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特集 | 地域×JR西日本の「地域共生」のカタチ。

チーム一丸での新しい土産品づくりは、「岡山愛」から始まった。 【地域×JR西日本の「地域共生」のカタチ。[第1回 岡山県編]】

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2018年の発売以来、岡山県の新しい土産品として大ヒットしている「蒜山(ひるぜん)ショコラ」(冬季限定)と、そのヒットを受けて開発・発売された、食べ切りサイズのおつまみやおやつ「せとうちのおいしいシリーズ」。街中のショップのほかに、JR岡山駅にある商業施設『さんすて岡山』などの駅ナカショップ、各空港やSAなどでも販売しています。
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これらを手掛けているのが、『西日本旅客鉄道 中国統括本部 岡山支社(以下、JR西日本岡山支社)』、『ジェイアールサービスネット岡山(以下、SN岡山)』、『暮らしき編集部』、の3社による商品開発チーム。このチームメンバーは、一言で言うなら「本気の熱い大人たち」だったのです。

「地域の魅力を生かし、未来につなぎたい」という想い

商品開発チームの旗振り役は、JR西日本 岡山支社ふるさとおこし本部。課長代理を務める遠藤茂仁さんは「私は岡山県出身ですが、岡山県にはいいものが多い一方で、PR力が弱い部分があると思うんです。そんな岡山県に、上手に魅力的に発信してファンを増やしている素敵な先駆者がいらっしゃいます。その方にご相談したことが、地域の方たちとの協働チームが生まれるきっかけになりました」と話します。それが、岡山県倉敷市でカフェなどの店舗運営や商品開発などを手掛ける暮らしき編集部の代表取締役・辻信行さん。倉敷市を盛り上げているキーパーソンの一人です。
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『林源十郎商店』の屋上で話す辻信行さん。過去にケーブルテレビに番組企画を持ち込み、その番組制作で地域を約4000キロも歩いた経験があるそう!
辻さんはこう話します。「私たちは地域の魅力を生かして未来につなぐため、ものづくりや場づくりをしています」。その情熱を感じる自社商品の一つが、ジャムシリーズ。自ら地域の農家を訪ねた際に、「味は問題ないものの少し傷があるだけで消費されない素材があるのはもったいない。なんとかしたい!」という思いでつくり始めたそう。フルーツ農家の規格外を全量買い取る連携を始めて20年、現在では約30軒となり、カフェメニューや店頭販売、ジャム、ドライフルーツに加工しています。経営する店舗は『林源十郎商店』『三宅商店カフェ工房 土屋邸』『水辺のカフェ 三宅商店 酒津』など複数あり、どれも大人気店。辻さんは、さまざまな活動を通じて「足を運んでくださる方や働くスタッフが、豊かさの本質とは何かを考えたり、取り戻すきっかけをつくりたい」と考えているといいます。

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地域の宝ものとの出会いから始まったというジャム商品。地域や季節に寄り添い、仕入れて製造しています。
辻さんは、暮らしき編集部がリブランディングをし販売する米麹100%の甘酒「koji100」が、JR西日本 岡山支社が主催する「ふるさとあっ晴れ認定委員会」で認定されたことがきっかけで、遠藤さんたちと出会いました。「ふるさとあっ晴れ認定」は、JR西日本 岡山支社が「えぇとこ・えぇもん・うめぇもん」を見つけだして評価・認定する取り組みです。「遠藤さんたちの岡山県への想いをお聞きしたら、地域の大事なものを生かして残していきたい私たちと同じ方向を向いていたんです。そこで、いいものを未来につないでいくため、一緒に取り組ませていただくことになりました」と、辻さん。チームに加わり、商品開発やリブランディングを共に行うことになりました。

