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岐阜県「各務原市」の正しい読み方はどれでしょう?歴史と変遷を読み解こう。

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突然ですが、岐阜県にある「各務原市」の読み方を、みなさんは正しく知っていますか?各務原市にゆかりのある方には簡単な問題かもしれません。しかし最近東海圏に引っ越してきたばかりの私にとっては難読地名で、その正しい読み方がずっと気になっていました。そこで調べてみると、実は「各務原」の読み方には興味深い歴史や変遷があることが分かりました。

目次

各務原ってこんなまち

各務原
写真提供:ピクスタ

各務原市は岐阜県の南部にある、人口約15万人のまちです。自然や文化財なども多く残る一方で、「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」のような宇宙や航空に関する施設も有する地域。各務原台地で採れる「各務原にんじん」が特産で、そのにんじんを使った「各務原キムチ」は岐阜県を代表するご当地グルメの一つでもあります。キムチカレーやキムチジェラートなど、各務原キムチを使ったグルメも市内では提供されているようです。

「各務原市」の読み方、正解は?

では、三択クイズの答え合わせです。「各務原市」の正しい読み方はどれでしょうか?

各務原市

正解は・・・②「かかみがはら」です!
しかし不思議なことに、実は①や③も実在する読み方なのです。①「かがみがはら」はJRの駅名ですし、③「かがみはら」は各務原市民が一般的に使っている読み方だそうです。ちなみに①~③以外にも、「県立各務原高校」は濁点が全く入らない「かかみはら」と読むのだそうです。一つの地名で4つも読み方があるなんて・・・驚きです!

元々は「かかむ」だった

各務原
写真提供:ピクスタ

なぜ一つの地名に、こんなにも読み方があるのでしょうか。その歴史を研究した、各務原市教育委員会・西村勝広さんにお話を聞かせてもらいました。

西村勝広さん(以下西村さん) 古代7世紀ごろ、この辺りは美濃国各牟(かかむ)郡と呼ばれており、そこを治める郡司(今で言う市長)が渡来人だったことから、地名から名前を取って「各牟」と名乗っていたようです。また「各牟(かかむ)」という地名は、昔からこの辺りが山に“囲まれている”地形に由来しているのでは、というのが私の説です。

始まりは「各牟(かかむ)」だった地名は、そこからかなり複雑に変化していきます。西村さんによると、「各牟(かかむ)」から始まった地名はやがて「各務」という漢字に置き換わり、その結果、読み方も「かかむ」に加えて「かかみ」という発音が生まれたのだと言います。

各務原市

さらにその後、関西文化の影響を受けて「かがみ」という読み方が生まれ、何もなかった「野」だった場所に人が入り始めたことで「原」と認識され、地名自体が「各務野(かがみの)」から「各務ヶ原(かがみがはら)」に変わっていったのだそうです。

西村さん 関西文化の影響を受けたのは、各務原市の南部です。ここは江戸時代に人や物、文化が行き交っていた中山道が横断していました。その影響で、南部では「かがみ」という読み方が広まりましたが、北部では影響を受けなかったことから、当時も今も「かかみ」と濁らない発音のままです。ただ南部の方が町として発展していて、地図を作ったのもその人たちだったことから、「かがみ」という読み方が普及したと思われます。

各務原
岐阜県各務原市 中山道鵜沼宿(写真提供:ピクスタ)

駅名の漢字・読み方が異なる理由

その後、助詞として「ヶ」が入る「各務ヶ原(かがみがはら)」という地名に加え、「ヶ」を省略する使い方も増え、「各務ヶ原(かがみがはら)」と「各務原(かがみはら)」という二つの読み方・漢字が混在し始めるのだといいます。
そして昭和38年に4町が合併し、新市名が「各務原(かかみがはら)市」と制定されますが、なぜこの漢字・読み方になったのかは資料が残っていないのだそうです。どういう話し合いの結果この読み方に至ったのか、気になるところです。

ちなみに駅名にも地名が変化した名残が残っているそうです。助詞「ヶ」が広まっていた当時にできたと思われるJRは、今もそのまま「各務ケ原(かがみがはら)駅」という駅名です。しかし新市誕生に合わせて駅名の読み方を変更した名古屋鉄道は、「名電各務原(かかみがはら)駅」なのです。

どの読み方も間違いではない

各務原市
各務原市 学びの森(写真提供:写真AC)

最近では「みっぱら」という愛称も生まれているという各務原市。これほど読み方が混在するまちは珍しいのではないでしょうか。
「市の名前は?」と聞かれれば「かかみがはら」が正しい読み方ですが、それ以外は統一されていません。でも一般市民はそこに違和感はなく、それぞれが言いやすい読み方を使えばいいのだそうです。

西村さん 僕らが子どもの頃は、日常会話では「ヶ」が入っていない「かかみはら」や「かがみはら」という読み方が使われていました。でも最近の子どもたちは、学校で正式な読み方を教わっているので、「かかみがはら」と読めるんです。以前、日常的にどの読み方を使っているのか、世代や地域差をアンケートで調べようとしましたが、回答がバラバラすぎて、アンケートがまとまらなかったこともありました(笑)。ただ複数の読み方が混在している、ということは分かりました。

「どの読み方も間違いではない」というゆるさが、私にはとても新鮮に感じられた今回の取材。今でも各務原市内で、その地名の変遷を垣間見ることができると言います。ぜひ訪れた際には、人や施設によって異なる読み方の違いを、意識しながら歩いてみてはどうでしょうか。

●取材協力:各務原市

※2021年3月に各務原市で行われた「環境省presents SDGsローカルツアー」の様子はこちら

 

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