意外に読めない「平群」なんと読む?

意外に読めない「平群」なんと読む? 由来から魅力までまとめて紹介!

全国の地名には一見して読み方が分からないものがあります。名付け親の思いがたくさん詰まっているように、その土地の歴史や人々のふるさとに対する思いが詰まっている地名。今回は、千葉県南房総市にある地区名「平群」を紹介します。山々に囲まれた農村地帯。代々長男にだけ受け継がれた手作り花火の技。神輿や担ぎ屋台が出る秋祭り。魅力ある山に訪れるハイキング客。「どぶろく特区」を活用してどぶろくを製造している地区、それが「平群」です。さぁ、あなたは何と読む?

平群郵便局


 


正解は「へぐり」


平群の由来についてはいくつもの説があります。その昔大和(現在の奈良県)を本拠地にしていた豪族、蘇我一族の平群氏が居住していたからという説。同じく大和にある「平群山」にちなんで名付けたという説も。


昭和30年、平群村と隣の岩井町が合併して富山町(とみやままち)になり、その後富山町が近隣の町村と合併して南房総市になりました。住所には、文字違いの「平久里(へぐり)」がこの平群地区に残っています。住所でいう「平久里下」は、「にほんの里100選」(朝日新聞社/森林文化協会)に選定されている、美しい自然が残る里山です。


南房総市観光協会の紹介で、平群地区で自然体験学習や登山ガイドを行っている「いわい案内人の会」事務局の吉野秀一さんに、平群について教えていただきました。


千葉県内で唯一「岳」がつく山「伊予ヶ岳」


山々に囲まれている平群地区で人気の山は、伊予ヶ岳。標高336.6メートルですが、「千葉県のマッターホルン」として親しまれています。その理由は、1時間ほどで登れる行程の中に岩場や鎖場が存在し、頂上からは360度の大パノラマが広がっているから。天候によっては海の向こうに富士山が望め、「関東百名山」(山と渓谷社)にも選ばれています。


伊予ヶ岳
2014年に発行された特殊切手「日本の山岳シリーズ 第4集」では、伊予ヶ岳も取りあげられた (c)Kazuhiko Koide

伊予ヶ岳の名前の由来については、広報とみやま「わが町歴史あれこれ」を総編集した『ふるさと富山』に記されていました。



四国、伊予の国(現愛媛県)にある「石鎚山」の別名「伊予大岳」の名をとって、房総の奇峯を「伊予ヶ岳」と名付けたものといわれている。


引用:『ふるさと富山』



石鎚山は「修験の霊場」として有名だったので、石鎚山の別名を持つ伊予ヶ岳にも多くの修験者が修行に訪れていたそうです。


伊予ヶ岳の看板
天狗(てんぐ)伝説が残る伊予ヶ岳の看板 (c)Kazuhiko Koide

実は、この伊予ヶ岳に「平久里」の語源があるという説が。「びょうぶのようにそびえる伊予ヶ岳に夕陽が照ってなかなか日が暮れず、『日暮れざる里』が平久里になった」という話を吉野さんが教えてくれました。


22.3メートルの絵巻!?


伊予ヶ岳の登山口に、菅原道真を祭った平群天神社(へぐりてんじんじゃ)があります。本殿には登山記念スタンプが置いてあり、登山の無事を祈ってから伊予ヶ岳へ向かう人も。


平群天神社
本殿の後ろに伊予ヶ岳が見える (c)鍋田ゆかり

道真は、人々から雷神になったと信じられましたが、その怨霊めるために天神信仰んになったと伝えられています。多くの地方で天神社が造られ、また天神縁起絵巻が制作されるようになりました。


引用:『富山町の伝説と歴史』(富山町教育委員会)



平群で制作された絵巻「平群天神縁起絵巻」は3巻本で、南北朝か室町時代初期のものといわれています。第3巻は地元産の平久里紙が使われていて、県の有形文化財に指定。1巻のサイズは、33.5センチ×14メートル、2巻は22.3メートル、3巻は19.1メートルあります。
※2021年4月現在、平群天神縁起絵巻の展示は行っておりません


へぐりんまちと手作り花火


へぐりんまち
夜になると8台の担ぎ屋台が一堂に会する (c)Kazuhiko Koide

毎年10月に行われる平群の祭りを、地元の人たちは「へぐりんまち」と呼びます。



平群の祭礼は、まず祭神の神輿を渡御の礼により、本殿から御旅所の御仮屋に移し、氏子等が献灯の屋台を運び入れ、奉納花火を打ち上げて、祭神をお慰めする行事であります。


引用:『ふるさと富山』



神輿1基、担ぎ屋台8台が出祭し、昼間は地区内を練り歩きます。夜になると元平群小学校のグランドに集結して、平群地区発祥の「平群囃子(へぐりばやし)」を競演し、祭りを盛り上げます。


へぐりんまちと花火
(c)Kazuhiko Koide

平群の手作り花火の始まりは、宝歴2年(1752)以前に花火製造の優れた技術を持っていた新助が回国巡礼の途中平群に滞在し、村人が競って教えを受けたのが始まりで、平群の花火は国で一番と唄われるようになりました。


参照:『ふるさと富山』



独特な秘法は長男にのみ受け継がれてきたそうです。花火筒の長さは7メートルもあり、現在は平群天神社の境内で実物を見ることができます。


当時の手作り花火の話になると、「牛が降ってきた」という話を耳にします。パラシュート花火で、牛の落下傘が降ってきたそうです。昔は各家で牛を飼っていたからでしょうか。残念ながら、現在へぐりんまちで使われているのは平群の手作り花火ではありませんが、やはり花火が打ちあがると祭りは盛り上がります。


山だけじゃない!? どぶろく「伊予ヶ岳」


記事を読んで、少しは平群について興味を持っていただけたでしょうか? 最後に、お酒好きな方々へ向けてどぶろく「伊予ヶ岳」を紹介しておきます。


南房総市は2012年にどぶろく特区の認定を取得しました。そして平群で作られたのが、どぶろく「伊予ヶ岳」。


どぶろく「伊予ヶ岳」
平群地区にある「和光食堂」で販売されている(c)和光食堂

今シーズンは既に売り切れとなっていますが、10月末には2021年度の製品が提供できるそうです。秋の行楽シーズン、千葉県のマッターホルン伊予ヶ岳に登り、どぶろく伊予ヶ岳を飲む、なんて旅はいかがでしょう?


 



▼取材協力


いわい案内人の会

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