忙しい都会生活から離れ、地方移住を検討する若者が増えてきています。「スローライフ」や「丁寧な暮らし」という言葉をよく耳にするようになりましたが、実際に田舎暮らしのリアルを知っている人はあまり多くありません。そこでこちらでは、都会から地方への移住を考える際に読んでおきたい1冊の本「海が見える家」をご紹介します。
2017年8月、作家のはらだみずき氏による小説「海が見える家」が発行されました。都会に住む主人公の青年が、父の訃報を受けるところから物語は始まります。父が生前住んでいたとされる「海が見える家」へ、遺品整理をするために足を運ぶ青年。そこから思いがけない展開を迎えることになるのです。
今まで一切連絡を取っていなかった父が、なぜ会社を辞めてまでわざわざ地方へ移住したのか。そして、この地でいったい何を考え、どういった生活を送っていたのか。地方移住の難しさや地域コミュニティの温かさなど、父の生前の生活を通して田舎暮らしのさまざまな側面が見えてきます。これから田舎暮らしを考えている方は、ぜひ読んでおきたい1冊だといえるでしょう。
「海が見える家」を読んで気づく、地方移住に必要な3つのこと
せっかく憧れの地方移住を実現したものの、理想と現実に大きなギャップを感じたり、地域に馴染めなかったりといった理由ですぐに都会へ戻ってしまう方は少なくありません。思い描いた田舎暮らしを叶えるためには、いったいどうしたらよいのか。ここでは、本書を通して気づいた地方移住に必要な3つのポイントをご紹介します。
1.コミュニティで自分の役割を確立すること
地方移住に失敗する理由として、地域のコミュニティに居場所を見つけることの難しさが挙げられます。特に都会から単身で移住した方のなかには、うまく地域のコミュニティに溶け込めず、居心地の悪い思いをするケースが少なくありません。本書では、主人公の青年が地域の人々へ「お手伝い」をすることでコミュニティに溶け込もうとしている姿が印象的でした。
隣人の住宅の雑草を抜いたり、留守中の別荘の管理を担当したりと、周囲の人々の困りごとを解決することで青年は地域にとって必要な存在として認められていきます。都会と比べてコミュニティを大切にする地方では、そのコミュニティにおける自分の役割を築く努力が大切です。最近ではテレワークの普及により家の中で仕事ができるようになりましたが、これから地方へ移住を考えている方は、「家の外での仕事」も意識的に作り出していくと良いのかもしれません。
地方移住を失敗させないために
2.「ないもの」ではなく「あるもの」に目を向けること
また、都会から地方へ移住するうえでポイントとなるのが「不便さ」をどこまで許容できるかという点です。電車の本数やコンビニの近さなど、たしかに都会と比べて田舎には不便さを感じる場面が少なくありません。しかし、「ないもの」ばかり気にするのではなく、「あるもの」を大切にすることで田舎暮らしの楽しさは格段にアップするのです。
本書の中では、都会暮らししか経験したことがなかった青年が、サーフィンなどのアウトドアを始めることで都会とは別の楽しみ方に気づいていきます。そのほかにも近所の人と釣りに訪れるなど、都会とは違った意味での「豊かさ」を知り、主人公自身の価値観は徐々に変わっていくことに。地域コミュニティの温かさや自然の豊かさなど、都会にはない田舎の良さを自ら探していくことが地方移住には重要だということでしょう。
3.他人と比較せず、自分の幸せを追求すること
会社を辞めたばかりで、今後どうやって生きていこうか悩んでいる主人公。都会で出世を目指す彼女の存在などもあり、都会に戻るべきか、父の住んでいた房総半島に残ろうか葛藤を続けます。主人公に限らず、田舎暮らしを始めようか迷っている方のなかには「周りと違う道を選ぶことへの不安」を感じている方もいるのではないでしょうか。海が見える家では、田舎暮らしを通して主人公が「自分にとっての幸せ」を見つける様子が鮮明に描かれています。本書を読めば、自分の幸せを追求することの大切がわかるはずです。