都市計画家・山崎満広さんに訊く!「明るいまちづくり相談室」第2回:地方に若い人たちを呼び込むには、どうしたらいいですか?

都市計画家・山崎満広さんに訊く!「明るいまちづくり相談室」第2回:地方に若い人たちを呼び込むには、どうしたらいいですか?

2022.11.24

「世界一住みたい街」と呼ばれるアメリカ・オレゴン州のポートランド。2012年から、このポートランド市開発局にてビジネス・産業開発マネージャー、国際事業開発オフィサーを歴任した“サステナブル都市計画家”・山崎満広さんのコラムがスタート。近年、日本でも関心が高まっている「まちづくり」について、山崎さんがこれまでに受けたさまざまな質問に答えるかたちでお話しします。

世代間のギャップの埋め方

「まちづくり」において大事なことの一つ目は「人とのつながり」です。そのなかでも若者はこれからの「未来」を作っていく要になります。今「まちづくり」を実行する力を持つ人は、50代、60代の昭和世代、いわゆる「スポコン」というカルチャーのなかで育ってきました。しかし、今の若い世代はまったくそれと無関係に育っています

大きなギャップを持つ関係である双方が協力し合うには、まずその壁を越えなければなりません。そもそも、その各世代の人間が共存できる場所がないと出会うこともできませんね。

そのために必要なのは、「ヨコ割り」ではなく、「タテ割り」の環境が必要となります。その環境があるところはどこでしょうか。日本の教育は、高校生までは同年代割の横のつながりですが、大学に入るといろいろな年代も混在しはじめ、教授と生徒の関係などタテ割りに近づいてきます。また社会人になれば会社や役所などの中での人間関係となります。しかし、そこには上下関係が存在し組織の中の文化としてのお付き合いということになります。

ですが、若者が行きたがるのは組織の無い、強制力の無いところです。そういう場所を求めて集まってくるのです。世代間のギャップを埋めるにはこのような環境があってこその「世代の違う人のつながり」が見えてくるわけです。これが若者を呼び込む第一条件となることは間違いないでしょう。

オーセンティシティーの魅力

また、そこにオーセンティシティー(authenticity)があれば必ず若者はそれを発見し注目し集まってきます。オーセンティシティーとは「リアルなもの、真実性、信憑性」という意味になります。

逆に「こんなものがあるんだよ」と強制力の伴った信憑性がない上っ面なものは、直ぐに見抜かれ若者は嫌悪し遠ざかっていきます。要するにその街にある信憑性のある「リアルな対話」ができる雰囲気、活動、場所などを提供し、それが若者の心に刺さった時に若い人たちは自然とそこに足を向けてくれるのです。

さらに「呼び水」といえるものが一つでも構わないのであるといいですね。

例えば、現在自分が関わっている富山県の南砺市井波では600年以上続く瑞泉寺というお寺があり、今でも200人ほどの木彫師が存続していてその伝統を守っており、世界有数の木彫の町を形成しています。また、そこから広がった木彫、漆器、陶器などのアーティストやそれを支えている地元ビジネスマンが中心になり、街を盛り上げています。

それは「まちづくりしようよ!コンテンツ作ろうよ!」ということではなく、着々と何百年の歴史が刻まれてきた延長線上にあります。

つまり、それがしっかりと地元に根差したオーセンティシティー(本物)なのです。それがあれば、こちらから呼び込むことをしなくても勝手に興味を持った若者の方からやって来るのです。

人を呼び込むということ

先ほど自分が仕事をした富山県の街についてお話ししましたが、この頃は、その井波の街に自分が誰かを呼ぶのではなく、逆に呼ばれることが多くなりました。

つまり、呼び込まなくても若者たちの心を掴んだことが、逆の現象を起こしているということです。ある会社は従業員全員を井波に招待し、歴史や地元の取り組みといった街の良さを共に体験してチームとして学んでいるほどです。。しかし、もともとのオーセンティシティーだけの認知というわけではありません。そこに住む様々な職業の人たちが、点と点を繋ぐように、それに由来したものによる「商品開発」や「事業」を起こして線にしていきました。繋いだ結果、もともとあった伝統的文化を磨き、認知が広がり、それに魅かれて若者たちだけでなく様々な人が集まってきたということなのです。

その地にある「本物」こそが、人を呼ぶための、しいては「まちづくり」の拠点となるということを是非覚えておいてください。

次回は「日本とアメリカの公務員の仕事の違いについて」 の質問についてお答えしていきたいと思います。

(文:山崎 満広、Ocean child Loves Piano)

【覚えておこう】まちづくりキーワードワンポイント解説#2

グリーン・インフラ

グリーン・インフラ(Green Infrastructure)とは、雨庭、緑溝、雨水プランター、屋上緑化、透水性舗装など、自然環境の特性を生かしたインフラ整備を行うことで、防災・減災や地域振興など地域課題へ対処できることはもちろんのこと、良好な景観形成や生物多様性の保全、健康・レクリエーション等の文化提供などを行うこともできる設備の総称です。

山崎 満広(やまざき みつひろ)
Mitsuhiro Yamazaki

サステナブル都市計画家/横浜国立大学客員教授
MITSU YAMAZAKI LLC代表。民学産官を繋ぎ、国や文化の枠を超え、持続可能な都市づくりを目指す。1975年東京生まれ。茨城県水戸市育ち。

1995年に渡米、サザンミシシッピ大学にて学士と修士号を取得。専攻は国際関係学と地域経済開発。卒業後、建設会社やコンサルティング会社、経済開発機関等へ勤務し、2012年よりポートランド市開発局にてビジネス・産業開発マネージャー、国際事業開発オフィサー歴任。ポートランド都市圏企業の輸出開発支援と米国内外からポートランドへの投資・企業誘致を主に担当。2017年に独立、ポートランドでMITSU YAMAZAKI LLCを設立し、地域経済開発、国際事業戦略、イノベーション・コンサルタントとして日米を中心に多くのプロジェクトを手がける。

2019年に帰国。現在、つくば市顧問、神戸ウォータフロント開発機構アドバイザー、米国のデザインコンサルティング会社Ziba Designクリエイティブディレクター(スマートシティ分野)、大鏡建設顧問、ポートランド州立大学シニアフェロー、慶應大学SFC上席研究員、横浜国立大学 客員教授等を兼任。著書に第7回不動産協会賞を受賞した『ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる(学芸出版社)』『ポートランド・メイカーズ  クリエイティブコミュニティのつくり方(学芸出版社)』(共著)

山崎満広 Web Site : https://www.mitsuyamazaki.com/
Instagram: #mitsuyamazakillc
Twitter : @mitsuyamazaki
Facebook : https://www.facebook.com/mitsuyamazaki