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連載 | 犬猫ヤギと古民家と私。~From 安房暮らし Our life ~ | 1

風呂なし、トイレなし、キッチンなし。 田舎の“無い無い”古民家で直面した水回りどうする問題

鍋田ゆかり

鍋田ゆかり

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ヤギのひじきが生き生きと不自由なく暮らせて、田んぼや畑ができる家を探した。そこで出会ったのが、“無い無い”古民家だ。物理的なものは無いが、物理的でない“在る”がたくさん存在していることに気付かせてくれる家。まずは引っ越したばかりのころの家と、代表的な“3無い”を紹介しよう。

目次

ヤギとともにお引越し。風呂なし、トイレなし、キッチンなしの古民家で新生活

ひじきという名のヤギ

ひじきという名のヤギ

2012年4月16日生まれの女の子、ひじき。当時4歳。
「壁と屋根があれば、何とかなる」

この家に出会ったとき、そう思った。土壁が崩れ、なかの骨組みである竹小舞(たけこまい)が丸出しになっている場所を覆うようにトタンが張られた壁。錆び錆びのトタン屋根にも、パッチワークのように新たなトタンが張られている。土間に入ると大きな緑色の穀物缶や樽、犬小屋や昔のテレビ、衣類を入れるための長持(ながもち)が置かれていた。

ガラス戸の玄関と、壁に空いた穴から僅かな光が差し込むだけの暗い土間。中に入って見上げると、立派な梁とトタンの下で眠っている茅葺きが見える。

古民家パッチワークハウス

古民家パッチワークハウス

“パッチワークハウス”と呼ばれていた頃のわが家。
波板で何となく土間と区切られているが、ドアもないコンクリートの部屋にホースが付いた蛇口が一つと、バスタブが一つ。横に置かれていた灯油で沸かす風呂釜は、どうやら使えそうもない。
古民家お風呂場

古民家お風呂場

入居当初の、寒々しいお風呂場。
ガスコンロと炊飯器が、風呂場へと続く廊下に転がっている。流し台が置かれた部屋があるが、とても使う気にはなれない状態。昔ながらの分厚い畳が各部屋に敷き詰められていて、湿気を帯びてじと~っとしている。湿気だけでなくあらゆるものを含んでいそうで、さすがの私も

「この上で横になるのは無理!」

と思ったことを、よ~く覚えている。

古民家の土間

古民家の土間

土間にある大きな棚の中に、緑色の穀物缶が3つ並んでいて、棚の上には大きな樽が2つほど置かれていた。手前は、四角い犬小屋と古いテレビ。
玄関に入ったら土間、その奥にお風呂、土間の横から田の字で前に二部屋後ろに二部屋と、開かずの木戸が入った暗い縁側のある昔ながらの古民家。

私が入居した2016年は、この家生誕100年の年。おおよそ100年ぐらいと聞いたので、入居を機に100年ということにした。この家のいいところは、中途半端な改修がされていないところ。トイレは外に厠(かわや)小屋があり、そこに昔懐かしの“ボットン便所”が。タイル張りでも陶器の便器でもなく、板張りで穴が空いているだけのボットンだ。ボットンのままトイレを使おうと思ったが、汲み取りはできないといわれてしまった。よって、使える風呂なし、トイレなし、キッチンなしの“3無い古民家”で、ひじきとともに新生活をスタートさせることになった。

新居にガスは必要か? パーマカルチャーという考え方

アースオーブン

アースオーブン

知人宅にあるアースオーブンで、ピザを焼く友だち。
都市部だと都市ガスや、IH完備の家が多いと思うが、田舎の家はLPガスが主流だと思われる。実際私が田舎へ移住して暮らした4軒の家は、全てLPガスだった。当然、この家でもLPガスを使えるようにしようと思い、地域のガス会社を紹介してもらったり、友だちから不要になったガス台を譲ってもらったりして準備を進めていた。そのころ出会ったのが“パーマカルチャー”という持続可能な社会システムをデザインしていく考え方だった。

自分の土地、自分の家を手に入れたのなら、循環するデザインや循環する暮らしを取り入れていきたいと思った私は、南房総で開催された「PAWA Permaculture Design Course」を受講。雨水を利用し、アースオーブンやロケットストーブを使ったキッチン、コンポストトイレが設置された実際のフィールドで、理論とデザインの両方を学んだ。

コース終了後、改めて自分に問いかけてみた。

「ガスは必要か?」

と。電気、水道、ガスはあって当たり前のものと思い込んでいたが、実際それがなくても暮らしている人たちがいる。初めから全て揃えなくても、無いなら無い状態を楽しんでみて、無いことが負担になったときにLPガス契約という道を考えても、決して遅くないじゃないか。

七輪と羽釜でご飯を炊く

七輪と羽釜でご飯を炊く

現在は、スチール製七輪をメインにして煮炊きをしている。後方にいるのは、のちほど仲間に加わる猫のワラワラ。
次回は、3無い古民家暮らしの、トイレについて書いてみようと思う。

■お知らせ
古民家暮らしの始まりから綴り始めた今回の記事だが、今現在の暮らしを去年から数回に分けてテレビが撮影に来てくれていた。それがいよいよ放送されるようだ。安房暮らしの魅力が少しでも多くの人に伝わることを願って。

番組名 :「自給自足ファミリー2022春」
放送局 :BSテレビ東京
放送日 :5月18日(水)
放送時間:19:00~20:54

庭先からの景色

庭先からの景色

庭先から見たわが家と庭。ここからの眺めは、日々刻々と移り行く。今日はどんな景色と出会えるのか、毎日楽しみにしている場所だ。
写真・文:鍋田ゆかり

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