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酒どころ秋田に誕生した小さなブルワリー 醸造家と建築家夫婦がビールとリノベで街を楽しくする

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「ビールとリノベーションで街の楽しさに気づく人を増やしたい」JR秋田駅から徒歩10分あまり。飲食店と住宅が混在する中通地区のマンションの一階に突如おしゃれなお店が出来た。カフェかセレクトショップか。いや、どうやら中ではビールをつくっているらしい。日本酒ブームに沸く昨今、酒どころ秋田に誕生した小さな小さなブルワリーが注目を集めている。ビールの醸造と建築 2人で2つの仕事をすることで、人生と街をもっと楽しくする夫婦のお話。

目次

街に溶け込むマイクロブルワリー

念願のマイクロブルワリーを2年前にオープンしたのは、筒井智成さん。
醸造所の名前のBREWCCOLY(ブリュッコリー)は、醸造所を意味するブリュワリーと自身が好きな野菜のブロッコリーを組み合わせた造語だ。もともとは会社員として建築の仕事をしていた智成さん、職人の働く姿に憧れ自分でもモノづくりがしたいと30歳で醸造の道に進んだ。
 
智成さん「建築をやっていたので、どんなことをしたら街が面白くなるかとかそんなことを常に考えるくせがあった。街の中に溶け込めるサイズ感の街のビール屋さんがあれば、醸造の時の微かに甘い香りや煙の昇る様子が街の風景の一つになると思った」

ブリュッコリー外観

BREWCCOLYの看板
マンションの一階、味のある看板が目印

地元で育てたハーブを使ったビールにも挑戦

発酵用のビアタンクは3基。併設した出来たてのビールを提供するタップルームでは、常時5種類のクラフトビールを楽しめる。また、友人のデザイナーたちにラベルのデザインを依頼している瓶ビールも人気商品。どれも深く個性的な味わいがファンを増やしている。
今年の春からは、新たに地域で栽培されたハーブを副原料に使用したビールに挑戦している。フワリと香るアロマがクセになると評判だ。

店内画像とビール各種

ビアタンク

醸造所と建築事務所 2人で2つの仕事をするからこそのバランス

注目が集まるもう一つの理由は、筒井さんの妻の友香さんの存在だ。秋田市内で建築事務所を営む友香さんは、住宅をはじめカフェやベーカリーなど人気スポットのリノベーションを手掛けている。高校時代に同級生だった2人が結婚したのは3年前。東京のリノベ専門会社で住宅のリノベーションを手掛けていた友香さんは、ふるさと秋田へUターンし市内のデザイン事務所勤務を経て独立した。

友香さん「いずれは秋田に帰ろうとは思っていたが、東京で目まぐるしく働いている時は帰るきっかけが分からなかった。秋田で働く智成さんと付き合うようになっていいタイミングだとは思ったが、もう少し東京で勉強したいという想いがあり、智成さんも醸造所を作る準備をしていたので、2年ぐらいはお互いそれぞれやることをやろうということで遠距離恋愛をしてからUターンした」

リノベーションを手掛けた物件写真

リノベーションを手掛けた物件2
友香さんがリノベーションを手掛けた店舗 撮影 高橋 希(オジモンカメラ)

友香さん「もともとある建物のポテンシャルを大事にしたいから、リノベーションする前に何のお店だったのかは結構気にする。事業主のやりたい事がエリアに合っているか、工事費が回収できるかなども自分なりの感覚で話しながら打ち合わせを進めていく」

常に複数のリノベ案件を抱える売れっ子の友香さんだが、忙しい毎日の中で自分の仕事に加えてブリュッコリーのビールのラベル貼りやイベント時の接客なども担う。逆に友香さんの建築案件に智成さんがアドバイスをすることもあるという。
智成さん「あれ?結局僕の意見って反映されてないなって思うところも多いんだけど、建築はやっぱり好きなので関わりたい。(友香さんの案件を)手伝わせてもらうことで、醸造と建築の両方を手に入れている感じ」

家業はビール醸造と建築。実務上はそれぞれの責任での仕事ではあるが、あくまでも2人で2つの仕事をするのが筒井家流だ。

地方ならではの隙間を個々の魅力で埋めていく

互いに好きな仕事を追求しながらも根底に流れているものは、「街を楽しくしたい」という同じ想い。組織を離れて、個々として独立することにもそれほど不安はなかったという。 
智成さん「独立して良かったのは、自分の生活をある程度コントロール出来るところ。忙しくても精神的にはそれほど疲れていないことにやってみてから気がついた。秋田は地方なのでいい意味であちこち隙間だらけ。個々の人が地域の魅力に気がついてその隙間を埋めていける可能性を感じる。そうすれば自分たちの街が豊かになっていけるのではないかと思う」

新型コロナウイルスの影響で飲食店が打撃を受ける中、最近は2人で週末シェアレストランの厨房にも立ち自慢のビールを提供する。

地域の工芸品イタヤ狐付きサーバー
角館の伝統工芸イタヤ細工のイタヤ狐を取り付けた世界に一つのタップはオリジナル

アツアツの磯辺揚げを頬張ってフレッシュなビールをグビリ

ブリュッコリーの楽しみ方でオススメは、道路をはさんで向かいにある鮮魚店で竹輪の磯辺揚げをテイクアウトし、タップルームで揚げたて熱々の磯辺揚げをハフハフ言いながら樽から注ぎたての冷たいビールで流し込む。

街を楽しむ大人が増えれば、街の流れも空気も変わっていくはず。

鮮魚店外観
友香さんがリノベーションを手掛けた鮮魚店 撮影 高橋 希(オジモンカメラ)

磯辺揚げとビール

 

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