ハンディキャップを強さに変えて、障がい者のバリアを取り除く。

連載 | NEXTSTAGE まちのプロデューサーズ2.0 | 34 ハンディキャップを強さに変えて、障がい者のバリアを取り除く。

自分自身が当事者だからこそわかる、不動産に求めるものとは。障がい者の暮らしと社会進出をサポートする活動を行っています!


お話を聞いた人


大塚訓平 『オーリアル』代表取締役・『アクセシブル・ラボ』代表


横尾 今回お話を伺うのは、栃木県を中心に不動産業とバリアフリー住宅等のコンサルティング業を営むかたわら、障がい者の外出環境整備、社会進出を促進するNPOの代表も務める大塚訓平さんです。ハード・ソフトの両面から障がい者のバリアを取り除こうと奮闘されています。そもそも、どのようなきっかけでこうした活動を始めたのでしょうか。


大塚 28歳の時に事故に遭い、車椅子生活になったことが直接のきっかけです。当時は幼い頃からの夢を叶え、不動産会社を経営していたのですが、物件を見に行くことすらままならない中で会社をこの先どうするべきか、また自分には何ができるのかと考えるようになりました。入院先のリハビリ施設には私と同じような境遇の人が多くいたので、その人たちが抱えている不安・不便なことについて、聞き回ることにしました。


横尾 具体的には、どんなことがわかったのでしょうか。


大塚 障がい者のさまざまな課題が見つかり、50案くらい企画が書ける状態だったのですが、特に気になったのは、「帰れる家がない」という声でした。アパートの2階に住んでいた人はもちろんのこと、一軒家だとしてもリフォームが必要になってしまいます。入院中のある方が、僕に家のリフォームの設計図や見積書を見せてくれたのですが、その高額さと不必要な設備の多さに驚きました。


横尾 当事者のニーズと合致していなかったんですね。


大塚 あまりにも病院みたいで、僕は決して住みたいとは思いませんでした。本来、家を建てる・買うことは一世一代のことですし、格好よさや安らぎを求めていると思うんですよ。きっとその家を担当した設計士さんは、安全面を考慮してくださっていたとは思うんですけど、それを考えすぎて、いらないところに手摺りがあったり、そのためにデザイン性が犠牲にされてしまっていたり。既存の型にとらわれず、機能とデザインの両方を追究したいと思い、バリアフリー住宅のコンサルを始めることにしました。そして手はじめに、自宅をモデルルームにするという試みを始めたんです。すると、多くの方が見学に来てくださり、住宅、レストラン、公共施設などさまざまな案件の相談をいただくようになりました。また、障がい者の外出を支援するため、さまざまな施設の画像や数値化された情報をネット上で公開する「アクセシブル・ナビ」の運営のほかに、最近では、ホテルのコンサルテーションなどにも力を入れています。


横尾 これから成し遂げたいことなどはありますか?


大塚「ハードのバリアをハートで解消する」という精神をもつ人をたくさん増やしたいと思っています。コンサルタントをやっていると、施設側から、スロープをつくったほうがいいですかと相談を受けます。もちろん、それはありがたいのですが、段差があったとしても、店員さんが少しアシストしてくれたら、解決できちゃうんですよね。莫大なお金をかけなくても、バリアは人のあたたかさで乗り越えることができます。東京オリンピック・パラリンピックが控える中で、ハートでの「おもてなし」をみんなが実践する社会をつくるということが、日本が残せるレガシーの一つとなるのではないでしょうか。


取材後記


 入院中、大塚さんの父親は、何度も「命があれば、あとはかすり傷だよ」と声をかけてくれたそうです。それが、現状を受け入れながら自分のできることを懸命に探そうという気持ちにさせてくれたと言います。運命を宿命に変えてさまざまなことに前向きに取り組む大塚さんの原動力は、ここにあるのだと思いました。一点、お話の中で気になったのは、コンサルティングの依頼はたくさんあるが、自治体からはよく「無償で」と言われるということ。そこにきちんとした予算をつければ、各施設を当事者がどんどんチェックし、改善の提案をするというよい流れが加速されます。そしてそれが、大塚さんが目指す「障がい者を納税者へ」に変えることにもつながると思いました。(横尾)

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