皆さんは、「ラーメン」というとどんな味を思い浮かべるでしょうか。例えばカレーであれば、誰もが同じ味を思い浮かべることでしょう。カレーパン、カレーうどん、カレー煎餅……どれもカレー味です。ラーメンも第2次大戦以前に中華そばや支那そばと呼ばれていた時代まで遡れば、誰もが想像する味は醤油味だったはずです。鶏ガラや豚骨のスープが醤油で調味され、豚肉を茹でて醤油に漬けたものがタレとなり、ネギとほうれん草とメンマが載っている、これこそがラーメンでした。
しかしながら、今のラーメンはまさに自由で広大。大枠には醤油、塩、味噌の3つの味付けがありますが、どれも大きく異なります。さらに豚骨となるとスープ由来のため、タレ由来の前者に比べもっと複雑になります。

ところで、全国にはそれぞれのご当地ラーメンがあります。その源流を辿ると、明治の文明開化とともに中国・広東省の味は東京へ、山東省の味は北海道へ、福建省の味は九州、沖縄へと伝播した過去があります。広東省のあっさりとしたスープは、味の軸が塩で調味されていましたが、日本人が醤油を使い始めたことで日本式ラーメンが生まれました。さらに油脂を抑えたり、塩味を控えたり、メンマを入れたりといったアレンジが加わり、日本ならではのラーメンへと変容していったのです。
戦後になり、長野県出身の蕎麦職人たちがラーメン屋に転向。蕎麦つゆかえしがラーメンにも使われるようになりました。荻窪の『丸長』や『春木屋』が元祖となり、それ故に「中華そば」と呼ばれるようになったという逸話もあります。さらに戦地からの引き揚げ者や台湾人、中国人が日本で次々に屋台や店を開けたことでラーメンの裾野は広がりました。

ラーメンの地域性はご当地ラーメンを生み、また職人が自らの味を生み出すことで、麺とスープとが織り成す形式こそ同じでも、他に比較もできないようなラーメンが生まれました。醤油味、塩味、味噌味、豚骨味。ソース味やタレを使わないラーメンゼロ。味付けというよりは食べ方による味わいの違いですが、つけ麺やまぜそばも人気です。ラーメンの味というものは幅広く、次々に新しいものが生まれています。そして中国からきた麺料理が、日本でラーメンとして開花し、世界に広がっているのです。