水産高校として長い歴史がある福井県立若狭高等学校の海洋科学科で教鞭をとり、アマモの定植活動や海のプラスチックごみ回収活動など環境教育に取り組む小坂康之さん。物事を深く探究する楽しさを生徒や子どもに伝えるために読んでほしいと薦める本です。
小坂康之さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊
見取りは、環境教育や環境活動においても重要です。僕も生徒と海にアマモを植えたり、海のゴミを拾ったりしていますが、そもそも地球環境を汚したのは大人です。その大人の考えを生徒に押し付けたり、こう考えてほしいという方向に誘導したりするのではなく、生徒は何をどう捉え、考えているのか、大人が見取り、受け止める姿勢が大事なのです。上から目線や押しつけでは、環境問題に関するリアルな解決方法やおもしろい発想は生まれないでしょう。この本は「まちづくり」がテーマですが、それは「環境づくり」にも通じるものだと思います。
『学校を変える力』には、アメリカ・ニューヨーク州のハーレムにある荒れた公立中学校を改革し、地域や州全体の教育も変えていった著者のデボラ・マイヤーさんの活動が記録されています。マイヤーさんが大切にしているのは、民主主義教育。弱者や少数意見を大事にしながら、AorBの多数決ではなく、AとBを融合させてCを生み出す、という民主主義的な取り組みの記録がアーカイブされています。
また、「教育に大事なのは見取りだ」と言いましたが、主体性を導き出すために問いを立てることも重要です。僕も、環境や水産などの専門的な知識から問いを立て、生徒を深い学びにいざなうように努めています。その問いに対する答えを考えるなかで、環境のことをより深く認識したり、現状を把握したりしていきます。マイヤーさんもとてもいい問いを立てるので、生徒たちは探究するおもしろさや学びの本質に気づき、学校や地域で自ら課題を見つけ、解決していったのです。