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多様性

ソール・ライターの、身近な日常。『Saul Leiter: In Stillness』

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 今年1月に東京都渋谷区にある『Bunkamuraザ・ミュージアム』で開催され、新型コロナウィルスの影響で中止となった「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」。同展のアンコール開催が実現し(9月28日まで)、見慣れた風景を大胆な構図でとらえたライターのスナップショットは、再び多くの観客を魅了している。 

 ライターは2006年写真集『Early Color』を出す83歳まで世界に知られることのなかった写真家だ。若い頃は『Harper”s BAZAAR』誌など有名ファッション誌で活躍し、ニューヨーク5番街のペントハウスにスタジオを所有するほど成功していた。でも50代になって突然、商業写真を一切やめ、ただ自分のためだけに写真を撮り、絵を描いて過ごすようになった。発表さえほとんどしないのだから、知られることがないのも当然だ。

 先日、彼が長年暮らしたイースト・ヴィレッジのアトリエを写した写真集『Saul Leiter: In Stillness』が発売された。手がけたのは、生前交流があった写真家の井津由美子氏。その写真の数々を見れば、彼が日々の生活をどれだけ大切にし、豊かな人生を送ってきたのかがわかる。アパートの壁一面に飾られた絵、10代のときに初めて両親に買ってもらったデトローラ製のカメラ、愛用の椅子、大量の未現像フィルム、パートナーだった画家のソームズや家族との写真……。「美しいものを見出すには、遠い夢の国へ行く必要はない、それは身近な日常にある──」。コロナ禍で日常を見つめなおす機会を与えられたいま、そう語ったライターの言葉が、じわりと胸に響く。

目次

『Saul Leiter: In Stillness』

Saul Leiter: In Stillness

(著者:井津由美子/リブロアルテ)

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