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場づくり・コミュニティ

ニュースでは分からないウクライナの日常。

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ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻が始まってから約1年が経つ。被害の大きさや死者数の状況を報じるニュースが当たり前になった日々のなかで、偶然手にしたのが児玉浩宜の写真集『Notes in Ukraine』だ。元・NHKの報道カメラマンだった作者は2022年3月、5月、9月の3度、それぞれ1か月程度ウクライナに滞在し、取材中に撮影した写真と文章をまとめて12月に発表した。

取材ノートをイメージするような装丁の本の中には、キーウ、チェルノフツィ、リビウなど写真家がさまざまな街を移動する中で出会った人と会話をし、撮影したポートレイトと街の様子が写し出されている。スケートボードで遊ぶ少年や、釣りを楽しむ親子、パーティで踊る若者たちなどの写真は、シンプルな背景で撮られていることもあって、一見、戦時下の街で暮らしているようには思えない。どの写真も魅力的だ。しかし隣のページに目を移すと、銃弾の跡がある壁や空襲で焼け落ちたアパート、至る所にある防衛のために積まれた土嚢の山、砲撃を受けた教会などが淡々と写し出されている。ここは間違いなく戦時下の街なのだ。

間に挟みこまれた取材時の日記と巻末にまとめられた写真一枚一枚にまつわる短いキャプションを読むと、 出会った時の様子がわかり、人物像がより鮮明になってくる。「空襲警報が鳴るなか、公園で友人を待つ少女」「大学でプログラミング開発を学ぶ学生」「ドニエプル川の中洲にある広場で出会ったステファンとウリャ。二人は有名なメイクアップアーティストになりたいと夢を語ってくれた」……。

いままで漠然と捉えていたウクライナ情勢のニュース。写真集を見てから写真に写った人たちの顔を自然と思い出すようになった。無事だろうか、何をしているのだろうかと思いが巡る。

目次

『Notes in Ukraine』

 (166898)

児玉浩宜著、イースト・プレス刊
text by Nahoko Ando

記事は雑誌ソトコト2023年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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