「世界一チャレンジしやすいまち」の実現をビジョンに掲げる宮崎県新富町。人口1万7,000人の小さなこの町で、なぜ1粒1,000円ライチや企業との連携事例が続々と生まれ、移住者たちが飛びこんできているのか。仕掛け人である地域商社こゆ財団の視点から、その理由と気づきをご紹介します。今回のテーマは「チャレンジは連鎖する」です。
宮崎県新富町の中心部にある商店街は、小学校やスーパーがすぐそばにあり、役場も徒歩圏内にありながら、ふだんはほとんど人通りがありません。
こゆ財団は設立から半年後の11月、この商店街を月に一度だけでも多様な人が集まり交流できる場所にしようとの思いで、地域交流マルシェ「こゆ朝市」を始めました。現在に至るまでの試行錯誤の様子は、前回のコラム(https://sotokoto-online.jp/4195)でお届けした通りです。
「こゆ朝市」は、地元出身でUターン者でもあるこゆ財団メンバーの1人が、自分の使命としてこれまで取り組んできました。上手くいかないことばかりの中、それでも熱意をもってチャレンジする彼の姿勢は、今に至るまで多くの人材の刺激となっています。
その一人が、同じこゆ財団メンバーの一人である「こゆ野菜カフェ」店長の永住美香です。
みんなが交われる場所を私がつくりたい
商店街に多様な人材が交われる場所をつくろう、というカフェの構想が本格化したのは設立2年目の春。メンバーには飲食店運営経験のあるメンバーはいませんでしたが、そこでチャレンジを決意してくれたのが永住でした。
接客業の経験こそあったものの、飲食店運営は素人。それでも彼女が手をあげてくれたのは、何より彼女自身が多様な人材が交われる場所をつくりたいという意思を示してくれていたからです。
野菜が主役のカフェに
2018年8月のオープン時にはソトコト編集長の指出さんに立ち会っていただき、激励をいただいたカフェ。約半年はお客様が集まらず、苦戦を強いられました。
転機になったのは、雑誌を見て訪れてくださった町外の方の声。「ここは野菜がとてもおいしいですね」と、私たちにとっては当たり前で見えなかった新富町の野菜の価値を教えてくださったのです。
永住の父親はJA指導員経験もあるベテラン農家。小さな頃から誰より野菜のおいしさ、素晴らしさを知っていた彼女がそれをメニューに引き出し始めたことで、健康志向のお客様をはじめ、地元の方も少しずつのぞいてくださるようになりました。
キュウリやピーマンといった定番はもちろんですが、生で食べられるカボチャ「コリンキー」や、不思議ならせんの造型をした「ロマネスコ」、オクラの花といった珍しい食材が顔を出すのもここの面白さです。オープン時は「KOYU CAFÉ」という名称だったのが、いつのまにか「こゆ野菜カフェ」という名称が定着してきたのも、彼女のチャレンジの賜物です。
いつでもどこでも新富町の野菜を味わえるように
2020年はコロナ禍の中、遠方から応援してくださる方にも新富町の野菜をお届けしたいと、クラウドファンディングにも挑戦。彼女が見立てた野菜を、100名のお客様にお届けできるようになりました。
店舗に来れない方とも、野菜を通じてつながりつづけること。休業期間中に「こゆ野菜カフェは店舗にあるのではなく、私たちとお客様との間にあるのではないか」と考えた彼女のコンセプトのもと、新しいチャレンジが始まっています。
また、店内では「自分が手掛けた牛乳を味わって欲しい!」という酪農家の牛乳や、パパイヤなどを栽培している農家さんの手作りドレッシングなどを扱っています。
商店街で始まったチャレンジの連鎖は、これからもどんどん広がっていきます!