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連載 | 瀬戸内の古民家で子育てはじめました

子育て世代の移住&古民家リノベーション【瀬戸内の古民家で子育てはじめましたvol.1】

小林友紀

小林友紀

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2年前の9月。当時1歳と0歳の子を連れ、東京から愛媛県の今治市へ移住した。今治は妻である私の生まれ故郷。つまりUターンである。昨年、築70年を超す古民家を自宅として購入、再生し、家族4人で暮らしている。そんなわが家の日常を通して、住むほどに味わい深く、子育て世代におすすめしたい古民家の魅力をお届けしたい。

メイン画像

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左から、私、次男(2)、長男(3)、夫。
目次

東京→瀬戸内へ子連れ移住

そもそも、わが家が5年間暮らした東京から離れる決意をしたきっかけは、出産、そしてコロナ禍だった。夫婦ともに瀬戸内エリア出身の私たちは、各々就職を機に東京へ。「いつかは生まれ育った地域へ」という想いを胸に秘め、PR会社で互いにモーレツに働く日々。満ち足りた充実感の中でめでたく社内結婚し、子どもにも恵まれた。しかし第二子出産後、互いの両親を頼れない距離での子育てと仕事の両立に、一人目の産後とは違う大きな壁を感じた。そしてコロナ禍。保育所の休園や公園の閉鎖といった状況で、もちろん親にも友人にも会えないなか、「都会の狭いアパート暮らし(乳幼児付)」という生活はあまりにも過酷だった。

「いつかは生まれ育った地域へ」という未来が、一気に現実味を帯びた。

私たち夫婦は職を変え、住む場所を変えた。

選んだのは瀬戸内海を臨む私の生まれ故郷、愛媛県今治市。

私は30歳だった。

わが家が古民家暮らしを選ぶまで

一年間実家を間借りしながら、新築も視野に土地や工務店を探した。実は当初、古民家に住むつもりはなかった。それがなぜ古民家を選ぶに至ったのか。

高校時代、代わりゆく地元の町並みに一抹の淋しさを覚え、大学時代には建築やまちづくりを専攻した。スクラップ&ビルドで、町のアイコンが壊され、どこにでもある町並みに塗りかえられていくような感覚にずっと違和感を抱いていた。そしてそれは、住宅に対しても同じだった。

瓦の屋根並みや、土地ごとに導き出された建築様式は、日本全国で標準化された商品としての住宅に置き換わり、「機能的」で「新しく」「美しい」家が立ち並ぶ。もちろんその良さも理解しつつ、私はそれにうまく愛着を見出すことはできないだろうと、心のどこかで思っていた。

“木をふんだんに使った”や“ナチュラル”といった言葉を手掛かりにハウスメーカーを巡りながら、モヤモヤを払拭しきれなかったころ、ふと、古民家という選択肢を思い出した。

今思うに、古民家という中古物件とアラサーの私たちとの接点があまりに少なく、また検索したとて情報としてほぼ皆無だったために、自身の住み家の選択肢として結びついていなかったように感じる。

確かに田舎には古民家はあちこちにある。でも物件情報としてはほぼ見つからない。空き家バンクの登録数もかなり少ない。実際、購入に至ったわが家も、空き家バンクには登録されておらず、不動産屋の担当者が記憶を振り絞って紹介してくれた奇跡の物件だ。

新築か、古民家リノベーションか。

後者に対して「イメージが湧かない」という夫と、再三協議を重ね、2つの方向でしばし物件を探した。かれこれ10件以上の古民家(中古のボロ家も含む)物件を巡り、出会ったのが今の家だ。決め手は、むしろ夫の一目ぼれだった。

下見時の写真

下見時の写真

内見時、まだ売主さんの荷物でいっぱいだった室内。
着工前の写真

着工前の写真

威風堂々とした佇まいや、細工の美しい建具に夫婦ともに惹かれた。

どんどん深みにハマる「古民家沼」

物件巡りに付き合ってくれた工務店さんとプランニングを進めながら、日ごとに古民家が持つポテンシャルの高さを思い知ることとなる。その丈夫さ、雄大さ、広さ、自然の素材が生み出す暖かい空気感、伝統工法がもたらす空間の美しさ、暮らし方に沿った間取りの可変性。

なにより、長年の時を過ごしてきたという、どっしりとした安心感と包容力。五感を刺激するこの空間で子どもたちを育てたい、そう強く思った。

「昔の家は不便で、暑くて寒い」というのは、確かに嘘ではないけれど、現代の知恵と技術を以てすればそんなハンデは十分吸収することができる。

ただ確かに、古民家ならではの苦労も多いのも事実だ。ゆくゆく書こうと思うが、物件探しの大変さや、難航したプランニング、思いがけない工事中のハプニングや(わが家は家の中から井戸が出た)、住んでからも隙間問題に紐づく虫問題、草刈問題など、挙げればキリがない。

井戸現る

井戸現る

旧キッチン横の納戸を解体すると室内から井戸が出現。
でもそれでも、今はもう二度と建てられない貴重な古民家を、日本に、子どもたちに残したい。そんな思いで、わが家の日常を全部ひっくるめて綴りたいと思う。
 (134220)

リノベーションで装い新たに生まれ変わったわが家。
文・写真:小林 友紀(こばやし・ゆき)
大学卒業後、大手総合PR会社にて日用品メーカー・製薬会社・商業施設など幅広い広報業務の支援に従事。5年のPRキャリアを積み、2020年に愛媛県今治市にUターン。現在はフリーランスとして活動中。2児の母。大学在学中には、島根県美郷町の「地域おこし協力隊」を務めた。

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