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移住・定住

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地域とつながり、未来をひらく。地域おこし協力隊の可能性。

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東北のことを知り、東北ファンを増やすための取り組み「Fw:東北 Fan Meeting」(フォワード東北ファンミーティング)。この一環として、東北への移住をテーマにしたオンラインイベント「東北暮らし発見塾」が行われています。第4回は「地域おこし協力隊が生み出す未来への実践」と題して、2024年1月下旬に開催されました。

目次

洋野・久慈・利府の各地域で活躍する協力隊OBたち。

「地域おこし協力隊」とは、都市地域の住人が人口減少や少子高齢化が進む地域に移住し、農業・漁業への従事、地場産品の開発や地域のPR、住民支援、イベント運営など、さまざまな「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る総務省の取り組みです。今回の「東北暮らし発見塾」では、岩手県の洋野町と久慈市、そして宮城県の利府町から、地域おこし協力隊として活動した後に引き続き地域で活躍している3人が登壇し、地域おこし協力隊の活動や地域での取り組みについて話をしてくれました。

まず、登壇者3人がそれぞれ⾃⼰紹介を行いました。トップバッターは、洋野町で⼀般社団法⼈『fumoto』の代表理事を務める⼤原圭太郎さん。宮城県仙台市出身で、東日本大震災後に仙台を盛り上げるために洋服のブランドを立ち上げ、首都圏でも活動していましたが、「地域から新しいものを生み出したい」と、妻の実家がある洋野町の地域おこし協力隊に応募しました。2016年に着任し、3年間の任期中は観光をテーマに活動。観光協会ウェブサイト制作・運営、イベント企画・実施、トライアルツアー開催などを行いました。任期終了後に、「地域でチャレンジする人の土台になる」というビジョンを掲げ、地域おこし協力隊の活動を支援する組織として『fumoto』を設立。洋野町の関係人口を増やすべく、ウェブメディア『ひろのの栞』やSNSの運営、移住プロモーションなども手がけています。

洋野町関係人口増加事業でおこなっているwebメディア「ひろのの栞」。

次に登場したのは、久慈市移住コーディネーターの藤織ふじおりジュンさん。舞台俳優として活動していた藤織さんは、2015年6月に地方公演のため久慈市を訪れ、たまたま目にした「北限の海女あまPR隊募集」に惹かれて、東京から移住しました。3か月間、海女をしながら観光PRを行った後、「久慈市のことをもっと知りたい、そしてその魅力をもっと伝えたい」と、地域おこし協力隊員になりました。その後独立して起業し、観光PRや商品開発の仕事をするほか、2022年8月からは市の移住コーディネーターも務めています。「久慈市の地域おこし協力隊は企画提案型で、自分の夢を実現させたり、得意なことを生かしたりと、さまざまなフィールドで活動できます。応募段階から着任後・活動中も“おせっかい”をたくさんしてサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください」と藤織さんは呼びかけました。

久慈市移住コーディネーターの藤織ジュンさん。

利府町からは2人が登壇。まず、利府町経済産業部 商⼯観光課 シティセールス係の櫻井貴徳さんが、利府町の魅力や地域おこし協力隊の活動状況について話をしました。「利府町の協力隊は昨年度まで1人でしたが、今年度は20名ほど募集をかけました。利府町にサウナをつくるプロジェクトのほか、特産品である利府梨の商品開発などを行う農業支援プロジェクト、スポーツプロジェクト、ブランディングプロジェクトなど、さまざまな分野で隊員が活躍しています」と櫻井さん。

そして、利府町の地域おこし協力隊第1号として、利府梨の生産や商品開発を行ってきた近江貴之さんの自己紹介がありました。仙台市出身で、新卒で通信業界に入り東京で働いていましたが、「自分の手で目に見えるもの・価値あるものをつくりたい」と、地域おこし協力隊の制度を活用して梨農家に転身。廃棄ゼロを目指して、規格外の梨を使った「金の利府梨カレー」を開発・販売したり、「梨王子」としてSNSなどで利府梨の魅力を発信したりと、利府梨の価値向上に力を入れてきました。そして2023年4月に独立して『利府おもて梨園』代表に。「自分ががんばったらがんばった分だけ立派な実がなるので、達成感があります。梨農家はちゃんと稼げるし、かっこいいんだよ、ということを伝えたいですね」と近江さんは力を込めました。