岡山のいいものを掘り起こす「ふるさとあっ晴れ認定委員会」

遠藤さんは次のように語ります。「鉄道会社がなぜ、地域のいいものの認定事業をしているの?と思われるかもしれません。ふるさとおこし本部は、地域との連携を深め、ふるさとおこしの取り組みを発展させるために2016年2月にスタートした部署です。発足と同時に、管轄エリアである岡山県と広島県備後エリアのいいものを掘り起こし、その認知度を高める『ふるさとおこしプロジェクト』を始めました」。キーワードは「知れば、もっと好きになる」。そんな思いから「ふるさとおこしプロジェクト」の一つとして始まったのが、「ふるさとあっ晴れ認定委員会」だったのです。現在は毎年1回、認定委員の先生方による認定委員会が開催され、2022年までに合計14回、およそ200点の「いいもの」が認定されています。
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遠藤茂仁さん(右)はグループ会社のレストランに出向していたとき、メニュー開発に長年携わっていたそうだ。
「優れた品々は、ふるさとおこし本部のメンバー全員で探しています。主に、口コミやネット情報などをもとに現地に足を運び、いいなと思ったものを候補として、8名の外部有識者で構成される認定委員会で認定していただきます」と話すのは、同部の弘内玖実さん。サラッと語ってくれましたが、きっと簡単なことではありません。その根底には「地元では愛されているのに、地元以外では知られていないものの魅力をもっと伝えたい!」というこの取り組みに関わるみなさんの熱い思いがあるといいます。
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ふるさとおこし本部のメンバー。写真左から、貝原涼介さん、弘内玖実さん、遠藤茂仁さん、篠田孔太郎さん。貝原さんは「県北の津山エリアは観光列車が走っていて、2024年秋には『森の芸術祭 晴れの国・岡山』が開催されるので盛り上げていきたいです」と話します。長崎県出身の篠田さんは、岡山県の魅力を「温暖で住みやすく、おいしいものがこんなにあるんだと驚きました」と教えてくれました。

持つ人の気持ちを上げ、駅の景色を変えたショッピングバッグ

ふるさとおこし本部では魅力的な商品の発掘・認定だけではなく、認定商品のリブランディングや販売サポート、オリジナル商品の開発も始めることにしました。「岡山と言えば『きびだんご』が有名ですが、そのくらい知名度のある新しいお土産をつくりたいと考えたんです。でも、我々だけではリブランディングや商品開発はできませんし、販路もありません」と遠藤さん。そこでふるさとおこし本部が着目したのが、辻さん率いる暮らしき編集部の活動でした。さらに、商品開発や販売は、JR西日本のグループ会社であるSN岡山に依頼しました。駅構内のお土産店や飲食店の運営をしている会社です。商品開発チームが最初に取り掛かったのが、土産品を入れるショッピングバッグです。「魅力的なバッグがあれば、持つ人の気持ちは上がり、その人たちが行き交う駅の景色も変わります。土産品を駅などで買うことが特別な行為になるのです」という辻さんの発案で、「マリメッコ」をはじめ国内外のブランドを手掛けているテキスタイルデザイナー・鈴木マサルさんにデザインを依頼。素敵なバッグが誕生しました。

こうして、岡山のお土産品をめぐる“素敵な改革”が始まったのです。

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「かわいい」と大評判のショッピングバッグ。持ち歩くのも、もらうのも嬉しい手提げ品が、駅やまちの景色を明るく変えました。

知れば知るほど地域を好きになり、自分ごととして考案

SN岡山の取締役営業部長である岡純一さんは、商品開発についてこう振り返ります。「『ふるさとあっ晴れ認定』からの流れがベースとしてありますが、東京など全国各地へ視察に行って勉強し、『岡山県だったら何ができるだろう』とアイデアを発展させて考えることが多いです。開発過程では、チーム全員で現地へ行き、どうしたら売れるかみんなで話し合っています」広く知られてはいないけれどとてもおいしいおつまみ・おやつを集めた商品が、「せとうちのおいしいシリーズ」です。お土産としての用途はもちろんのこと、新幹線や特急の車内で食べられる手軽さも意識したそう。岡山県内の中小企業がつくっている認定商品を、このチームでリパッケージしました。「より広めることができる」のは、JR西日本グループならではの強みです。

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写真左から、SN岡山の営業部次長・田中友隆さん、岡純一さん、営業部営業課の赤木美紅帆さん、内田雅仁さん。田中さんは「コロナ禍では駅の利用客が減り、それは売り上げに直結しました。そんなときに商品を開発し、メーカーとして外にも展開ができるようになった強みを今後も伸ばしていきたいです」と語ります。「いつか地元である倉敷市の児島で商品開発ができたら」と、赤木さん。「例えば、日生(ひなせ)町は牡蠣が有名です。岡山県にはいいものがたくさんあります」と内田さん。
また、チームのみなさんが「彼女がいなければ、ここまでの形にならなかった」と口々に話すのが、暮らしき編集部と共に参画している、岡山市にあるデザイン事務所『edge graphics(エッジグラフィックス)』のデザイナー・秋岡寛子さん。通常、デザイナーは商品が完成してからデザインのみを請け負いますが、秋岡さんは開発行程のはじめから、みなさんと共に伴走したといいます。「開発では毎週のようにみんなで製造現場に行き、事業者さんと何度もやりとりをしました。商品を考えるところから関わり、売り上げまで教えていただくと、デザイナーとして何かできるか考えさせられます。みんなで実際に作業をやらせていただき『こんなに大変なんだ』と知ったことも。魅力も、課題も見えてくるんです。知れば知るほどその地域を好きになり、『自身が岡山土産として渡したくなるものを』とパッケージをデザインしました」例えば「おいしいシリーズ」は、比較的ナチュラルに仕上げたものが多いため、クラフト紙を使ったパッケージデザインにしたそうです。中身を想像してワクワクするようなパッケージになっています。

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「岡山県内の産地名を知っていただくために、パッケージにその名前を入れるようにもしました」と、秋岡寛子さん。チームの岡山愛は、中身にもパッケージにもこめられています。

販売開始後、売り上げ以外にもさまざまな効果が!

