ストリート

連載 | SUSTAINABLEDESIGN | ストリート ガーデン シアター 植物と人間がつくる公共空間の新しい可能性。

 この夏、コロナ禍のオリンピック狂騒の裏側で、「パビリオン・トウキョウ2021」というユニークな都市改造の実験が行われた。仮設の極小建築を街の好きなところに9つほど建て、東京の未来を考えようという、アートの力を借りた“ゲリラ的都市実験”である。私が設計したパビリオン『ストリート ガーデン シアター』は、植物と人間のための“劇場”というコンセプトを掲げた。劇場といっても、この空間で演劇やダンスをやるわけではなく、植物を人間が愛で、庭が育ち、それが都市の広場として受け入れられていくプロセスを演目と考えた。スタッフ皆で毎日植物の水遣りに通った。300以上の植木鉢に朝夕、水を遣っていると、温度、湿気、色、匂い、五感で空間を深く感じられる。気がつくとそのうち、木の色はエイジングしていき、植物はぐんぐん育ち建築に有機的に絡まっていく。植物が猛暑を凌ぎやすいように、屋根を付けたり、コンポストで肥料をつくったり、日焼けする植物の位置を変えたり、人間の活動拠点を造ったりと、パビリオン自体も日々変化していった。

 このパビリオンで示したかったのは、「私たちの都市は、私たち自身が育てていくのだ」という意思表示である。これからの都市に必要となるのは、誰かに与えられたモニュメントとしての建築ではなく、露地庭のように一人一人の人間の関与によって育てていく有機的な公共空間である。その一つの可能性をこのパビリオンで提示できたのではないかと考えている。パビリオンは愛されつつも解体されたが、実は移築可能な構造システムをしている。いつかくるはずの次の展開が、非常に楽しみである。

『ストリート ガーデン シアター』
住所:東京都渋谷区神宮前5-53-1 旧「こどもの城」前
施工年:2021年
※「Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13」の、「パビリオン・トウキョウ2021」開催期間のみ展示。

藤原徹平
ふじわら・てっぺい●建築家。1975年横浜生まれ。2009年より『フジワラテッペイアーキテクツラボ一級建築士事務所』主宰。2010年より『一般社団法人ドリフターズインターナショナル』理事。建築、地域計画、まちづくり、展覧会空間デザイン、芸術祭空間デザインと領域を越境していくプロジェクトを多数手がける。2012年より横浜国立大学大学院Y-GSA准教授。受賞に横浜文化賞 文化・芸術奨励賞など。

©yurika kono

記事は雑誌ソトコト2021年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。