浦島太郎伝説は日本各地にあります。長崎県壱岐や神奈川県横浜市神奈川区、長野県木曽などの浦島伝説が有名ですが、岐阜県の南部、輪之内町にも浦島伝説が語り継がれている場所があります。その場所は「乙姫公園」として整備されているのですが、インパクト強めの巨大乙姫様と浦島太郎のコンクリート像があり、地元では知る人ぞ知る観光スポットとなっています。今回は、そんな「乙姫公園」となぜここに浦島太郎伝説が残っているのかを紹介したいと思います。
木曽川、長良川、揖斐川の三川が合流する地でかつては厳しい土地だった
「乙姫公園」がある岐阜県安八郡輪之内町海松新田も輪中地帯です。輪之内町と海津市付近の長良川を水源とする大榑川の堤のすぐそばになります。木曽川は9世紀以降、度重なる洪水によって西からどんどん東へ移動し、同様のことが長良川や揖斐川でも発生することによって川中島が発生し、輪中がたくさん誕生したと言われています。
多くの水害を経験した土地でもあることから、水の中に引きずり込まれる物語である浦島太郎伝説が生まれたというのはなんとなく想像にたやすいのではないでしょうか。
輪之内町に伝わる「大榑川の竜宮」伝説
また、「この付近の川は水深が深く、おぼれて亡くなる者や投身自殺をする者が多かったことなどから、住民が「この川に住む者を怒らせてはいけない」と、漁業を禁止して以降、水難事故などは起こらず、この地が繁栄した」とも書かれています。
昭和4年、この地で不思議なことが相次いだことから、住民はその歴史を調べ、鎌倉時代、ここに稲荷大明神があったことがわかったのだそう。それから、稲荷神社としての整備を再び進めなければということで伏見稲荷大明神に説明し、復興の許可を得て復興することとなったということです。
乙姫様を見つめる浦島太郎
そこには、昔話のワンシーンが再現されており、絵本を読んでいるような感覚に吸い込まれます。浦島太郎が亀に乗っていたり、波が表現されているなど、細かいディテールにもこだわりを感じます。見つめ合う二人の表情から内心どんな想いなのか、『浦島太郎』のストーリーと併せて、いろいろ想像できるのが素敵なポイントです。
浦島太郎以外の像にも注目
境内を復興した時に設置されたと言われている神馬が5頭、龍神塔2基に稲荷のお狐様、巨大な鶴などが隠れています。
輪之内町の観光ポータルサイトによると、
「日八工業」を設立し、終生を地方自治に貢献し率先水防に専念した牧野柳平は、子供達 によい環境の遊び場として、私有地の大榑川にて乙姫像を建設し、岸辺には亀に乗った浦島像も築造した。このいわば竜宮伝説にも通じる遊園地は、現在も近隣の子供達に愛され遠足の場所にもなっている。
乙姫様の高さは10mもある。平成22年に化粧直しされた。
「乙姫ポスト」って何!?
読んでみると、長文の手紙から簡単な内容まで様々。中には「どうしたら100点を取ることができますか?」という小学校5年生の質問に対し、乙姫様が真剣に長文で回答していらっしゃるなどもあり、ほっこりします。
輪之内町の粋な取り組みに感心します。何か話したい時、匿名でこのポストに投函すると、いいお返事がいただけるかもしれません!
まとめ
取材・写真:各務ゆか