MENU

多様性

連載 | リトルプレスから始まる旅

世界をきちんとあじわうための本

  • URLをコピーしました!
目次

日常にある「世界」

「本を読む」ということは、どういうことなのだろう。
楽しいから読む。自己啓発や、必要にかられて読む。話題になっているから読む。または、世界を知るために読む。
今日、本を読んで世界を知ることができるのだろうか。それは過去のことで、現在では、テレビやインターネットが世界を知るための道具であると考える人が多いかもしれない。その「世界」とはなんだろう。シリアや中国、アメリカやロシア、政治や経済、事故や事件、芸能やスポーツのことと考えるのだろうか?
今回紹介するリトルプレス『世界をきちんとあじわうための本』では、その「世界」が、少し違って見えるかもしれない。
呼吸すること、ペンで何かを書くこと、頬にあたる風に季節を感じること、ぴったりの靴を選ぶこと、カバンの中身に持ち主の計画と準備を見ること。

意味ではない

あらゆる人が暮らしのなかであたりまえにしている行為、営み、見慣れている日常の中にも、なかなか気づけないでいる「世界」。特別なものは何もなく、呼吸や靴や掃除といった、ありふれていて当然のことゆえに普段は気づかないことについて考えてみる。自分の行為、経験について考ると、今日一日の行動や経験でさえ、ほとんど残されていない。

あたりまえ

消えてしまった行為や記憶の中にあった世界の自分にとっての意味について考えてみる。そうすると「世界」があるためには、「意味」が必要であることに気がつく。自分の中に存在していない世界が存在することに気がつく。テレビやインターネットの世界では「意味のあるもの」だけが流れ、その結果「分かりやすいもの」だけで構成された、現実とは異なった「歪んだ世界」があふれる。

世界をきちんとあじわうための本

「歪んだ世界」は「ありふれた日常」と繋がってはいない。「ありふれた日常」こそが「世界」と繋がっている。『世界をきちんとあじわうための本』を読むだけで「ありふれた日常」に「意味」を見ることができるようになるわけではない。「世界」はあたりまえのようにあって、すでに誰もが味わっているけれど、それをきちんと味わい、意味を見るためには、いつもと違った「何か」が必要になる。それは、人との出会いや自分の体験では十分ではなく、その「ありふれた日常」の中にある「本との出会い」が導いてくれるものであると思っている。

今月のおすすめリトルプレス

『世界をきちんとあじわうための本』

見慣れていながら、なかなか気づけない世界に出会うためのガイドブック。企画:山崎剛・木田歩・坂井信三(ホモ・サピエンスの道具研究会)2016年9月、ELVIS PRESS発行225╳165ミリ(92ページ)、1836円

『世界をきちんとあじわうための本』発行人より一言

イベント

自費出版された原本に感銘を受け、より多くの人に届けたいと増補新装版を刊行することに。既知の(はずの)世界に再び出会うために、立ち止まりながら繰り返し、ページをめくってもらえたらと思います。写真は、彼らと不定期で日曜日の朝に行っているイベントのひとコマ。この回は「あいだ」がテーマ。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね
  • URLをコピーしました!

関連記事