創造性の仕組みを生物の進化から学ぶ「進化思考」を提唱するデザイナーの太刀川英輔さん。防災というジャンルでも、災害時に役立つサイト「OLIVE」や、防災ブック『東京防災』をデザイン。ウェルビーイングの視点を交えながら防災を考える5冊を選んでくれました。
NOSIGNER代表/進化思考家/デザインストラテジスト|太刀川英輔さんが選んだ、ウェルビーイングを感じる5冊
防災は、自分の身は自分で守る「自助」、自治体など公共に助けてもらう「公助」、市民やコミュニティで助け合う「共助」の観点で実践することができます。なかでも、共助の観点は重要です。10年前に起きた東日本大震災はもちろん、最近も線状降水帯によって起こる集中豪雨による河川の氾濫など地球温暖化が原因と考えられる自然災害が増えているなかで、防災対策においても民間同士、あるいは民間と公共の協力が不可欠になってきています。この共助という考え方はウェルビーイングにもつながります。共助もウェルビーイングも、互いを慮る関係性の上に生まれるものだからです。
世の中は複雑なネットワークでつながっています。どこか1か所が破綻するとすべてが壊れてしまう脆弱なネットワークもあれば、部分的に壊されても互いが補い合う仕組みを持った共助のネットワークもあります。『レジリエンス 復活力』は、自然、生物、人間、ネットワーク、社会などが受けた大きなダメージからいかに復活したかが書かれた本で、2010年のハイチ地震のときの市民の対応など、実際に起こった災害や混乱の実例を挙げながら、つながりや共助の大切さや、復活に必要な仕組みなどを提示しています。
レジリエンスとは立ち直る力。関係の上にあるだけではなく、危機的状況にも壊れにくいレジリエントなものとして心のなかにもあるもの。互いに支え合えている状態を自覚することで、気持ちも強く保てるでしょうし、それはウェルビーイングな状態とも一致すると捉えられます。
そして、冒頭にも触れた地球温暖化に対して、どう立ち向かえばいいのか? 防災という意味でも重要な取り組みを紹介した本が、『ドローダウン』です。『パーマカルチャー』が個人的、家族的なエコロジーライフの指南書だとすれば、こちらは産業界の持続可能な取り組みを紹介した本。「自動車業界がEVの生産に転換するのはそういう意味があるのか。だったら次はEVに乗ろう」など、持続可能な社会への動きを大きな視野で理解しながら自分の行動指針を見つけることができる一冊です。
そんなふうに、人と社会との関係や、人と自然との関係を知覚することで、ウェルビーイングにつながることができる気がします。関係のなかに、自分のあり方が役割として表れたり、使命に気づいたり、自分自身が安定したり。関係を知覚し、その大切さに気づくことでウェルビーイングに導かれるように思います。
▶ NOSIGNER代表/進化思考家|太刀川英輔さんの選書 1〜2
▶ NOSIGNER代表/進化思考家|太刀川英輔さんの選書 3〜5