彼がいて、立山がカッコいいから。移住理由はそれで十分

彼がいて、立山がカッコいいから。移住理由はそれで十分

ミサキさんと打ち合わせたのは、富山に35年ぶりの大雪が降った雪がまだ残る1月中旬。埼玉県出身のミサキさんも、これだけの大雪を見るのはもちろん初めて。富山の雪に少しテンションが上がりながらの取材になりました。

これは、2020年「サイコー」の日に入籍した、超前向きな2人の移住物語です。


打ち合わせたのは、富山駅南口近くのカフェ
▲ミサキさんと打ち合わせたのは、富山駅南口近くのカフェでした(撮影:田原朋子)

ミサキさんとA夫さんは、東京都内の大学で出会いました。
最初の1年間は、普通にゼミの大学院生の先輩、学部4年生の後輩として接していたのですが、彼女が大学院生としてゼミに深く関わるようになったある時、同じバンドが好きだったことがわかり、「センスいいなあ」と意気投合。初めての上野美術館デートを経て、その後付き合うようになりました。
そんな彼が大学院を卒業することになり、就職によって富山に移住すると決めたのは、付き合って1年ほど経った頃でした。


「辞めるまでは異動することのない」職場に就職が決定。


A夫さんの仕事は、詳しくは書くことはできませんが、異動のない公務員。辞めるまでは富山暮らしが確定です。ミサキさんは、彼の就職が富山に決まった時は「正直、えー!と思った」そうです。
それはきっと、誰でも思うでしょう。付き合って1年で、2人は遠距離恋愛になってしまったのですから。

大阪出身の彼が、東京の大学院を出たのに都内でも大阪でも就職せず、故郷というわけでもない未知の土地・富山に仕事を見つけるとは、思いもしなかったでしょう。
けれど、この頃までには2人とも、お互いに結婚を意識していたそうです。
ミサキさん「特にがっつりとしたプロポーズはなかったんですが。結婚はするんだろうと思っていました。それで、向こうが先に就職決まったし、まあ、しょうがないなあと」。


ここから、ミサキさんの人生も大きく動きだしました。


周囲は驚きましたが、本人はいたって平気です


晴れていれば、海の向こうに立山が見えるハズの景勝スポット、雨晴海岸
▲晴れていれば、海の向こうに立山が見えるハズの景勝スポット、雨晴海岸(写真提供:ミサキさん)

それにしても、彼を追いかけて移住、就職することについて、周囲はどんな反応だったんでしょう?


ミサキさん「実はうち、両親が国際結婚なんです。母は中国から日本に来ているので、母が何かいうことはないです(笑)。父も海外に単身赴任するような仕事だし、私が頑固なことを知っているので。
だから、どこで暮らすのか、という点では両親は何もいいませんでした。それに、彼と付き合って半年くらいの頃に、一度両親にも会っていたので、『ああ、彼ならば』って」


それはよかった!彼はとても素敵な人なんですね。
「うん、うん」とうなずく彼女の笑顔は、とても幸せそうです。


どこで暮らして、どこで仕事をするかは、2人にとって、まったく障害になりませんでした。
2019年春に無事大学院を卒業したミサキさん。半年間の新人研修を経て、A夫さんと富山で合流したのは、2019年10月のこと。
学生時代に付き合っていて、社会人になって会えないことが理由で別れてしまうのはよく聞くことだけど、1年半の遠距離恋愛を、2人は無事に乗り切りました。


ミサキさん「彼とは、毎日のように電話で話をしていましたよ。遠距離で困ることといえば、、、うちの間取りがちょっと特殊で、ワンフロアなんですよ。それで、彼との電話の内容が母や弟に筒抜けになるんです。電話した後、家族に『態度が全然違うね』とからわれたりするんです。これはちょっと困りました!恥ずかしかったです!」


いやいや、とーっても微笑ましいですよ。


すれ違いや涙は、ミサキさんとA夫さんには全く当てはまりません。

ミサキさん
「私も論文や就職活動でいそがしかったし、何より学生生活は楽しかったし。毎日寝る前とかに彼と電話していたので、寂しくはなかったです」


トライアングルの真ん中で


ミサキさんは埼玉出身で、A夫さんは大阪出身です。
ミサキさん「大阪と埼玉で、ちょうど間が富山かな、中間地点ですよね(笑)」

今は入籍して苗字が変わっているミサキさん。


結婚はいつだったのでしょう?


