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就職に洋菓子店経営、アート活動、ソーシャルビジネスまで。田辺で見つける、自分らしい生き方・働き方。

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生き生きとした人が暮らす場所には、生き生きとした人が集まってくる。和歌山県田辺市では、そんなポジティブな連鎖が起きている。暮らしたくなる地域づくりを手がけている人や、移住を決めた人たちに田辺の魅力について聞きました。

県外出身の若手社員を惹きつける、企業の魅力。

 和歌山県田辺市の住宅メーカー『高垣工務店』のホームページを開くと、笑顔が印象的な社員たちの写真にあふれ、ほかとはひと味もふた味も違う会社であることがひと目で分かる。同社4代目代表の石山登啓さんは、地元の若手事業者の育成を行う「たなべ未来創造塾」(以下、未来塾)の2期生で、つくり手と使い手の顔が見える家づくりをしながら地域と深くつながる活動も行ってきた。新規のお客様とその紹介者に対して、同社で家を建てたオーナーが営む店で使えるチケットをプレゼントしたり、年に一度のオーナー限定感謝祭「高垣まつり」を開催したり。また、自社の1階を改装した多目的スペース「シリコンbar」を地域の人に無料で貸すことで、人と人とがつながり、新しい価値をつくる場が生まれるなど、独自の進化を続けている。
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多目的スペース「シリコンbar」には同社の企業理念と対話のルールが壁に書かれている。
 そんな同社では、5年前から新卒学生を採用するようになった。「人口と働き手の減少は連動していて、今後ますます雇いづらくなる。豊かな社内風土のためにも地元以外からの採用が必要と思い、大阪市での合同企業説明会に出展しました」。石山さんは持ち前の明るさで、活躍の場がある田辺に来てほしいと切実に訴えたところ、地域づくりに興味がある学生たちに注目されるように。
入社して2年目の原田千聡さんも、新卒で移住者の一人だ。広島県出身で鳥取県の大学に進学し、説明会で同社を知った。「拍手や笑い声が聞こえるブースが気になって行ってみると、大きな蝶ネクタイ姿の社長がいました(笑)」。住宅性能についての話が主だった他社とは異なり、ここにはスタッフやオーナーの写真が壁にあった。そして、社員と一日過ごす研修を経て入社を決意した。「休日も先輩に仲よくしてもらったり、お客さんに『広島から来てくれてありがとう』と感謝されたり。いろいろな方にお世話になっています」と原田さんは仕事も暮らしも楽しそうだ。
現在、新築事業部では20代社員が60パーセントを、移住者が30パーセントを占める。企業の魅力が県外からの若者を惹きつけ、移住につながる。企業の在り方が地域に新たな風を吹かせている。
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『高垣工務店』代表の石山登啓さん(右)と入社2年目の原田千聡さん。

