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多様性

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温かい関係づくり、多文化共生を目指す、福島県郡山市。

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勉強や仕事で日本に暮らす外国人を見かけることが増えてきたけれど、じっくり話をしたり触れ合ったりする機会は実は少ない。そこで、地域の人と外国人が顔を合わせて互いの魅力を知るプログラムが福島県郡山市で行われ、たくさんの笑顔が生まれました。

豊かな自然はもちろん、地域の魅力は人の温かさ!

 東京駅から新幹線に乗ってわずか78分で郡山駅に到着する。駅周辺には高いビルが立ち並んでいるが、国内で4番目に広い湖の猪苗代湖や「日本百名山」にも選ばれる安達太良山を有する豊かな自然に囲まれた地域でもある。そんな郡山市で今年7月に新たなプロジェクト「魅力体験レビュー」が実施された。県内在住の外国人が農村生活を1泊2日で体験するプログラムに参加し、地域の人々との交流を通じて発見した魅力を国内外へ発信するという内容だ。
このプログラムが実施された背景には、これからの国際社会に向けた郡山市の在り方を考えるなかで明らかになった衝撃的な事実があったという。「2年前に市内の専門学校に通う留学生にアンケートを取ったところ、居場所がないという回答がありました」と郡山市役所国際政策課の岩浪正人さん。
留学生らは、学校、家、アルバイト先を行き来するだけで、地域の人と交流する機会がほとんどなかったのだ。「“多文化共生”を目指していくなかで、非常に重たい言葉でした。そこで、学生に限らず市内在住の外国人と地域の人々とをつなぐ第一歩としてこのプログラムを企画しました」。参加者募集をSNSで行ったところ定員を超えるほどの反響があり、県内在住のベトナム人約20人が参加することになった。
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のどかな風景が広がる逢瀬町地区。農業が盛んな地域。
 今回の体験の舞台は、市内中心部から車で約30分の場所にある、のどかな風景が広がる逢瀬町地区だ。公民館の一室に集まって、最初にちまきづくりが行われた。もち米を笹の葉に包んで茹でる伝統食で、笹の葉が手に入るこの時季にしか食べられない季節の味だ。地域のお母さんの一人が前日に摘んできたという笹の葉を手にして、体験がスタート。参加者らは日本在住歴もまちまちで、日本語が堪能な人もいれば、ちょっとたどたどしい人も。お母さんらはそんな状況に躊躇することなく、身振り手振りでもち米の包み方を教えると、参加者らはあっという間に上達してちまきづくりに夢中になった。
お母さんたちはなぜこんなにも手馴れているのだろう。『郡山ふるさと田舎体験協議会』会長・勝又俊博さんがその答えを教えてくれた。「以前から農家民宿の事業などに取り組んでいて、これまでに首都圏在住の外国人や、研修で来日した人などいろいろな国の人を迎え入れてきたんですよ。だから、ベジタリアンやイスラム教のハラルにも対応できますよ」という頼もしい声を聞かせてくれた。そして、逢瀬町地区に魅せられて東京から移住し、今回のプロジェクトに一緒に取り組んでいる『おおせのとおり』代表の中潟亮兵さんは「手料理を振る舞うのが好きなお母さんたちにとって、町に来てくれた人たちに喜んでもらえるのが生きがいなんです。少々頑張り過ぎてしまうので、そこまでは大丈夫だよと声を掛けるのが僕の役割なんです」と笑って教えてくれた。
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笹の葉でもち米を包む方法をお母さんに教えてもらう。
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みんなで記念撮影。新しい体験の連続で、すぐに打ち解けあった。
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「逢瀬町地区在住の、 とある農家さんに惚れて移住しました!」と話す、『おおせのとおり』代表・中潟亮兵さん。
 このちまきづくりの後、餅つき、アスパラ収穫、牛の世話を体験して1日目は終了。2日目のプログラムでは、参加者たちは逢瀬町地区の里山散策と湖南町地区の郷土料理づくりの2つに分かれ、地域の人たちとさらに交流を深めた。里山散策のグループは田んぼの中にある里山環境体験施設『なんだべ村』を訪れて、青竹採りや竹細工作りを体験。参加者が一番楽しみにしていたという、流しそうめんを前に地域の人たちが準備をしていたところ、進んで手伝いをする参加者も出て、旧知の仲のように自然と笑い声が聞こえ始めた。
最後の振り返りの時間で、今回のお礼にベトナム料理を教えたいと参加者らが伝えると、お母さんたちからも、ぜひやってほしいと喜びの声。一歩ずつだが着実に、新たな居場所ができる気運を感じた。
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アスパラ農家を訪問し、収穫の仕方を教わった。
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牛の毛のブラッシングや、えさやりを体験した参加者たち。
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『なんだべ村』での昼食の様子。地域の野菜の天ぷらがいっぱい。おにぎり やお漬物といっしょにいただいた。

参加者の声

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左からホァン ティ タムさん、グエン テイ ミン トウさん、ファム ディン トアイさん。
ホァン ティ タムさん
福島弁は難しいけれど慣れてきて、地域の人たちはとても優しい。コロナ禍でストレスを抱えているベトナム人が多いので、もっと地域で遊べるイベントがあったらと思いました。

グエン テイ ミン トウさん
プログラムの内容を見て「流しそうめんに参加してみたい!」と思って参加しました。思い出のためにたくさん写真を撮りました。今度は浴衣を着てお祭りに参加してみたいです。

ファム ディン トアイさん
日本在住10年ですが勉強に仕事に忙しく、自然や農業に触れたくて参加しました。一緒に参加した妻がもうすぐ出産で、地域の方々が祝ってくれると言ってくれてうれしかったです。

逢瀬町地区の魅力を伝える動画コンテンツも。

イギリス出身で日本に40年以上暮らし、日本の魅力を海外に伝えているアダム・フルフォードさんが逢瀬町地区を取材して制作した番組が、NHKワールド「CATCH JAPAN」で放映された。「日本に昔から残る生活文化や風習が、持続可能な地域づくりに重要な役割を担うと考え、以前から逢瀬町地区に注目してました」とアダムさん。開拓や疏水の歴史があり、外から人を受け入れてきたこの地域には、おもてなしの心が伝統として残っていると実感したそう!
こちらから視聴可能⇒https://catchjapan.jp/20210625-04
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photographs by Takeshi Konishi   text by Mari Kubota
記事は雑誌ソトコト2021年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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