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連載 | FC今治が、今治.夢スポーツである理由。

僕らの地元にJリーグがやってきた

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(これは、Jリーグ開幕にあわせ2月初旬に執筆した記事です。残念ながら、社会情勢を鑑み、現在Jリーグは試合開催を延期しています。しかし、少しでも多くの方々に、Jリーグやスポーツが街に笑顔をもたらしている様子をお届けしたいと思い、一部内容を加筆し公開させて頂きます。ぜひご覧の上、感想などをシェアして頂ければ幸いです。)こんにちは、(株)今治.夢スポーツの中島啓太です。今年から始まったソトコトオンラインでの連載、今回は「地元」という言葉をキーワードに、私の過去の体験やサポーターの声も交えながら、今治の街の様子を紹介したいと思います。

目次

気付いた頃には「地元」という言葉を使わなくなっていた。

2007年1月、高校1年生の終わりに差し掛かったころ、人生で初めて日本を飛び出した。

それまでは、恐らく多くの若者と同じように、生まれ育った実家から地元の学校に通い、暮らしていた。

きっかけは、サッカーに明け暮れていた中学2年生のころ、私の学校にオーストラリアからの交換留学生がやってきた。外国人に出会う事なんてまさか考えられないような田舎町で育った私には、それは大きな出来事だった。

肌の色も目の色も話す言葉も違う好奇心に満ち溢れた留学生。かたや、ずっと地元の同じコミュニティで育ったサッカーしか知らない自分。「僕も広い世界を見てみたい」そう思った瞬間だったように感じる。

そして高校1年生の時に海外に出た。結果的に、そこから私は引っ越しを繰り返す様になった。

カナダの学校に1年通い、東京の大学に進学したものの1年で中退。そこからイギリスに引っ越し、現地の大学を卒業した。卒業後は東京の会社で5年程働いたが、そのうち半分はヨーロッパや国内の地方都市に常駐するような生活だった。貧乏旅だったが、海外旅行にもハマり、30を超える国には訪れたと思う。

移動を繰り返すうちに「地域に根差す」などとは無縁の生活になっていた。

地域に生まれ始めた「小さな渦」

そしていま、愛媛県今治市に住んで、FC今治と関わりを持って、5年が経とうとしている。

FC今治はその間、着実に前進していった。

5部相当の地域リーグを優勝し、4部相当のJFLを何とか駆け抜け、今年からは全国で56番目のJリーグクラブとしてJ3リーグに参入する。そのホームスタジアムは、2017年に竣工した手作り感満載の小さなサッカー専用スタジアム、通称「夢スタ」だ。これらの出来事は、今治という地方都市に、小さくも確かな渦を生み出したように思う。

同時に、私はこの5年を通じて、忘れかけていた「地元」と呼ばれるものに触れ、そしてそこで暮らす地域の人々の「語られざる想い」のようなものを見つめるきっかけに出会ったように思う。表現に困るが、それはきっとこの地域にとっては「大切な何か」であると信じている。

夢スタ

初めてFC今治に触れる方に向けて、改めて説明すると、FC今治とはサッカー元日本代表監督の岡田武史さん(いまの私のボス)が経営する(株)今治.夢スポーツが運営するサッカークラブの名前である。あの「岡ちゃん」(ボス、ごめん。)が、2014年末に今治でほぼゼロに近い状態から会社とチームを作り上げ、いずれJ1を優勝し日本代表に選手を輩出する事を目指すというプロジェクトが、FC今治というチームであり、今治.夢スポーツという組織だ。

あえて1つ特徴を付記するならば、その企業理念であると思う。

「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する。」という言葉に込められた想いは、今治.夢スポーツが、サッカーの枠に留まることのない組織であることを表し、そしてその考えは、きっとこれからの地域社会をより豊かにしていくはずだと私は信じている。

しかし一体、FC今治が根差そうとしている今治という町で生まれ育った人々は、どの様な想いでこの渦を見つめているのだろうか。

今治で生まれ育った人は何を感じているのか

「友人から誘われて、初めて試合を観に行きました。2015年の事でした。」

そう語ってくれたのは、よく夢スタに足を運んでくれる、サポーターの村上さん。

「サッカーに興味があったわけではないのですが、でも、試合や練習を見に行くと、選手だけでなくコーチやスタッフとも話すようになって。それと同時に、みんなの一生懸命さが伝わってきて、出来る限りの応援をしたいと感じ、以来ずっと応援しています。特に、2015年にJFLに昇格を逃した時のみんなの涙は忘れられません。昨年、J3への参入を勝ち取った時は、桜井の小さなグラウンドから始まり、まだ夢スタが完成していないからと県外でホーム戦をしたり、そして夢スタが完成して・・・、という歴史を思い出し、自然と涙が出るくらい嬉しかったですよ。」と話を続けてくれた。