移住して間もないけれど、ワクワクがさらに加速中。

 奥川季花さんは、田辺市を拠点に育林を行う『中川』で2年前から働きながら、自身が立ち上げた林業のイノベーションを目指す『ソマノベース』の代表を務める。和歌山県東牟婁郡那智勝浦町出身で、高校生のときに地元が台風の影響で大災害に遭ったことをきっかけに、林業を通じて土砂災害のリスクを減らすための活動に力を注いできた。「大学時代に林業の現場に出向き、今の会社から『こっちに来たら』と声を掛けられて。東京と田辺の2拠点で仕事をしていましたが、今年4月に完全に移住しました」と奥川さん。育林の作業を現場で教わりながら、自身の事業も進めている。現在は未来塾の6期生でもある。「移住者にとって、地域とつながりやすいのが田辺の魅力です。林業に関心を持つきっかけをつくるため、『ソマノベース』ではほかの業界の人たちと一緒に取り組むことが特に大事だと思っています」。奥川さんに続いてメンバーが徐々に県外から移住し始め、同市を起点に災害を減らすための林業を盛り上げていこうとしている。
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祖父母と母が田辺市出身で縁を感じたと話す奥川さん。
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『ソマノベース』と他社で共同企画した杉のおが粉入りのブレンドティー、杉のカップとストロー。
 同市の地域おこし協力隊隊員として今年6月に着任した田中和広さん。いずれは地域に移住したいという思いを募らせながら、東京でシステムエンジニアとして8年間働いた。田辺市と弊誌が行う関係人口講座「たなコトアカデミー」の2期生となって現地に何度も通い、多くの人と親しくなった。そして、3年ぶりの協力隊隊員募集を機に移住を決断した。現在は柑橘の栽培・加工、猪や鹿の狩猟・肉の加工を手がける『日向屋』で働いている。「人との関係や雰囲気がいいので働きやすい。雨の中の草刈りは大変だけれど、少しずつできることが増えてきたと実感しています」と田中さん。前職の知識を生かして、みかんジュースの在庫管理、現場での作業指示に関するアプリ2種を自作した。作業が効率化されたと現場からの評判もいいそうだ。田中さんもまた未来塾の6期生である。「田辺市の魅力を発信することで、僕がそうであったように、田辺市を好きになる人や興味を持つ人を増やしていければ」。自宅から買い物に行く山道でさえ楽しいと田中さんはここでの暮らしを満喫している。
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システムエンジニアから農業の世界に飛び込んだ田中和広さん。
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田中さんが開発したアプリ。現場の声を聞きながら改良を加えている。

数年前に移住し、地域に溶け込む先輩たち。

「庭からの景色に感動してここに決めました」と話すのは、2019年1月に同市龍神村福井地区に移住した矢野玲子さん。海外で育ち、仕事をしていた矢野さんは日本で暮らしてみたいと帰国するも、人の多さや暮らしのスピードの速さに生きづらさを感じた。子どもの頃から見ていたアニメの影響で“田舎のおばあちゃんの家”への憧れがあり、同県を訪れる機会が続いたことから移住の視察へ。その際に出合ったこの家に運命を感じて決断した。羊毛フェルト作家で未来塾4期生の矢野さんは、受講当時に計画した地元の温泉水を使ったフェルトのワークショップと、地元林業家とコラボしたかんざしづくりを続けている。また、インバウンド向けにフェルトの作品づくりと田舎暮らしの疑似体験ができる旅のプランを企画していたが、コロナ禍で休止に。しかしそれが、足元の暮らしとじっくりと向き合う機会になった。「季節の手仕事や畑仕事もするようになり、今は3年目ですが1年目よりも楽しいです」と、矢野さんは自然とともに生きている。
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フェルト作家の矢野玲子さん。妹のみずきさんも一緒に移住し、書店の立ち上げを計画中。
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地元の杉の皮とフェルトを混ぜたピアス。
 埼玉県から移住した榎本大志さん・恵さん夫妻は、昨年11月に同市龍神村甲斐ノ川地区に『菓子工房HOCCO(ホッコ)』をオープンした。パティシエの恵さんがケーキや焼き菓子を作り、大志さんは販売に関する業務や配達などを行っている。大志さんは地域で暮らしたいと思いながら関東でインフラ関連の仕事に就いたが、激務から移住の気持ちが強まったという。複数あった移住先候補の中から、起業にも熱心な姿勢に惹かれて同市へ。築65年の古民家を改装して店にした。地元や近隣地区への配達は無料で、一人暮らしのお年寄りから温泉旅館、小学校、企業などから注文が入る。大志さんは未来塾5期生。農園を営む修了生らとつながって仕入れることができたフレッシュな果物や卵で、質の高いお菓子がつくれるようになった。「傷ものの果物なども活用していきたい」と榎本さん夫妻の夢は膨らんでいる。
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新鮮なフルーツを使ったケーキなどが並ぶケースに立つ榎本大志さん(左)と恵さん夫妻。恵さんは腎臓病対応のケーキづくりも得意。
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店は小高い丘の上にあり、一望できる景色が美しい。
photographs by Katsu Nagai text by Mari Kubota
記事は雑誌ソトコト2021年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
目次

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