開発した新商品たちはSNSを中心に話題になり、買い求める人が増えていきました。売れ行きだけではなく、駅でバイヤーが購入して商品販路が広がったり、これまでは「キオスク」販売員のイメージが強かったSN岡山の求人に若い人の応募が増えたり、さまざまな効果が生まれました。チーム全体の熱い思いはJR西日本 岡山支社の若手社員にも伝播しています。同部で活躍している入社3年目の弘内さんは、「地域の魅力を発見するお仕事をさせていただき、日々魅力的な人やモノに出会えるこの仕事がとても楽しいです」と笑顔で教えてくれました。
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「当社が鉄道事業のほか、まちづくりにも関わっていて『地元を好きな人』を増やせる会社だと思い入社しました」と、弘内玖実さん。本当に楽しそうに仕事をしています。
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JR岡山駅にある商業施設『さんすて岡山』南館2Fの『おみやげ街道さんすて岡山』には、「ふるさとおこしプロジェクト」の関連商品が集まっている特設コーナーも。
遠藤さんに、現在の取り組みや今後について聞きました。「認定の先にある出口をつくっていければと考え、認定事業者を集めて大手のバイヤー様にお越しいただき、ビジネスマッチングの相談会を開いています。また、未利用魚を活用した商品を開発中で、いずれ形にしたいです。ありがたいことに地域の事業者様のほうからご相談いただくことも増えてきました。地域のみなさまと課題を一緒に解決できたらと考えています」。辻さんは、進めるうえで大切にしていることは「自分たちが楽しむこと」だと教えてくれました。「自分が『いいな』と感じ、大事だと思ったことに対して動く。そうやって自分たちが楽しんだ先で、お客さまが応えてくださるのだと思います。チャレンジすること自体が成功なんです。逆に、チャレンジしないことは失敗です」。みなさんがそれぞれの専門分野を活かして岡山への思いをつなぎ、形にした新しい土産品たち。それらに魅了され、岡山・備後エリアに足を運ぶ人が増えそうです。

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チームは、週に一度全員で会議をし、開発の進捗報告や相談、在庫管理の共有をしています。辻さんが手掛ける店舗で行うことも。みなさんの仲が良く、和気藹々とした雰囲気。暮らしき編集部の古作泰宏さんが企画書や資料を作成し、進めることが多いといいます。「大きな発信力のある駅という場所を中心に展開し、頑張っていらっしゃる地域の生産者さんや事業者さんをサポートしていきたいです」と、古作さん。
information「蒜山ショコラ」、「せとうちのおいしいシリーズ」をはじめとしたオリジナル商品は、「JR PREMIUM SELECT SETOUCHI」と名付けられました。岡山県産海苔を100%使用した「岡山海苔天」など、現在計10種の商品・シリーズがあります。また、認定商品をリサイズ・リパッケージなどをするリブランディングも展開しています。ふるさとおこしプロジェクトで生まれた商品は、JR西日本公式オンラインショップ「DISCOVER WEST mall」にてお取り寄せ可能です。
JR西日本岡山支社 ふるさとおこし本部・伊東 暁 本部長からのメッセージふるさとおこしプロジェクトでは網羅的に地域の観光地や物産品を紹介するのではなく、その場所や商品のもつ物語を引き出して伝えることを重要視しています。その物語に触れることで地域の持つ魅力の本質を知って、好きになってもらいたい。そんな思いでパートナーの皆様と日々議論を交わしています。
魅力的で持続可能な地域づくりを。JR西日本が取り組んでいる、地域との共生とは?JR西日本グループでは、2010年頃から「地域との共生」を経営ビジョンの一角に掲げ、西日本エリア各地で、地域ブランドの磨き上げ、観光や地域ビジネスでの活性化、その他地域が元気になるプロジェクトに、自治体や地域のみなさんと一緒に日々取り組んでいます。
今回の【第1回 岡山県編】を皮切りに、そんな地域とJR西日本の二人三脚での「地域共生」の歩みを全12回の連載でクローズアップしていきます。
今までに公開した【地域×JR西日本の「地域共生」のカタチ】の一覧はこちら
ぜひ他の地域の事例も読んでみてくださいね!
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photographs by Kiyoshi Nakamura
text by Yoshino Kokubo

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