特定非営利活動法人ゼリ・ジャパンでは、プラスチックに由来する深刻な海洋汚染の課題に向き合うため、ゼロエミッションの創始者であるグンター・パウリ氏と、この問題の解決に取り組むスイスの財団「レース・フォー・ウォーター(以下、R4W)」と共に様々な協議を行い、2019年2月9日に提携協定を結んだ。「R4W」は海洋プラスチックの問題解決に取り組んでいる財団。太陽と風力と水素で動く画期的な船である「レース・フォー・ウォーター号」は2017年4月にフランスを出港し、大西洋、カリブ海、南太平洋などで、海洋汚染に関する実態調査や啓発活動を行っている。
グンター・パウリ氏が提唱したゼロエミッション構想とは
2019年7月31日、渋谷EDGE OF(エッジオブ)にて本プロジェクトに関するプレスブリーフィングがグンター・パウリ氏(ゼロエミッション創始者、ゼリ・ジャパン特別顧問)より行われた。
1994年に国連大学にてパウリ氏が提唱したゼロエミッション構想(Zero Emission Research and Initiative)は、複数の産業がクラスター(連環)を構築することで、廃棄物を資源として再利用し最終的な「廃棄物ゼロ」が実現できるという理念。廃棄物は経済的価値を生み、しかも環境への負荷を減らすことができるという。
パウリ氏は海のマイクロプラスチック汚染の問題について語った。流木や海藻なら、微生物などの働きでやがては分解され、二酸化炭素や水などに戻っていく。しかし、プラスチックは、いくら小さくなっても、分解してなくなることはなく、しかも、小さなプラスチックは、海にいる生物の中に吸収されてしまう危険性もあり、生態系への影響が心配される。主な課題は2つ。”プラスチックが海洋に流出するのをくい止める”、“すでに海洋に流れてしまったプラスチックをとりのぞく”と語る。その2つの課題に取り組もうとしているのがまさに「R4W」プロジェクトだ。
再生可能エネルギーだけで走る「レース・フォー・ウォーター号」
「レース・フォー・ウォーター号」は太陽光や水素、カイトなどをミックスしたパワーでクリーンな再生可能エネルギーの船を動かし、その中核にはAI技術が取り入れられている(開発費は2600万ドル!)。100トンものボートが化石燃料を使わずに世界を航行できることを実証している。特に、パウロ氏がアピールしていたのは再生可能エネルギーとしての水素である。ソーラーパネルから発生した電気エネルギーを使い、海水を汲み上げて淡水化し、その後、電解槽で水素を生み出す。200キロの水素は電気に変換され、8日間の航海が可能だというから驚きだ。さらにはこの船には「Li-Fi」を搭載しているという。Wi-Fiは電磁波の「電波」で通信するのに対し、Li-Fiは電磁波の「光波」で通信する。Wi-Fiだと近隣で電波同士がぶつかり合う「電波干渉」が発生する場合もあるが、 Li-Fiはこういった電波干渉を防ぐことができるという。「レース・フォー・ウォーター号」は、マイクロプラスチックをエネルギー源に変換できる革新的な手法のプロモーションとクリーンエネルギーへの転換への促進を目的に掲げて世界中を航行し続けている。科学者や政策決定者が集い、人類にとって最も大切な水資源の保護についての学識を分かち合う機会を設けている。
「レース・フォー・ウォーター号」が日本にやってくる!
そして、東京オリンピック・パラリンピック開催の期間を前に、2020年4月この船が日本の港にやってくる。およそ4ヶ月間、各地を航行する予定だ。その貴重な機会に研究者、諸機関、団体、企業そして未来を担う子供たちと共にプラスチックの社会課題に関するソーシャルな取組みを各地で行うプログラムを計画しているとのことだ。
問い合わせ先
特定非営利活動法人 ゼリ・ジャパン事務局
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