(TOP画像©️2018東京映画社)四国の東南、岬で有名な室戸の北、徳島県との県境に位置する高知県安芸郡東洋町には不思議な地名があります。
その名もゴロゴロ。
付近の不動産の登記簿を確認すると確かに「所在:高知県安芸郡東洋町野根字ゴロゴロ」と記されています。
現在の住所は東洋町野根なのですが、今でも地元の人たちは周辺をゴロゴロないしゴロゴロ浜などと呼びます。
まさかこんな地名が日本にあったなんて!と驚きを隠せません。
人口約2200人の小さな町ながら美しい太平洋に面し、室戸阿南海岸国定公園に指定され、四国屈指の遠浅のビーチや全国屈指のサーフィンのメッカがあり、多くの観光客とサーファーが訪れる東洋町。
その東洋町にある地名「ゴロゴロ」には、どんな由来があるのでしょう。
お遍路さんの「ゴロゴロ休憩所」
四国八十八箇所を巡るお遍路さんの為に設けられたこの休憩所はこの辺りの地名をとって「ゴロゴロ休憩所」と呼ばれています。
いかにもこの休憩所がゆったりとした空間で、床やベッドにゴロゴロとのんびりできるような印象を受けますが、そうではありません。
実は休憩所の眼下の浜辺に地名「ゴロゴロ」の由来がありました。
ゴロゴロ、その由来
“その昔、四国遍路の難所として、ピンポン玉から漬物石くらいの大きさの丸い石がゴロゴロとしている所、という事から「ゴロゴロ石」と呼ばれるようになり現在の「ゴロゴロ」に至ったものと思われます。この辺は、黒潮が岸辺までせまって来るので波も荒く、今でも波の荒い季節にはゴロゴローゴロゴローと石のころがる音が聞こえてきます 国土交通省四国整備局土佐国道工事事務所”
およそ1200年の歴史を持ち、その距離1400キロに渡る四国遍路。この辺りは遍路道でも旅人泣かせの危険な箇所だったようです。ゴロゴロとはのんびりした雰囲気ではなく、波の強さを表すものでした。
また弘法太師が腰の怪我をした旅人の治療にゴロゴロ浜の石を温めて使ったという伝説も残っており、お遍路さんは石を旅路のお守りとして拾う風習があるのだとか。
東洋町の公式インスタグラムで確認できる実際の海岸の写真からも、石が波に削られどれも丸みを帯びていることがわかります。
知られざるゴロゴロの浜
先ほどの公式インスタグラムを運営する「東洋町公式インスタ部」メンバーの一人に尋ねると、かつて「本当にこんな地名があるのか」「(ゴロゴロは)どんなところなのか」などと聞かれることはあったものの、その頻度は「極々稀」とのこと。
少々大袈裟ですが、多くの日本人がまだ知らない霊験あらたかな石の浜辺が、ここゴロゴロ浜なのです。
山頭火も訪れた「ごろごろ浜」
十一月四日 雨、風、行程六里、甲ノ浦、三福屋。(※中略)
十一月五日 快晴、行程五里、佐喜浜、樫尾屋。
すっきり霽れあがって、昨日の時化は夢のように、四時に起きて六時立つ。
今日の道はよかった、すばらしかった(昨日の道もまた)。
山よ海よ空よと呼かけたいようだった。
波音、小鳥、水、何もかもありがたかった。
太平洋と昇る日!
途中時々行乞。
お遍路さんが日にまし数多くなってくる、よい墓地があり、よい橋があり、よい神社があり、よい岩石があった。……
おべんとうはとても景色のよいところでいただいた、松の木のかげで、散松葉の上で、石蕗の花の中で、大海を見おろして。
ごろごろ浜のごろごろ石、まるいまるい、波に磨かれ磨かれた石だ。(※中略)
(十一月五日、室戸岬へ)
おほらかにおしよせて白波
ごろごろ浜
水もころころ山から海へ(※後略)
前日の大雨が嘘のように晴れ渡り、太平洋と森林とを満喫しながら歩を進める山頭火の姿が目に浮かびます。
そして「波に磨かれ磨かれ」た「ごろごろ浜のごろごろの石」に感銘を受け、句にしたのです。
この頃の東洋町と、ゴロゴロと
特に白砂青松の美しい砂浜が広がる白浜海岸(白浜海水浴場・キャンプ場)は遠浅で波も穏やかで、子供も安心して遊ぶことができる一方、生見海岸(生見サーフィンビーチ)は年間を通じて波のコンディションが良く、また浜辺の広さから国内屈指のサーフポイントとして人気で、毎年9万人もの若者たちで賑わうほどです。
町の魅力である自然豊かな様子は、昨年11月の開設以降毎日更新している、先の公式インスタグラムで数多く確認することができます。この機会に是非フォローしてご覧ください。
写真・取材協力:東洋町役場、東洋町観光振興協会、東洋町公式インスタ部