妊活の前にやっておきたい「プレコンセプションケア」とは?

妊活の前にやっておきたい「プレコンセプションケア」とは?

2022.07.11

女性やそのパートナーの健康状態をチェックする「プレコンセプションケア」外来が最近、増えてきているってご存知ですか? コンセプションとは、英語で妊娠・受胎を意味し、分かりやすく日本語にすると「妊娠前のケア」となります。いまの体の状態を知り、将来の妊娠や体の変化に備えて、健康に関する正しい知識や習慣を身につけることが目的です。2015年に、日本初のプレコンセプションケアセンターを立ち上げた、国立成育医療研究センター周産期・母性診療センターの荒田尚子先生に、プレコンセプションケアの具体的な内容と必要性について伺いました。

将来に備えて、健康状態をチェック

日本は、医療の発達によって、出産で命を落とす女性や新生児の数は非常に少なくなりました。しかし、その数はゼロではなく、先天異常を抱えて生まれてくる子もいます。

「胎児・新生児の死亡や先天異常の中には、妊娠前から知識を持っていれば防げるかもしれないものが少なからずあります。代表的なのが、高血糖、風疹や梅毒などの感染症、葉酸欠乏症や肥満などです。日本では、高齢出産や不妊に悩む人が多いこともあり、妊娠前の健康管理が重要になってきています」(荒田尚子先生・以下同)

プレコンセプションケアとは2006年に米国疾病対策センター(CDC)がその必要性を提唱し始めた概念。2012年には、世界保健機関(WHO)も推奨しています。

「プレコンセプションケアは、単に妊娠するためだけのケアではありません。多くの日本人は、思春期から妊娠するまでの間、将来に備えて体やこころのケアが必要であることを知りません。特に、若いうちは元気で多忙が当たり前のように考えられ、自分の体に興味を向ける時間がない人が大半でしょう。

当センターでは、現在の健康状態を知る検診の他、日々の生活や食事、健康について、医師と管理栄養士によるカウンセリングを行っています。将来子供が欲しい人だけでなく、すべての女性とそのパートナーに、将来、今よりも元気で健康に過ごすためにできることを考えてほしいと思っています」

妊娠合併症や感染症のリスクを知って予防を

国立成育医療研究センターでは、プレコンチェックと称し、検診とカウンセリングを行っています。ベーシックプランでは、体格指数(BMI)や体脂肪量などを見る身体測定、尿検査、血圧測定の他、血液検査を実施。血液検査では、葉酸値や甲状腺機能、梅毒、風疹、はしかなど、通常の健康診断にはない項目も調べます。

「甲状腺機能をみるのは、甲状腺ホルモンが低下すると、排卵がうまくいかなくなったり、流産のリスクが上がるため。甲状腺の病気は若い女性に多いのですが、疲労感やむくみなどがあっても体質だと思い、本人に病気だという自覚がないこともあります。葉酸値を調べるのは、葉酸が欠乏していると赤ちゃんが神経管閉塞障害になるリスクが高まるからです」

神経管閉塞障害は、脳や脊髄のもとになる神経管が未完成のまま生まれてしまう先天異常で、脊髄が背中の皮膚の外に飛び出し排尿障害などを生じる二分脊椎症や無脳症などがあります。神経管の発達は、妊娠が判明する6週目ぐらいまでに出来上がるので、妊娠に気付いてから葉酸を摂取しても神経管閉塞障害のリスクを減らすことはできません。

「検査を行うことでいまの体の状態を知り、まずは健康への意識を持つきっかけにしていただけたらと思います。そうすることで、リスクを減らすことのできる先天異常をできるかぎり防いでほしいですね」

その他、高血糖や風疹などの感染症、喫煙、飲酒なども生まれてくる子の先天異常のリスクを高めます。特に、糖尿病になっていることに気づかないで高血糖のまま妊娠すると、先天異常をもった赤ちゃんが生まれる可能性は、4人に1人と高リスク。