「私はずっと、今治から遠く離れた街に住みたいと思っていました。でも、FC今治をきっかけに、全国から今治に人が訪れ、その人たちが今治の良いところを見つけてくれ、また今治に帰ってきたいと言ってくれる様子を見て、その思いは変わりました。いまでは、この街が大好きだと胸を張って言うことができます。」

サッカーという入り口をきっかけに、多くの人と触れ合い、そして自分の街がまた好きになる。そんな経験を村上さんは語ってくれた。

また、もう一人のサポーターの矢野さんは、街の様子が少しずつ変わってきたと感じることについて、こう話をしてくれた。

「閑散とし始めていた街に、FC今治の幟が立ち始め、活気を感じています。かつての賑わいの拠点だった、中心市街地にある大丸百貨店跡地には、FC今治のアウェイ戦をみんなで観戦する事のできる大型ビジョンと芝生広場も完成しました。いまでは毎週末、夢スタかその芝生広場には多くの人が集い、それをきっかけに、知人同士や職場での会話にもFC今治の話題が沢山出てくるようにもなりました。岡田オーナーをはじめ、ここまで一生懸命頑張った選手やスタッフ、そしてそれを支えた今治のファンのみんなのおかげだと思います。とても感激しています。」

何気ない日常の風景にFC今治が溶け込み始めた様子を、矢野さんは振り返ってくれた。

FC今治というサッカーチームの活動が、少しずつではあるが人の心を動かし、そして街にちょっぴり新しい空気が流れ、それを楽しむ人が増えてきた。それはきっと、これまでの今治とは少し違った風景なのではないかと感じる。

FC今治のパブリックビューイングの様子

今治焼豚玉子飯が示した、今治の可能性。

先日、Jリーグの新シーズン開幕に先立つ大会である「FUJI ZEROX SUPER CUP 2020」が埼玉スタジアム2002で開催された。その舞台裏では「スタグルフェス」と題し、全国のホームタウンから名物グルメが出店、集まった多くのサッカーファンが地元グルメに舌鼓を打つという一幕もあった。

この催しに、夢スタでも大人気のご当地グルメ「今治焼豚玉子飯」が、今治代表のグルメとして参加した。これは、地元今治で長年飲食イベントなどをプロデュースする、サポーターの大木さんによるアイデアであった。

「今治の美味しいものを全国の人に味わってもらいたいです。最初は今治焼豚玉子飯が出店して、それで人気が出たら、夢スタでグルメ出店している他の地元の人たちともそのチャンスを分かち合いたいと思っています。そうやって、地元のお店のみんなが憧れるものを創っていきたいし、自分の地元今治を、もっと沢山の人に知って貰えるきっかけをFC今治と一緒に創りたいですね。」大木さんはそう話してくれた。

大木さんの熱い思いは、今治から遠く離れた埼玉スタジアム2002に集まったサッカーファンにも届いたのか、試合当日は開門直後から長蛇の列が生まれ、用意していた450食が短時間のうちに完売した。

焼豚玉子飯

村上さん、矢野さん、大木さんのエピソードは、決して今治で起きているすべての出来事や地域の人々の想いを代弁しているというわけではない。しかし、確かな事は、彼らはこう感じているということだ。その想いは事実であり、そしてそれは、今治.夢スポーツの掲げる企業理念、「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する。」のひとつの形であるように私は感じる。

私たちの地元はここにある

さて2020年。FC今治は新たな航海へと旅立つ。Jリーグという荒波である。村上さん、矢野さんはそれぞれこう話してくれた。

「楽しみしかありません!全国の新しいチームとFC今治が夢スタで対戦する。そのために沢山の人が今治に集い、人と人との交流が生まれる。夢スタをみんなでもっと盛り上げて、沢山の人の笑顔が集まる場所にしたいです。」と村上さん。

「旅行がてらアウェイの試合も見に行って、ついでに美味しいグルメを食べるのが楽しみです!対戦相手のレベルも上がると思うので、FC今治が負けないように応援したいと思います!」矢野さんも続く。

地域で暮らす人々には、当たり前だが、それぞれの想いや夢がある。しかし、それが語られる事は決して多くは無かったのかもしれない。

Jリーグという舞台は、ひょっとすると、その想いを静かに照らし、地域の人々の夢をそっと支えてくれているのではないか。そう私は最近感じる。

そして同時に、私の中で失われ始めていたひとつの想いにも気づかせてくれた。

今治は私たちの「地元」だ。

現在は社会情勢を鑑み、Jリーグは一時中断している。しかし、やがてそれが明けたころには、FC今治の新たな航海への出発の瞬間を、ぜひ皆さんにも見届けて頂きたい。

きっとその日は、私たちの生活の中にあたり前にあった「人と人とのふれあいや温かい絆」を心の底から分かち合い、そして笑顔が溢れる素晴らしい場所になると確信している。

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