ミサキさん「私が富山に来て半年くらい経った2020年3月15日に入籍しました。コロナに関わらず、早まっても遅まってもいないです。『サイコーの日』です。お互いの実家との顔合わせは、2020年2月に、富山で行いました」。

新型コロナウイルスについては、富山県では、初感染の報道が2020年3月30日でした。東京都が最初の緊急事態宣言を発令したのは、2020年4月7日。2人の門出に、家族みんなが顔を合わせることができて、本当によかったですね。
ミサキさん「でも、結婚式はできていません。二人とも「結婚式したいね」、と漠然と思っていたんですけれど。コロナになってしまったし、お互い元の住所が大阪と埼玉なので、「一体どこでやろうか」となって。考えるのは、ちょっと保留にしています。ウエディング写真ですか? そういえば、撮ってないですね!」
 



就職活動は、大変でした

就職活動は、大変でした


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▲黒部ダムも、もちろん行きました!(写真提供:ミサキさん)

付き合っていた彼の富山県への就職&移住が決まって、翌年の2019年初秋、追いかけるように富山県への就職&移住を実行したミサキさん。


2019年卒だったミサキさんの就活した年を「2019年卒学生の就職活動の実態に関する調査(全国求人情報協会)」で振り返ってみると、大学生の勤務地の志向は都市部首都圏派が3割半ば。
地方派・こだわらない派は2割。実は、前年2018年の調査に比べて、地方派・こだわらない派が増加していました。


彼女自身はもちろん、地方派・こだわらない派。迷うことなく、「富山でできる仕事」を探し始めます。
ミサキさん「受けたのは、全部で5〜6社です。都内で面接ができるところもあったので、北陸新幹線に乗ったのは、3〜4往復くらいです。比較的少なく済んだと思います。富山には、遊びに行くというよりも、就活で面接のためにですよ!本当に大変でした!」

大学院生なので、論文執筆もしながらの就活です。しかも、遠方の企業への就職のため、準備は簡単ではなかったでしょう。
ミサキさん「それで、面接の時には、当たり前ですけれど、必ず『なんで富山なの?』って聞かれるんです。最初は正直に『彼氏がいるから』って答えていたんですが。そう答えた会社の面接は全部ダメでした(笑)」
「なので作戦を変えて、『立山がかっこいいから』ってずっと言っていました。いや、実際にかっこいいですよね。立山!作戦の末、内定をもらえました!」

内定は、7月だったそうです。
太陽のように明るく、物おじしないミサキさん。きっと東京でも富山でも、どこでも内定をもらえたに違いありません。
ミサキさんは、仕事を探すにあたって、最初は心理学を活かせる仕事を希望していました。最終的には、SE職になったために、大学院で学んだことを活かすチャンスはあまりないそうです。
けれど、SE職も初めてみたら楽しいので、まずはよかったな、とのこと。


働く場所、生きていく場所はどこでも問題ありません


大学院を卒業後、富山に就職・移住することについて、周囲の反応はいかがでしたか?


ミサキさん「大学院のゼミの友人は、私と彼が付き合っていることを知っていたし、彼が富山に先に来ていたのを知っていたから、そこまで驚くこともなかったです。でも、ゼミ以外の友人は確かに『なんで富山!』と。理由を言うと、もっと驚いていました。『すごいね』って言われましたけど。自分はそんなにすごいことなのかなあって、ピンとこないです」
「富山では『ようきたね』っていっぱい言われました。私わりと楽観的な人なので、苦しかったことはすぐ忘れちゃうんですよ。遠距離恋愛中、就活中、苦しかったこと…多分、なかった気がします」

ミサキさんの話を聞いていると、物事には「タイミング」って言うものがあるんだなあ、とつくづく思います。20代の身軽さと言うのもあるのかもしれないけれど、本人はとっても自然な決断をしたんだろうな、と思います。そして「ようきたね」とたくさん言ってもらえると、移住してきた身としては嬉しいものですよね。


仕事への影響はいかがですか?


