ソーシャルでエシカルな関心をもつ人を惹きつける、街の中に広がる学びの場「ソーシャル系大学」。山手線沿線を中心にJR東日本が仕掛ける「東京感動線」というプロジェクトのひとつ、『エキラボniri』の活動を報告する。まちの新しいカルチャーを発掘するコミュニティスペースとしてJR西日暮里駅に誕生したのは2019年だった。運営する『まちの教室 KLASS』の活動とともに駅構内にできた学びの場を見ていきたい。
子どもと大人とエキナカスペースの、 垣根のない関係性が生み出す学び体験。
『エキラボniri』は、「駅からはじまる、暮らしと学びのコミュニティ」をコンセプトに、地域に根ざした学びを提供する場として2019年にスタートした。JR東日本と一緒に立ち上げ前から関わってきた『まちの教室 KLASS』は、木賃アパートをリノベーションした複合施設「HAGISO」で知られる設計事務所『HAGI STUDIO』による暮らしと学びを近づけるプログラムで、オープンスペースを活用しながら、まちの人がふらりと立ち寄れる学びの会を重ねてきた。
文化交流拠点『エキラボniri』のスタートに際し、『HAGI STUDIO』の柳スルキさんは、まずはまちの人の話を聞こうと考えたという。KLASSへの参加者や知り合いに西日暮里のおもしろそうな人や場所を紹介してもらうと、思いがけないつながりができていった。そうして実現したのは、地域の方々が企画した金継ぎ教室から水引のアクセサリーづくり、ファーブル昆虫館による昆虫標本教室、社交ダンスの教室まで、西日暮里の知られざる学習資源をふんだんに活かした数々のプログラムである。
この日、エキラボniriで開催されていたのは、ミニ四駆の教室である。駅構内の、倉庫などの殺風景だったスペースに、『タミヤ』製のサーキットが組み立てられ、予想をはるかに超えたスピードでくるくるとミニ四駆が走り回る。7回目の開催ということもあり、オープンと同時に常連の親子が来場した。この日発売されたばかりの新モデルのミニ四駆を慣れた様子で組み立てると、さっそくコースで試走させていた。
この日、エキラボniriで開催されていたのは、ミニ四駆の教室である。駅構内の、倉庫などの殺風景だったスペースに、『タミヤ』製のサーキットが組み立てられ、予想をはるかに超えたスピードでくるくるとミニ四駆が走り回る。7回目の開催ということもあり、オープンと同時に常連の親子が来場した。この日発売されたばかりの新モデルのミニ四駆を慣れた様子で組み立てると、さっそくコースで試走させていた。
講師を務めるのは、国内でも有数のミニ四駆専門店『Mini4WD GEEKS三ノ輪橋駅前店』のスタッフたち。磯村友也さんは、ミニ四駆第二次ブームから中断しつつ8年ほどの経歴をもち、現在はこだわりのマシンで各地のレースに参加する本格派だ。前田峻宏さんも小学生の頃からのファンで、かれこれ20年のミニ四駆歴をもつ。小山陽吾さんは社会人になってからミニ四駆に出合い、子どもでも大人でも組み立てられて、その場で一緒にレースを楽しむことができるフラットさに惹かれたと話す。
この日もミニ四駆教室に参加した小学生から、マシンのバランスをとるにはどうしたらいいのかと相談を受けると、彼らは新モデルのボディを一緒に観察し、タイヤの構造を解説しながら重りを調整していた。物理学や流体力学のはじまりを、手にとって体験できるのが、ミニ四駆の世界なのだとわかる瞬間だった。
この日もミニ四駆教室に参加した小学生から、マシンのバランスをとるにはどうしたらいいのかと相談を受けると、彼らは新モデルのボディを一緒に観察し、タイヤの構造を解説しながら重りを調整していた。物理学や流体力学のはじまりを、手にとって体験できるのが、ミニ四駆の世界なのだとわかる瞬間だった。
電車が走行する振動や音にも負けず、急カーブを全速力で駆け抜けるマシンの様子は、駅を行き来する多くの人たちの視線を集めていた。JR西日暮里駅の駅員たちとも一緒にオンラインイベントを開催するなど、エキナカの小さなスペースがもつ可能性は広がっている。
さかぐち・みどり●明治学院大学社会学部教授。2000年、東京大学大学院博士課程単位取得退学。研究領域は生涯学習論。共著に『ポストリベラリズム』、共訳書にアーリー・ラッセル・ホックシールド『タイム・バインド』など。
写真・文●坂口 緑
写真・文●坂口 緑
記事は雑誌ソトコト2022年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。