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連載 | 田中佑典の現在、アジア微住中

内向していく世界、微住はなにをつくり出せるか。

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目次

河和田、移住者×微住者の共同生活。

2020年4月のオープンに向け、「微住.com」の制作がついに始まった。

今回、福井県の鯖江市河和田地区で、台湾からの微住者たちとこのサイトの制作をする微住を行った。

フェイスブックで募ったところ、1週間で20名を超える応募があり、そこから6名を受け入れた。メンバーは台湾の編集者、ライター、カメラマン、グラフィックデザイナー、映像作家と多岐にわたる。

河和田地区は漆器を中心としたものづくりの産地であり、もともと移住者も多い場所。河和田にあるデザイン会社『TSUGI』のメンバーをホスト役に、県外からもWebメディア『しゃかいか!』の編集長にコミットしてもらい、この微住はスタートした。

微住者たちもお互い「はじめまして」ばかり。微住後は大阪や京都へ観光に行くそうだ。
微住者たちもお互い「はじめまして」ばかり。微住後は大阪や京都へ観光に行くそうだ。@cityflaneurs

微住中の生活は、Web制作の作業以外にも、食事は毎日当番制、身の回りのことはみんなで協力して行う。この地区だけに限ったことではないが、欲しいものに手が届かない場所だからこそ自分たちで考えてつくり出す。微住最終日には「台湾×河和田微住発表会」と題したイベントも自分たちで企画し、地元の人たちを迎えた。

ちょうど同時期に行っていた大野市での微住者や地元のみなさんたちと「微住大交流会」。
ちょうど同時期に行っていた大野市での微住者や地元のみなさんたちと「微住大交流会」。@cityflaneurs

ある微住者の感想で「これまで東京へ旅行に行った時は、『これください』など10個くらいの日本語を覚えておけば生活ができたけど、微住ではそうはいかない」と話してくれた。ごもっとも。微住はとにかくめんどくさい。普段の観光での関係上では話さなくてよいことも話さないといけない。お互いおもてなしをし合うのは、一方的におもてなしをするよりも疲れる。でもその結果、いつの間にかゲストとホストの境界線も曖昧になっていく。微住者たちがその地域の本当の地面に足がついていく。アジア微住でも僕が探し求めているのはその境遇。次回は『TSUGI』のメンバーが台湾微住に行くと、固い約束を交わしていた。「一期三会」以上の関係と絆がここ河和田にも生まれた。

その日の当番が地元のスーパーへ買い出し。食卓には魯肉飯など台湾料理が並ぶ。
その日の当番が地元のスーパーへ買い出し。食卓には魯肉飯など台湾料理が並ぶ。@cityflaneurs

新型ウィルスの流行で加速する「内向時代」の幕開け。

新型コロナウィルスの流行が広がりつつある。

このこと自体は予想していなかったものの、従来型の観光にはかなりの打撃になることは間違いなく、僕の連載でも何度か触れてきたポスト・インバウンドの幕開けが今回の件で加速していくことになるだろう。

これから考えていくべきは「縄張り」。今回はもう少しこの話をしていきたいと思う。

3.11の東日本大震災以降、我々日本人は「コミュニティ」について改めて考え始めた。コミュニティデザインやコミュニティスペースという言葉もこの頃生まれた。

そしてあれから9年近くが経ち、今回の新型ウィルスの広がりで我々は「テリトリー(縄張り)デザイン」をいよいよ具体的行動をもって、急いで実装していかないといけなくなった。「観光公害」と一部では問題視されているが、これまでどおり不特定多数の外からの“客”を自分たちのホームに受け入れることで、いよいよ「差別」というような感情が日本人の中に起きてくるだろう。一方、全く受け入れないとそれはそれで経済が立ち行かない。大事なことはその間で適した「テリトリー」を形成すること。

なんだかここ数年、コミュニティという言葉だけがどんどん先に行ってしまい、「つながりって大事」というふわふわとした状態で、コミュニティスペースや洒落たカフェやコワーキングスペースが各地に増えすぎた。

誰かとつながるということは、誰かとつながらないということ。

テリトリーと聞くとコミュニティという言葉よりもなんだか聞こえが悪いが、どの言葉も表裏一体。コミュニティをつくるということは、その裏にあるテリトリーを考えていくデザインをしないといけない。

微住とはとても曖昧で、宙吊りな考え方。0か100で語ってしまうとあらゆる要素がぎ取られてしまう。コミュニティとか関係性もそうだろう。内向時代らしい観光やコミュニティづくりは不特定多数ではなく、ある意味で地域やまちが受け入れる人を選択していく。それは国内・国外関係なく。はっきりとした爽快な答えはないかもしれないが、その継続にしか未来は見えてこない。

僕らのまちづくりには一発逆転できる特効薬はない。

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