ミサキさん「コロナの前と後で、働き方が変わったのは実感しています。私が勤めている会社は、普通は車で通勤するところなのですが、現在はテレワークです。SE職なので、業務はまったく問題はありません。もし、今から就活するのだったら、ひょっとしたら違う選択肢もあったのかな、と思うことはあります。テレワークが増えているので、働く場所がどこであっても問題はないですから」


確かに、この1年間ほど、住むことと働くことの距離を考えさせられた年はありませんでした。


ミサキさん「正直、私はどこででも生きていける自信があります。地球の裏側であっても今は24時間あれば行くことができるし、ネットでどこでも繋がれるし」
「チャンスがあったら国際的な会社に勤めたいなと思っていました。大学の時は、マレーシアの電気が通っていない村で3週間くらいボランティアをしていましたし。そういう冒険とかチャレンジが好きなんです」


「不確定志向だよね」って友人に言われます。未知なものに飛び込んじゃう。


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▲今度みたい!そしてすくいたい!ホタルイカの身投げ(写真提供:(公社)とやま観光推進機構)

ミサキさん「富山は、確かに今回の雪はすごかったですね。昨年も一昨年も、雪はこんなに降らなかったですしね。近所の人が、見るにみかねて雪かきスコップを貸してくれましたよ。あと、今度は長靴をちゃんと買います!それでも、富山は食べ物がおいしいし、立山連峰も見えるじゃないですか。住んでみたらいいところだと思います。立山は見れば見るほど本当にかっこいいです」


特にミサキさんのお気に入りはなんですか?


ミサキさん「ホタルイカは富山で初めて食べた時に、本当にびっくりしました。ホタルイカのしゃぶしゃぶ、おいしいですよね!埼玉ではボイルしたものしか売っていないんですよ。これも富山の魅力の一つ。
滑川のホタルイカミュージアムはめちゃめちゃおすすめです!そこの横にあるショップで売られているホタルイカの素干し、そのままガリガリ食べるんですが、おいしいです。」

富山湾の夏の風物詩、ホタルイカの身投げにも行ってみようと、バケツなど道具を用意しているそうです。残念ながら昨年はタイミングを逃してしまったそうで、今年はぜひチャレンジしたいとのこと。
移住するにあたって、何年も迷う人がいる中、ミサキさんは、たまたま彼が富山に就職を決めたことから、迷うことなく自分の富山移住を決断しました。それまで、富山に来たことは一度もなかったそうです。


ミサキさん「もともと、未知なものがあると飛び込んでしまうことが多いんです。異文化交流とかも好きですし。今は帰りたいとは思いません」

心理学用語に、「不確定志向」と呼ぶものがあるそうです。
ざっくり言うと、人は不確定なものに対して「避けて通るタイプ」と、「積極的に関わるタイプ」がある、と言う話。不確定志向がいわゆる積極的なタイプ、確定志向が不確定なものを避けるタイプ。
ミサキさん「私は積極的に突っ込んでいくタイプなんです。考えなしに。行動力はあると思います。とりあえずやってから考える。不確定志向だよねって友人に言われます。
でも彼がいるから、富山に来た。できるかどうかわからないけど行ってみる、行ってみたら、結構大丈夫だった。それでいいと思います。これから移住を考えている人にも、そう言いたいです」

ミサキさんとA夫さん、喧嘩もなく、仲良く楽しく富山ライフを楽しんでいます。
一緒に暮らすようになり、結婚して変わったことといえば、これから家族としてどうなっていくか、将来のことを考えるようになったこと。
といってもまだ20代の二人。富山ライフも社会人生活も結婚生活も始まったばかりです。
「これからのこと」をたくさん考えられるお2人のこれからが楽しみです。

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