都市計画家・山崎満広さんに訊く!「明るいまちづくり相談室」第1回:まちづくりの仕事に就きたいのだけど、何をすればいいの?

都市計画家・山崎満広さんに訊く!「明るいまちづくり相談室」第1回:まちづくりの仕事に就きたいのだけど、何をすればいいの?

2022.10.20

「世界一住みたい街」と呼ばれるアメリカ・オレゴン州のポートランド。2012年から、このポートランド市開発局にてビジネス・産業開発マネージャー、国際事業開発オフィサーを歴任した“サステナブル都市計画家”・山崎満広さんのコラムがスタート。近年、日本でも関心が高まっている「まちづくり」について、山崎さんがこれまでに受けたさまざまな質問に答えるかたちでお話しします。

はじめに

今から約70年前の高度経済成長期以来、“受験勉強を頑張り、良い大学に入り、大都市に存在するような大きな企業に入ることを目的として人生を歩むこと”を良しとする考え方は、私たち日本人の志向に強く根付いていました。しかし近年では、若い方を中心にその考え方に疑問を持つ人が増加しています。

それよりも自分たちが生きている、またはこれから生きようとする「街」そのものにアイデンティティーを生み出し、そこを豊かで幸せあふれる環境にするためにはどうすればよいか、また自分が周りの環境といかに共存するか、ということの方に関心が高まってきています。さらには、どうすれば自分たちの街が住みやすい豊かな街になるのか、「まちづくり」を考えることが注目されるようになってきたのです。

そこで、ここでは今後「まちづくり」にかかわっていきたい人に向けて、私がいただいた質問に答えるかたちで「まちづくり」についてお話しできればと思います。

Q:「まちづくり」の仕事に就くには何をすればいいの?

「まちづくり」の仕事に就きたい人に、まずお伝えしたいことがあります。

それは「まちづくり」の仕事をすること自体を目標にしてしまうと、たいていうまくいかないということです。

「なぜ『まちづくり』をしたいのか、その理由は何なのか」を考えてみることが大切で、「まちづくり」にかかわるうえで大切なことは「何を解決していきたいのか」という具体的な目標を持っていることではないかと思います。

つまり「まちづくりをしたいのだけど、何をすればいいのか?」という疑問は動機と目的が逆になっていて、「●●という問題を解決するために『まちづくり』に関わりたい!」と考えてみてほしいのです。まずは、ご自身がお住まいの街や地域の「ここを変えたい」というポイントを見つけてみてください。

「まちづくり」の動機を見つけるためのアクションとは

では次に「変えたいところを見つける」ために何をするのか、どう考えるのかについてお話しします。

まず考えていただきたいのは、あなたが「まちづくり」をすることによってどのようなかたちで社会に貢献することができるかです。自分の好きなこと、できることがどのように社会に役立っていくのかをイメージすることが大切です。

私は、「まちづくり」には大きく分けてみっつの分野があると考えています。

ひとつ目は、建築物による街並みの造形そのものを手がけること、ふたつ目は土木などの大きなインフラの整備に関わること、そして最後は福祉的な職場やボランティアなども含めたコミュニティにおける人と人の関係性の構築です。

あなたの興味、関心はこのなかのどの分野にかかりそうでしょうか。また、これらから生み出される経済的効果を視野に入れて「まちづくり」に関与していくことも検討してみてください。

ボランティアなどを通じて多角的な視点を持つ

それでもうまくイメージがわかない、という方は、ありふれていますがボランティア活動を体験してみる、というのがおすすめです。

「まちづくり」の入り口として一番有効なのは、地域のボランティアをすることです。ゴミ拾いや介護、福祉、イベントへの参加などのインタラクションのなかで何が必要で、自分に何ができるかが見えてくるからです。いま「まちづくり」にかかわる仕事への転職を考えている人は、まずボランティア活動を体験してからでもじゅうぶん間に合います。

ボランティア活動に携わることで、

・近い未来にこの地域が必要なものが何かを考え、自分にできることと照らし合わせてつなげていけるようになる
・地域の方の苦労話や成功した達成感の話を聞くことで、それが自分に合っているかどうか、興味が引かれたかどうかの判断材料にできる


といった実戦での経験値を得られます。若いうちはボランティア活動をはじめ、いろいろな取り組みに参加し、ご自身の得意、不得意を見極め、自分が活き活きと活躍できるストライクゾーンを決めるのがいいでしょう。

ただ、入り口はひとつだけではないし答えもひとつではないので、まずは若いうちに様々な経験を積み重ね、消去法から残ったものを深堀して、必要ならばさらに学校に入って勉強したり、いろいろな人と関わったりすることもいいと思います。また、自分が必要だと思う資格を取ったりして少しずつ引き出しを増やしていくことが「まちづくり」のためのアイデアの基礎となることでしょう。

大切なのは「まちづくりをする」ということを目的にするあまり、視野が狭くなってはいけないということです。

沢山の経験が将来「まちづくり」をする時が来たときの布石になると思います。だから、長い目で計画的に近づいてゆくことが大切です。そこで培った引き出しを十分に活用することが「街づくり」のための大きなアイデアやヒントの源になります。

これから「まちづくり」に関わりたいと思っている人は、ぜひこれらを参考にしてみてください。

次回は「20代、30代が街にどう関わったら面白いのか」との質問に応えていきたいと思います。

(文:山崎 満広、Ocean child Loves Piano)

【覚えておこう】まちづくりキーワードワンポイント解説#1

官民連携

官民連携とは、これまでの行政が賄ってきた公共サービスを、官(行政機関)と民(民間企業)が協力して提供していく考え方です。民間企業の持つ様々な経験·ノウハウ·技術を活かして、限られた予算での業務の効率化やサービス向上などの狙いがあります。また、行政の課題に対する地域等との協働の取り組みなども含んだ意味があります。

山崎 満広(やまざき みつひろ)
Mitsuhiro Yamazaki

サステナブル都市計画家/横浜国立大学客員教授
MITSU YAMAZAKI LLC代表。民学産官を繋ぎ、国や文化の枠を超え、持続可能な都市づくりを目指す。1975年東京生まれ。茨城県水戸市育ち。

1995年に渡米、サザンミシシッピ大学にて学士と修士号を取得。専攻は国際関係学と地域経済開発。卒業後、建設会社やコンサルティング会社、経済開発機関等へ勤務し、2012年よりポートランド市開発局にてビジネス・産業開発マネージャー、国際事業開発オフィサー歴任。ポートランド都市圏企業の輸出開発支援と米国内外からポートランドへの投資・企業誘致を主に担当。2017年に独立、ポートランドでMITSU YAMAZAKI LLCを設立し、地域経済開発、国際事業戦略、イノベーション・コンサルタントとして日米を中心に多くのプロジェクトを手がける。

2019年に帰国。現在、つくば市顧問、神戸ウォータフロント開発機構アドバイザー、米国のデザインコンサルティング会社Ziba Designクリエイティブディレクター(スマートシティ分野)、大鏡建設顧問、ポートランド州立大学シニアフェロー、慶應大学SFC上席研究員、横浜国立大学 客員教授等を兼任。著書に第7回不動産協会賞を受賞した『ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる(学芸出版社)』『ポートランド・メイカーズ  クリエイティブコミュニティのつくり方(学芸出版社)』(共著)

山崎満広 Web Site : https://www.mitsuyamazaki.com/
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