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連載 | 体験にはいったい何があるというんですか?

新しいウェディングへ挑戦!北海道の自然を活かした非日常を味わえる空間【大江千紘・中屋祐輔対談】

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私が生まれ育った北海道の自然を自由に使って一人一人が思い描く結婚式を作りたい。雄大なランドスケープをキャンバスに、五感に響く感動体験をウェディングで提案したいと思った私は、「LANDRESS WEDDING」を立ち上げた。そして非日常的なウェディングを通して新しい感情を届けるための挑戦はまだ始まったばかりだ。

目次

歯科医療から違う業界への挑戦!

「北海道産メープルシロップを収穫するプロジェクト”The girl met a maple tree”」

中屋 大江さんは歯科医療の大学を卒業した後、広告業界へ進まれたそうですが、業界を大きく変えた理由は何だったのですか?
大江 大学に入って間もない頃、日々の生活に違和感を感じてしまったんです。その中で途上国での歯科医療に興味を持って、バングラデシュで1ヶ月ほど研究もしました。途上国の人たちのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を豊かにするという目的を達成するためなら、大企業に入ってもゴールは一緒だと思ったんです。

色々な情報がある中で自分の得意分野が見付からず、心の底からとことん悩んだ末、誰よりも信念を持っているもの、社会に出るにあたって、誰のために何のために仕事がしたいのかなと考えたときに地元の北海道に視線を向け始めました。
中屋 北海道に絞って面接を受けたんですか?
大江 東京と北海道の医療業界、大手広告代理店の東京本社、北海道支社の面接を受けました。最終的には広告代理店の北海道支社に入社して3年半程働いていましたね。 
中屋 その3年半で気付いたことや、辞める理由は何かあったのですか?
大江 実は辞める理由がなかったんです。これをしたいと思えることがなくて、会社以外のところでイベントを始めたりしました。札幌は若い女性が結婚・出産をして仕事を辞めるので社会に出る人が少ないんです。何か新しいきっかけに出会ったり、一歩踏み出して新しい人に出会うことができたら、もっと社会に出て活躍できる人が増えるはずだと思い、このコンセプトを基に事業も始めました。

ノイズのない空間に新しい価値を生み出す

実際のウェデイングの様子
実際のウェデイングの様子

中屋 うちとやっていることが似ていますね。体験も結局人がそこにいないと成立しない。日常に刺激が無くなっている人たちは、体験を通して新しい気付きがあれば意外とエンジンが掛かりますよね。
大江 今の時代は大体のことに答えがあるけど、自分の力ではコントロールできないものに出会ったり、ノイズのない空間をどうデザインするかという体験が価値になると思っています。
中屋 用件がないところに場所や課題があったり、一見相関性はないけど自分なりに模索した結果として女性が外に出る機会を作ったり、持っている属性が合わさってデザインしていく感じがすごく気持ちいいですよね。
大江 そういうのが好きなんだと思います。その中で「ランドレス」も生まれました。

北海道で唯一無二の体験を作り上げたい

大江さんのウェデイング時の写真
大江さんのウェデイング時の写真

中屋 「ランドレス」ができて、それから「LANDRESS WEDDING」を立ち上げたきっかけを教えてください。
大江 始まりは自分の結婚式の時です。夫も北海道出身なので大好きな北海道で唯一無二の体験を作り上げるというチャレンジをしたいと思いました。北海道の自然と食を詰め込んだウェディングを作っている人がいなかったので自分で作るしかなかったし、これがビジネスモデルになって人に同じものを提供できるようになればいいなと思ったのが事業を始めるきっかけになりました。
中屋 非日常体験の中で行う挙式を「DESTINATION WEDDING」と呼ぶんですね。
大江 友達と旅するような感覚に近いと思います。北海道の良さや食の楽しみ方を体験価値としてどうやって作っていくかを考えた結果、特別なことをするより良いと思うものをそのまま楽しんでもらえる空間を作りたいと思いました。

美しいガーデンでウェディングをするために、ショベルカーで土地を造成してランドスケープを整えたり、より爽快な新緑を楽しんでもらうために種を撒いて青い芝生を育てたりもします(笑)。

「LANDRESS WEDDING」が手掛ける挙式
「LANDRESS WEDDING」が手掛ける挙式

中屋 ウェディングという祝いごとを素直にやっているということですよね。あまり作り込まずにそこにあるものを使うというか。
大江 一般的な結婚式は従来のフォーマットに沿って進行していきますが、私はそこに疑問を感じて何もないところから必要だと思うものをプランに盛り込んでいきました。
中屋 結婚式とは色々な組み合わせを出して、それを穴埋めしていくものだという感覚ですよね。「DESTINATION WEDDING」を北海道でチャレンジしたい、制限のないプランニングをしたいという想いがあったんですか?
大江 アウトドアでウェディングをすることに慣れていて、かつ、体験価値にお金を払いたいお客さんとして、海外の人にターゲットを設定しました。自分がウェディングの世界に入ってみると海外の人が日本で式を挙げることがいかに難しいかを知りました。

日本特有のウェディング文化は海外の人に理解できないので、式を挙げることへのハードルが高くなってしまい、その駆け込み寺としてランドレスに相談をする人が増えている現状です。