「糖尿病かどうかは、不妊外来でもチェックされないことが多く、気づかれないことがあります。家族に糖尿病の人がいる方や肥満の方などは、すでに糖尿病やその予備軍になっている可能性がありますので、チェックしておいた方がいいでしょう」

プレコンチェックには「カップルプラン」もあり、将来の妊娠に備えてパートナーと一緒に検査やカウンセリングを受けることもできます。女性の検査項目は、ベーシックプランと同じ。男性は、肥満度や血圧の他、感染症のチェックを行います。プレコンチェックはいずれもランチ代込みで、ベーシックプラン3万8,500円(税込)、カップルプラン6万6,000円(税込)。卵巣機能をみる検査や腹部超音波検査、クラミジア感染検査、子宮頸がん検診、骨密度検査などのオプションをつけることもできます。

実際にプレコンチェックを受けている人はどんな方がいるのか聞いてみると、「これから妊娠を望む女性やそのパートナー」のほか、「パートナーと離れて長期の海外留学を予定しているが、妊娠・出産に適した時期と被るので悩んでいるというカップル」、「将来、子供が欲しいけれど、漠然と不安に思っている女性」「成人した娘の健康状態を確認したいと親子で訪れる人」など、さまざまな方がいるそうです。

オンラインのカウンセリングで気軽に相談も

いつか妊娠をと考えるすべての女性のために、オンラインでのカウンセリングも受け付けています(要予約、保険適用外)。

「医師によるカウンセリングでは、生活習慣やこれまでにかかった病気などを伺いながら、生活の中で実践していただきたいことを中心にお話をいたします。管理栄養士からは食事を中心に、今後のライフスタイルをより良いものにできるようアドバイスをしています」

また、すでに出産経験のある人や、病気療養中の方、子供の頃に病気の治療を受けた方からの妊娠・出産に関する相談にも力を入れており、「以前の妊娠で、高血圧症候群と言われたけれど次の妊娠は大丈夫?」「持病があるが妊娠・出産にリスクは?」「生理の間隔がバラバラですが、どうしたらいいの?」など、さまざまな相談に対してアドバイスや指導を行っているそうです。妊娠や出産、生理のことは、気になっていてもわざわざ医療機関に足を運びにくいという人も多いと思いますが、オンラインならば身構えずに相談できそうです。

ライフプランを「見える化」してみよう

「プレコンセプションケアの目的は、妊娠・出産だけではありません。若い世代のみなさんが自ら健康管理できるようになることは、将来、質の高い生活を送ることにもつながります。まずは、1年後の自分は何をしているのか、5年後、10年後は? と、この先のライフプランニングを立ててみてください。理想の人生を考えることは、妊娠や出産について考えてみるきっかけにもなります」

プレコンセプションケアは、病気や妊娠合併症の予防、健康状態の確認などが目的のため、自費診療が基本です。その項目は、医療機関によって異なりますが、将来の自分と家族の健康を守るためにも知っておきたい内容です。国立成育医療研究センターのホームページには、プレコンセプションケアのポイントを分かりやすくまとめた「プレコンノート」も用意されているので、チェックしてみましょう。

※プレコンノートはこちらから見ることができます:
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/preconnote/index.html

荒田尚子(あらた・なおこ)先生 
⚫︎国立成育医療研究センター、周産期・母性診療センター 母性内科 診療部長。広島大学医学部卒業。慶応義塾大学医学部内科研修医を経て内科学・腎臓内分泌代謝科助手。横浜市立市民病院内科(糖尿病内科)医長、米国マウントサイナイ医科大学内分泌糖尿病骨疾患科留学を経て、2004年より国立成育医療研究センターに勤務。2010年より現職。次世代を担う健全な子どもの出生と成長も考慮した“女性医療”を内科の立場から提供している。

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寳田真由美(たからだ・まゆみ)●編集者、ライター。大学卒業後、出版社や編集プロダクションに勤務。情報誌や女性誌、旅行誌などの編集を経て、2000年よりフリーランスで活動。現在は、主に女性のライフスタイルや健康、医療記事の編集・執筆などを行う。いま一番はまっているのは、愛犬と旅するためにはじめたキャンプ。