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場づくり・コミュニティ

連載 | SUSTAINABLE DESIGN

坂爪邸 部屋の在り方から考える新しい都市住居の姿。

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 近代建築の巨匠、ルイス・カーンが「建築とは部屋をつくることによってもたらされる/街路は共同体の部屋」という言葉を残している。部屋とは、私たちを包む最小の空間単位である。
 今回紹介する『坂爪邸』は、若手建築家の「『ツバメアーキテクツ』+坂爪佑丞」の設計によるものだ。敷地は10坪と小さい。小さい敷地の道路際に、ポツンと小さい部屋を計画している。土間だから、仕事場にもお店にもギャラリーにもなるし、玄関より手前にあるので、街にも家にも属している不思議な感じの部屋だ。実際にこの部屋を借りて打ち合わせをさせてもらったことがあるが、配達の車や自転車、歩行者などの街の気配が窓から風と共に入ってきて、家に居るというより街に居るという感覚が強い。住宅を街路に自然に参加させていく、素晴らしいデザインである。
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 玄関から先に入っていくと、ダイニング、リビング、書斎、寝室、キッチン、階段室、それぞれの部屋は、どれも居心地がよい。光の濃淡と回り込み、天井高の高低によって、部屋それぞれに個性が与えられていて、しかもそれらの部屋は完全に区切られておらず、ずるずると大きな一つの部屋にもなっている。家族全体が一つの部屋に居るとも言えるし、たくさんの部屋があるので、家族はそれぞれが想い想いの場所を部屋として使っているとも言える。部屋という空間単位の可能性を新しい形で引き出しているためか、10坪、全体の高さ10メートルという数字以上の広がりや奥行きを感じさせる。部屋の在り方と小さな経済に着目した都市住宅は、地域社会を変えていく確かな一歩になっているようだ。
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『坂爪邸』
住所:東京都杉並区内
施工年: 2019年
藤原徹平
ふじわら・てっぺい●建築家。1975年横浜生まれ。2009年より『フジワラテッペイアーキテクツラボ一級建築士事務所』主宰。2010年より『一般社団法人ドリフターズインターナショナル』理事。建築、地域計画、まちづくり、展覧会空間デザイン、芸術祭空間デザインと領域を越境していくプロジェクトを多数手がける。2012年より横浜国立大学大学院Y-GSA准教授。受賞に横浜文化賞 文化・芸術奨励賞など。

©yurika kono

記事は雑誌ソトコト2021年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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