橋本淳司さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊
そういった活動の中で、特に子どもに対しての水教育の基本が詰まっていると考える本が、『センス・オブ・ワンダー』です。これは化学物質公害の恐ろしさを告発した名著『沈黙の春』の著者の遺作で、海洋学者である彼女が幼い甥と自然の中で過ごした際の発見が描かれています。彼女は甥っ子に花や虫の名前をわざわざ教えるようなことはしません。しかし甥っ子は「驚き=センス・オブ・ワンダー」をとおし、自然の循環や生物の生態を覚えていきます。まず体験させ、好奇心を持ってもらい、そのうえで得られる学びのほうがはるかに深い理解を与えることができる。このことは探究型の授業を行うときに常に念頭に置いています。また「驚き」を突き詰めていくと、「人間も自然の一部でしかない」というSDGs全体を包括する考え方にもつながります。大人にとっても大切なことが書かれた本です。
『老子』は理想の生き方として「上善如水」、つまり水のように生きることを勧めています。水は大地に恵みを与え、ありとあらゆる生命を育みます。そして柔軟で、岩にぶつかれば方向を変え、器に応じて形を変えます。しかし、重くて堅いものを動かす力を持っています。ほかにもいい国の条件は「小国寡民」、小さな国、少ない国民でローカルな活動を大事にする国とも言います。SDGsが最終目標とする「誰一人取り残さない」が実現するとしたら、最終的にはこういった境地になると思うのです。
『水の惑星』は美しい写真とともに水の不思議な特徴を教えてくれる本。例えば、個体である氷が液体の水より軽いから湖は表面から凍り、水中の生物が生きていけます。また、人の体温が一定なのも水が温まりにくくて冷めにくいから。そんな特徴があるからこそ、人は地球で生きていられるのだと理解できます。
健全な水循環を得るためには、水だけでなく土や木の力が必要です。そのことを書いたのが、造園家の著者による『土中環境』です。さらに環境に負担なく浄水する方法を説いているのが『おいしい水のつくり方─2』。微生物の力を使う「緩速濾過法」の活用法を説明しています。今後、人口減少が進み水道設備にお金をかけられなくなる中で、代替案として挙げられるでしょう。