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サスティナビリティ

連載 | リトルプレスから始まる旅

ケンタッキーのぼうけん4月の神殿

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目次

手描きの味わいにはまるゲームブック。

 今回紹介するリトルプレスは『ケンタッキーのぼうけん4月の神殿』。

 兵庫県加古川市に住むヤマモトケイスケさんが、絵や文字はもとより、ストーリー、レイアウトもすべて手作業で作った、ゆるいイメージを与えてくれるリトルプレス。

 一見、コミックのように見えるが「ゲームブック」の形態で作られている。「ゲームブック」とは、物語の節目節目に表れる選択肢(主人公の行動など)を選ぶことによって、ストーリーの展開が変化し、結末も選び方によって変わるように作られている。

 いくつもの物語を含んだ本としても楽しめ、ゲームとして遊ぶことを目的としている場合も多い。

 別名「アドベンチャーブック」とも呼ばれ、ゲームの進行と共に状況が説明された分岐点に遭遇し、選択肢が提示される。読者は選択肢を選び、番号を振られた指定のシーン(ページ)へと進む。選択次第で状況が悪化したり、好転したりもする。

 不運な選択肢を選び続けると、予想もしない展開が続いたうえ、突然のゲームオーバーや、不本意なバッドエンドを迎えることもある。

 物語の途中や、最初からやり直して別の選択肢を選ぶなど、試行錯誤を繰り返すことによって、やっとグッドエンドを迎えることができる仕組みになっていることが多い。

 『ケンタッキーのぼうけん4』は、18歳の主人公・センゴクケンタ(ケンタッキー)が、アルバイトで働いている喫茶店のマスターから、自分の代わりに南米の島の小国・リタ島国へコーヒー豆を買い付けに行くところから始まる。船乗りたちから、幻の月の神殿のことを聞き、島のなかを流れる川を北上することから、冒険が始まる。白夜軍と月軍の戦闘に巻き込まれ、選択肢によってバッドエンドを迎える。

 384コマをたどって、ページを前に後ろに繰りながらストーリーを追っていくと、中学生時分、友達と回覧した手描きの漫画をおもしろがって読んでいた頃を思い出すのか、手書きの文字とゆるいイラストに親近感を持つようになる。

 最後までたどり着くと、今まで飲んだことのない、リタ豆のすごい香りと独特の風味がするおいしいコーヒーにありつける。

 コンピューターソフトを使わず、マジックで罫線を引き、ボールペンで文字とイラストを描く。ストーリーのなかで選択肢を考え、作品を完成させる。

 その完成度は、流通する出版物とは比べ物にならないが、つい引き込まれてしまう魅力を持っている。

 個人で作るリトルプレスの魅力が『ケンタッキーのぼうけん4』には、詰まっているように思えた。

『ケンタッキーのぼうけん4月の神殿』発行者から一言

 『ケンタッキーのぼうけん4月の神殿』は前作『ケンタッキーのぼうけん その他短編』(ケンタッキー1〜3収録)の続編になります。1〜3は短編となっておりますが、4は初の長編となっており、このケンタッキーシリーズは次作の5まで続きます。

今月のおすすめリトルプレス

『ケンタッキーのぼうけん4 月の神殿』

『ケンタッキーのぼうけん4月の神殿』

 すべて手描きで作った「ゲームブック」のリトルプレス。

発行者:ヤマモトケイスケ
発行元:自転プレス
2017年7月発行、148×210ミリ(94ページ)、600円

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