海と山に囲まれたリゾート施設「行川アイランド」(2001年8月閉園)を訪れる観光客のために設置されたという「行川アイランド」駅。何と読む?ゆくかわあいらんど?ぎょうせんあいらんど?正解は……
正解は「なめがわあいらんど」駅
千葉県の南に位置する館山市から、太平洋に面した海沿いを北上して千葉市へと至る国道128号線。美しい海や港町を横目に海岸線を車で走る。海が見え隠れする中トンネルを走り抜けるたびに、初夏を迎えて勢いずいた樹々の緑が目に飛び込んでくる。そんな山あいの国道128号線沿いにあるのが、JR外房線の行川アイランド駅だ。電車だと、JR館山駅から1時間ほどで行ける。
改札の外には、南国を思わせるヤシの木や色とりどりの花々が植わっている中にポツンと公衆電話ボックスが立っていて、他には何も見当たらない。現在は閉園しているが、徒歩3分の場所に40万平方メートルの敷地が広がるリゾート施設「行川アイランド」があった。
勝浦市民に聞いてみた。「行川アイランド」ってどんな場所?
1964年に行川アイランドがオープンした当時12歳だったという、「鵜原(うばら)まちづくりの会」事務局の照川由美子さんに話を聞いた。
照川さん「オープン記念のときに、行川・興津(おきつ)・清海(せいかい)小学校児童の代表が招かれて、行川アイランドの広場で陸上大会がありました。私が参加したリレーチームが優勝して、優勝賞品がステンレスのボウルだったんです。お料理に使うボウルです。行川アイランドの経営がステンレス商品を扱う会社だったからでしょうけど、12歳の私はあまりうれしくありませんでした。母は喜びましたけど(笑)」
照川さんの誕生日は、行川アイランドでポリネシアンダンスのショーや花火を見ながらBBQをして過ごすのが毎年の恒例行事になっていたそうです。
照川さん「閉園すると聞いたときは驚きました。勝浦の自然景観をいかして生き物がたくさんいて、寛げる場所がなくなることが悲しく、一つ火が消えた感じでがっかりしました」
勝浦市内で出会った人に行川アイランドについて質問をすると、「フラミンゴショーが人気だった」という声が多く返ってくる。たくさんのフラミンゴが音楽に合わせて一斉に羽ばたいたり、向きを変えたりして、まるで踊っているようだったという。
他にもクジャクショーや戦隊もののショー、プールやジャンボすべり台もあり、「園内にあったホテルへの入口はトンネルになっていて、鳥の声が聞こえて異世界へ行く感じがした」という声も。
生き生きした表情で行川アイランドについて語る人々を見ていると、私も一度は訪れてみたかったという思いがこみ上げる。
釣りや家族連れに人気の興津港海浜公園
行川アイランドから少し北上したところにあるのが、勝浦市興津。海沿いにある興津港海浜公園に駐車して、突堤から釣りを楽しむ人や、興津海水浴場で過ごす家族連れに人気の場所で、白い砂浜と穏やかな美しい海が広がっている。
駅でいうと行川アイランド駅の次の駅「上総(かずさ)興津」駅だ。コンパクトな町なので、商店やお寺をのんびり散策できる。
電車に揺られながら「行川アイランド」「上総興津」「鵜原」と簡単に読めない地名を確認し、その土地の空気を吸い、思い立ったら電車を降りる旅も楽しいかもしれない。まずは路線図を眺めることから始めてみよう。