利府町の地域おこし協力隊から梨農家に転身した、近江貴之さん。

任期終了後を見据え、3年間をどう描くか。未来への種まきを。

続いて、弊誌編集長の指出一正を交えてクロストークが行われました。まず指出が、「3地域とも、地域おこし協力隊の層が厚いですね。そして、移住コーディネーターのキャラクターが立っていることもあり、それぞれの地域で協力隊のみなさんがやりたいことがはっきりしているなと感じました。協力隊のみなさんが、にぎわいづくりはもちろん、まちに新しいものを生み出していますね」とコメント。そして「僕は大原さんがお考えになった『ローカルコミュニケーター』という言葉が大好きなんですよ。その人がいることで対話が進み、仕事が地域にひらかれていく。コミュニティマネージャーに近い存在なんでしょうね」と述べました。

それに対して大原さんは、「従来は『コーディネーター』という肩書でしたが、地域の人とより密にやり取りする、双方向でコミュニケーションを取る、というニュアンスを込めて『コミュニケーター』としました」と説明。また藤織さんは、「ローカルコミュニケーター」という存在について、「私自身はコミュニケーションが得意ではないのですが…(笑)。移住をコーディネートする際は、まず移住者と地域の人をつなげることを大事にしています。人脈を生かして人と人をマッチングさせるという意味では、ローカルコミュニケーター的なことをしているのかもしれません」とコメントしました。さらに櫻井さんは、「利府町には移住コーディネーターはいないのですが、駅前にあるコワーキングやイベントスペースとして使える『tsumiki』という場所で、さまざまなマッチングやつながりが生まれています」と話しました。3地域それぞれの形で、移住者が地域に入っていき、地域の人とつながる工夫をしています。

利府町で開催された、フィンランド発祥のスポーツ「モルック」の体験会の様子。

ここで、ファシリテーターを務める『エイチタス』の原さんから、「地域おこし協力隊の3年間は、地域と自分のマッチング期間なのか、腕試しの期間なのか、仕事の基盤をつくる期間なのか……どのようにとらえたらよいのでしょうか?」という問いかけがあり、3人の登壇者がそれぞれコメントしました。「かつての地域おこし協力隊の業務は役所の活動の一環で、あまり自由度もありませんでしたが、最近では、任期終了後に生計をどう立てていくのかを最初から考えて、3年を過ごしてもらうようにしています。活動していく中で、当初の目標や計画が変わっていってもOKなので」と藤織さん。大原さんも、「協力隊の3年をどう過ごすかが大事なので、充実したものになるようサポートを行っています。目標があるほうがやりやすいですが、地域と関わりながら目標が変わっていく人もいますね」と話しました。そして近江さんは「私の場合はもともと独立するというビジョンがあったので、3年間で商売の道筋を立てていきました。目標が明確だったので、活動しやすかったですね。ミッションが定められていないような地域おこし協力隊の方は、自分自身のゴールを明確にすることが肝だと思います」と述べました。また指出は、「3年間はあっという間だと思うので、その後1~2年くらい、メンターがついて補講的に学べるしくみやサポートがあるとよいですね」とコメントしました。

洋野町地域おこし協力隊の活動の一環で「ウニづくしトライアルツアー」を実施。

トークセッションの後は、大原さん・藤織さん・近江さんの3ルームに分かれてブレイクアウトセッションが行われました。参加者たちは、洋野町、久慈市、利府町の印象や、自身の移住に対する関心について話をしたり、登壇した3人に生活や仕事のことを尋ねたりしました。ブレイクアウトセッション後、参加者からは、「いま自分が取り組んでいることを地域でどう生かせるか、考えていきたい」「やはりどこでも人のつながりが大切だと実感しました」「話を聞いてアイデアがいくつか浮かびました。今後の活動に生かしていくために、3地域におじゃまして視察させてもらいたいです」といったコメントが寄せられました。また、元地域おこし協力隊の参加者からは、「地域ごとに異なる課題があり、活動には難しさや困難がともないますが、切磋琢磨しながらがんばっていきましょう!」という力強い言葉もありました。

最後は、復興庁の早川政策調査官が次のように挨拶をして、締めくくりました。「登壇者3人のお話の中で、“あっという間の3年”という言葉がありましたが、充実しているからこそ短く感じるのではないでしょうか。それでもまだ課題がある、やり残したことがあると思うのは、自己成長の証ではないかと。登壇されたみなさんは、真剣に地域のことを考えて3年を過ごされたのだと思います。そんな方々がいるからこそ、地域が魅力的になる。本日ご参加されたみなさん、洋野、久慈、利府に興味をもったら、この3人に会いに行ってください。3人が“おせっかい役”としてみなさんを迎えてくれるはずです。さまざまな地域に足を運べば、自分にフィットする地域が見つかります。そして、その地域の魅力をみなさんが発信して、ぜひ盛り上げていってほしいと思います。引き続き、東北沿岸を応援してください」。

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photographs by H-tus Co., Ltd.
text by Makiko Kojima

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