コミュニケーションの難しさを知る

対談の様子
対談の様子

中屋 今までウェディングを手掛けた中で苦労したことや特に印象に残っていることはありますか?
大江 海外との取引というハードルは自分にとっては初めてだったし、結婚は文化なので何を大事にする人たちかとか、言葉の裏も読み取らないといけないのが大変でした。
中屋 育った環境が違いますからね。
大江 宗教の捉え方・文化・国も違うので、コミュニケーションでしか答えを見出せないところは苦労しました。お客さんが会場に何度も来られない場合もあるので実際の風景や空間イメージを共有できないことが難しく、誤解のないように資料や契約書にまとめたり、写真や動画で伝えるなどのコミュニケーションの細分化に時間をかけました。

心地良い空間を作っていきたい

新郎新婦と会話を楽しんでいる写真
新郎新婦と会話を楽しんでいる写真

中屋 結婚式が終わった後はどんな感情が湧いてきますか?
大江 その時は興奮するんですが一旦無になります。「DESTINATION WEDDING」は当日のサポートだけではなくてその人たちの全てに関係を持つので、ウェディングが終わった後も連絡を取り合ってご飯をしたり、お客さんとすごく親密になれるのが良いところです。
中屋 ツーリズムだったり人の価値や本質に近付くことが大事になってくるんですね。
大江 他のオリジナルウェディングと呼ばれているものと圧倒的に違うこととして、オリジナルであるかどうかではなく、心地良い空間を作ることを意識しています。ただ、おめでたい時間を純粋に楽しめる。つまりそれは人を大事にすることだと思います。

dot button company3周年パーティーの写真
dot button company3周年パーティーの写真

中屋 僕らも去年は会社の3周年と大江さんがプランニングしているウェディングのタイミングが重なったこともあってご一緒させて頂きましたが、すごいハッピーな空気をもらえたし知らない人同士で餅を付いたりして楽しかったです。
大江 初めましての人たちがお祝いするって不思議な空間ですよね。
中屋 最初は不安だったんですけど、だんだん楽しくなっていきました。普通に結婚式に出るとそういう体験なんてしないじゃないですか。参列者なのかBarで出会った人なのか分からないという感覚が面白かったです。
大江 海外旅行みたいなものですよね。

2拠点生活をする中でのメリット・デメリット

中国で生活していた時の様子
中国で生活していた時の様子

中屋 以前は北海道と中国、そして現在は北海道と東京で2拠点生活を送っている大江さんですが、故郷というもの以上に北海道に対する想いはありますか。
大江  世界中を見たり旅した中で北海道の良さってピュアなところだなと思っています。良い意味であまり色がない。だからこそ自分に向き合って答えを見つけたり感じられたりする場所だと思うんですね。

北海道に人を呼んで何気ない体験をして欲しいと言う想いがあるので、紙の上やWebのデザインではなくて、地に足が着いたデザインを作っていきたい。ウェディングもどうランドスケープを遊んでやろうかなというのを考えているので、そういうダイナミックな面白さを提案していきたいです。
中屋 今は北海道でウェディングの企画・実施をしていると思うんですけど、実際に2拠点生活をしながら事業をやっていく中でメリットやデメリットを感じることはありますか。
大江 デメリットは現場との温度感のずれがあるところ。メリットは、現場スタッフが北海道にいながら事業を回してくれるので、私は東京に拠点を置きながら最先端の人・もの・情報に触れることができます。その方がインプットもアウトプットも洗練され、最終的にはお客様に還元できる価値だと思っています。

今までは私が北海道に長く住んでビジネスの基礎を固めてきましたが、海外のお客様をターゲットにしている以上世界中どこでもリモートワークができますし、縦横無尽に動いてその時ベストな環境で仕事をしたいと考えています。

非日常空間を通して新しい感情をプレゼントしたい

実際のウェデイングの様子
実際のウェデイングの様子

中屋 人が実際に持っている心の部分や体験価値の部分を重要視されていると思いますが、この事業を始めて体験というものにどういう気付きや視点が生まれましたか?
大江 あまり押し付けがましいプレゼンテーションはしたくなくて、自由に楽しめる空間を作ってほしいと思っています。毎日同じ生活をしていると心も体も固まってくると思うんですけど、非日常空間というきっかけを通して新しい感情を与えたい。
中屋 僕は意図しないことが体験を開発することだと思っています。体験とは思ってもいない自分に出会う瞬間作りなのかなという気がします。長い人生の中でそれが分岐点になることもあるし、琴線に触れるきっかけがあったからまたその場所に行きたくなるし、そういうことが意図せず作って行けるようになったらいいですよね。
大江 あるホテルに泊まった時、雨が降っている中で散歩をしていたら茶室があったので入ったんですよ。何か説明があるわけではないけど、そこには筆とすずりが置いてあって、自由に過ごしてくださいという感じが居心地が良かったです。意図を持ってやっていたと思うんですけど、「LANDRESS WEDDING」もそういう上質な提案ができたらいいなと思いました。

体験には何があった?

北海道の自然の中で行なったウェディング
北海道の自然の中で行なったウェディング

歯科医療から広告業界へと進んで行った後、ウエディング業界に参入した大江さんですが、いつも心にあるのは誰かのために体験やきっかけを提供したいという想いでした。作り込まれたものや特別なウエディングではなく、集まったゲストが居心地が良いと思う空間を作りたいという想いが大江さんを動かす原動力になっているのではないでしょうか。

何もないところをどうデザインしていくかという体験を作り上げていく大江さんだからこそ、新郎新婦と親密な関係を築くことができ、非日常空間を通して新しい価値観や感情を与えられるのだと思います。
LANDRESS WEDDING

文・木村紗奈江

【体験を開発する会社】dot button company株式会社

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