4月に石徹白に移住して、あっという間に7月が過ぎた。夏がやって来たと思ったら、急ぎ足で私の前を駆け抜けていく。夏野菜をいくつか植えた畑も日々の変化が目まぐるしい。今年は1年目ということもあり、少しだけでも収穫できれば御の字という気持ちで草刈りをして畝を立てた。それでも汗だくになりながら自分の手を動かして作った畑には愛着が沸くものだ。そんな大切に育てた畑にも動物たちが夜な夜なやってくる。猪だろうか。まるで隕石が私の畑を目掛けてたくさん落ちてきかたかのような有様。ここで暮らすための洗礼を受けたようだった。動物との共存について考え、しみじみ胸にこたえた出来事となる。来ないで!来ないで!と叫んだところで私の声はどうやっても届かない。

石徹白は標高700メートルにある集落で、朝晩は涼しく昼と夜との寒暖差が激しい。昼間の暑さが嘘のように夜はとても過ごしやすく助かっている。その寒暖差のおかげでとうもろこしの糖度が上がり、とても甘いとうもろこしができるのだそう。7月下旬から8月中旬までの期間、集落内ではあちこちにのぼりが立ち、その日の朝に収穫したとうもろこしが並ぶ。毎年とうもろこしを目当てに峠を越えてくる人も多いんだとか。

石徹白のとうもろこしの魅力は味だけではないと私は思っている。集落内に点在しているとうもろこし畑、そのどれを見ても言葉では表せない美しさに満ちている。真っ直ぐ伸びた主軸が等間隔に一列に並び、背丈は揃い乱れがない。その列がずらりとまた等間隔に並ぶ。とにかく佇まいが凛としているのだ。足を留めて畑を眺めていると雑念がすっと消えて訳もわからず見入ってしまう。美味しいものを探求していくと、おのずと美しい文化を作ることにつながっていくのだろうか。

石徹白のとうもろこしは甘くて美味しい。それは単に環境要因だけではなく、作り手が美しいものを生み出すための心の有り様が表れている。またひとつ石徹白らしさを見つけた夏になった。