、空き家とか古民家って、ゼロからでない…ある種の「制約」があるじゃないですか。 間取りが決まってるとか、構造が簡単にいじれないとか。その中で「どう魅せるか」「どう活かして残すか」って。これは編集力にかなり左右されますよね。
藤澤 そうですね。「制約」の中にクリエイティブが宿る!ってよく言われますけど、それって、まさに空き家活用の本質です。自由にゼロから作るよりも、既にあるものの中からどう組み合わせていくか、どう意味を見出すかっていう方が、むしろクリエイティビティが発揮されて面白いですよね。制約があるからこそ、クリエイティブが光ると思います。
編集によって、誰も住んでいなかった、ただの古い家が「カッコいいい暮らしの場」になったり「人が集まる拠点」になったりするわけで、そこには文化をつくる力がある。 それって、まさにソトコトがやってきたことと重なると感じました。
当然、資金面の制約もありますが、工夫しながら物件に落とし込んでいく過程が醍醐味です。
日本の空き家は、海外からも注目のカッコいいコンテンツ
藤澤 面白いのが、空き家を見てカッコいいいって価値を感じでくれるのは、実は日本人よりも海外の人が多いんですよね。 日本の各地域にある空き家に対して、近くにいる日本人は見慣れてしまっていて、ワクワクした価値を感じれない…。しかし、海外から旅行で日本に訪れた人たちが、空き家を見て「これって活用されないの?」「なんでなの?」って…。このギャップが面白いなと思っています。
大久保 海外では、例えばイタリアやフランス、スペイン…ヨーロッパでは、新しい民家を作るっていうのが基本ないんですよね。石の文化だから、築100年ではまだまだ新しい部類。だからヨーロッパの建築士の方って、新しく家を建てる仕事よりも、リノベーションのデザインの仕事の方が遥かに多いと思います。
藤澤 だから、リノベーションをする社会的意義とか、歴史的なものを残していくカッコよさっていう概念が根本にあるんですね! 空き家再生は最後の出口ではあるモノの、実は最初の入り口として、古い家や中古物件がこれだけ感性を揺さぶるようなカッコ良さに変わるんだって…。そんなドキドキワクワクするコンテンツに変えて、その面白さを伝えていく…これが空き家活用の裾野を広げていく上では大事ですね。

掛け算のリノベで、最高にカッコよくなる空き家
大久保 そういった意味で、「ぽたぽた」(※藤澤さん自らが富山県で再生した物件)を見たときに、空き家がこんなカッコよく変わるんだっていうのが、すごく意外な感じがして、むしろ新しい家を高いお金出して買うよりは、こういう空き家リノベーションの方が全然カッコいいじゃん!って率直に思いました。「カッコいいの掛け算」が生まれているなって。でも、新築だとその掛け算があまりイメージできない…。
藤澤 富山は高岡市にある「ぽたぽた」の物件では、古くから続く和紙工房で唯一の継承者と言われる和紙職人に協力いただき、こういう家だったら和紙使ってみよう…という地域との関わりや広がりが生まれました。
こうした地域の空き家と地域の和紙の組合せは、リフォーム物件とか中古物件ならでは、地域ならではですね。

大久保 それは、やっぱり時代背景もあると思います。昭和の時代は新しいモノがいいとされていた時代で、何でもかんでも大量生産で新しいものがモテはやされた。
一方、今の世の中はSDGsとかウェルビーイングの風潮があり、環境は共生が大事。さらに高度経済成長は終わり、新しいムーブメントが生まれにくくなってきている。 そういった時代において、これからは住宅事情は空き家活用に注目が集まってくると思います。時代とシナジーがあるというか、もっと空き家に共感を持ってくれる人が多くなっていくかとは思います。(次回、後編に続く)

【藤澤正太郎プロフィール】
株式会社ヤモリ代表取締役。2011年に慶應義塾大を卒業後、三菱商事株式会社に入社。インフラ事業の海外案件とアセットマネジメントに従事。南米チリに4年間駐在。その後、NY本社の不動産ユニコーン企業であるKnotel IncのJapan GMを務める。2018年に株式会社ヤモリを創業し、日本の中古戸建て市場の活性化を通じた地方創生を目指す。