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連載 | 田中佑典の現在、アジア微住中

山の茶畑で汗を流す。

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目次

高雄、現地の暮らしをいてみる。

微住2か所目は、台湾南部の都市・高雄。

微住として、前回の香港とは対極の、ゆったりとした空気が流れる港町・高雄で、「変化しない日々」にどんな微住の魅力が隠されているのかを探りたかったからだ。そのため、基本的に今回の微住では毎日同じ時間に起床、就寝し、ルーチンワークに徹した。

よく、バックパッカーと微住との違いを聞かれるが、そのはっきりとした違いとして荷物の量にある。バックパッカーのような大きな荷物を背負っていくのではなく、微住はいかに現地人を「く」かに意義があるため、基本の生活用品や衣服は現地調達で揃えた。

さて、具体的にどんな生活をしていたか。

朝7時半に起床し、近くにある市民プールに出かける。1時間ばかし泳いだあと、近くの路上で販売している人気の飯糰屋で台湾式おにぎりをテイクアウト。そして、近くの公園の中にある私立図書館へ。ここで昼過ぎまで語学の勉強をし、昼食。昼食後は近所のカフェに行って、今度はパソコンで仕事をすます。

夕方になり、涼しくなってきたらシェアサイクルで街を散策。日によっては、夕飯を友人と食べたり、夜にプールに行く日もあったが基本的には毎日このようなサイクルだ。こんな生活、もし旅行であれば、もったいない、つまらないと思われるだろう。でも実際、現地の人たちの生活ってこんな感じなのだ。

こんな暮らしをしていると、顔を合わせる人たちも自ずと決まってくる。市民プールで回数券にスタンプを押してくれるおばちゃんとはプール後、世間話をして、いつも行くカフェではいつの間にかイートインかテイクアウトも聞かれなくなった。

近所の公園。大量のおじさんたちはボードゲーム「象棋(シャンチー)」に熱中。
左/近所の公園。大量のおじさんたちはボードゲーム「象棋(シャンチー)」に熱中。右/毎日通った市民プール。監視員や利用者にも顔なじみが。

微住先で働く。

現地人を擬くということで、もう一つやりたいことがあった。それは現地ならではの仕事をすることだ。

そのことを高雄の友人に相談したところ、六龜という町のお茶屋ときゅうり農園の友人を紹介してくれた。

地図で見ると、これまで僕が訪れた“高雄”とは高雄市内ばかりで、高雄県はずっとずっと大きく、内陸の山地まで広がっている。

ここが本当に同じ高雄なのかと疑うほど、霧深く、山地に囲まれた六龜の町。お茶屋では実際に山の上にある茶畑で、農園のおばちゃんかのような花柄の作業着で茶を摘み、その後工場で「殺青」や「揉捻」「乾燥」など、茶葉になるまでのすべての工程を体験した。

茶葉工場での作業。
茶葉工場での作業。

きゅうり農園での仕事は、想像をはるかに超える重労働。高雄の真夏の炎天下、数十個のポリバケツの量になる大量のきゅうりを収穫した。このきゅうりは、台北のスーパーに運ばれるそうだ。

そしてこの2日間、どちらの家でも、仕事前と仕事終わりに、円卓を囲み、家族と一緒に台湾の正真正銘の家庭料理をいただいた。

「おかえり、ご飯ができてるよ」とお母さんが声をかけてくれる。これまで何度も何度も訪れた台湾で、初めての経験だった。

干し大根入り卵焼き「菜脯蛋(ツァイプーダン)」や、龍の髭に似ている野菜「龍鬚菜(ロンシューツァイ)」が特に好き。
干し大根入り卵焼き「菜脯蛋(ツァイプーダン)」や、龍の髭に似ている野菜「龍鬚菜(ロンシューツァイ)」が特に好き。

外からの擬きが内部を活性化させる。

擬くということは本来、日本の芸能では「主役に絡んで前に演じたものを滑稽に真似たりすること」といわれている。

これまで台湾で仕事をする際、徹底して台湾には住まず「稀人の存在」として、現地に接してきた。

新鮮な目線で現地人を装い、遊ぶ。まさにこれは本来の「擬き」の意味に近いと思う。

iTunesも音楽業界から始まったわけではなく、Amazonも出版社から生まれたものではない。

外部から内部へ「擬き」の存在を進入させることで、そこに新しいアイディアや接点、そして革命がつながる。

さて、内部側はそんな外部に対してどういう心持ち、態度で迎えるべきか。そこについては次回にしたいと思う。

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