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サスティナビリティ

連載 | 毎日がサスティナブル!? —アムステルダムとニッポンのSDGs—

子どもはつくるもの?

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パートナーと子どもを持ちたいと考えた場合に、オランダにはさまざまなアプローチがあります。シングルであっても、同性同士のカップルであってもそれは同様。もちろん、子どもを産まないという選択肢も。日本の社会との違いから、子どもを持つことについて考えます。

1人の子どもに最大4人の親!?

 パートナーとの子どもについて、オランダはだいぶ進んだ考え方が認められつつあると聞きました。

桑原果林(以下) 体外受精、里親なんかはかなり一般的になりつつありますけど、今はさらにいろいろありますね。

桑原真理子(以下真理子) 男性同士、女性同士という2つカップルが“共有”して子どもをつくれるよう、法整備が進んでいるようです。

編集部・竹中(以下竹中) え、どういうことですか?

真理子 彼らのうち男女一人ずつの、卵子と精子を用いて子どもをつくるというもの。そういう動きがあって、今法整備に向かっています。最大4人が正式な親になれるようなものだったと思います。血縁やDNAなどの関係なく、正式な親子関係として認められようとしています。精子を提供していない父親も、卵子を提供していない母親も、4人が同等の権利を認められる、親権を持てる法整備を今進めています。

 進みすぎていて……。すごいとしか言えないです……。

子どもを持つことに対する多様な方法がある。

真理子 精子バンクも普通に使われていますね。オランダ人のいとこは、2人の子どもを持つシングルマザーで、両方ともデンマークの精子バンクから提供してもらった精子でできました。

果林 私の知っている人で、最初からシングルマザーになりたいって決めていて、そういう人向けのプラットフォームで協力してくれる男性を募集して、面談して気の合った既婚男性の協力を得て子どもをつくった人もいます。あと息子の友達の親は、最初からパートナーでなく、子どもが欲しい同士で、つまり夫婦でもカップルでもない同士がその子をそれぞれの家で共同養育しています。

真理子 日本でもシングルマザーへの補償は手厚いと思いますが、オランダも金銭面で優遇されていますし、避妊治療なんかもこちらでは保険がききます。不妊治療を受けるカップルやレズビアンカップルが体外受精を病院で受ける際にも保険が適用されるので、費用的な負担はそれほど多くありません。
竹中さんは、子ども欲しいですか? こっちだと、シングル女性が受精卵を冷凍するのも流行っているらしいですよ。

竹中 それ! それを、先日20代前半の女性に言われました。あとは、欲しいならそもそも自分の身体に子どもはできるのかどうか、検査を受けたほうがいいとも。その子にとっての結婚は、子どもを産み、育てていくためのものでもある。でも、オランダでは子どもを欲しいという想いに対してさまざまアプローチがあって、考えさせられますね。

真理子 子どもをつくる選択肢がオランダにはたくさんありますし、日本でも選択すればできるんでしょうけど、オランダは社会全体でそれを認めているのと、それを可能にする社会システムがあるという点が違うと感じます。

出産は結婚してから、という日本。

竹中 今だに日本は、子どもは結婚してから、という感覚が根強い感じがします。芸能人の結婚のニュースで、「なお妊娠はしていません」って一文がよくあるって、なんだかザワザワします。

果林 それって、日本でも妊娠が結婚の主な理由の一つになっているってことを示しているのかなって思います。でもちゃんと順序立てて、まずは結婚してから子ども、というのがいまだに美徳とされていますよね。

 「できちゃった結婚」って、言葉あります。だいぶ印象は変わってきましたが、ちょっと蔑む感じも否めないような……(苦笑)。真理子さんは、子どもは欲しいですか?

真理子 私は別に欲しくないですし、欲しいと思ったこともないですけど……。でも、出産という点においてはタイムリミットがあるから、機能をもって生まれたからにはそれを使わないのはどうなんだって思ったことはありました。
前の彼と別れるときに、この人と子どもをつくらなかったらもうないんだろうなって、それでもオッケーかなって考えて答えを出したので……。でも、子どもをつくるって、頭で考えることじゃないし、子どもがいてもいなくても、私のハッピー度には変わらない。だけど、今後、「この人の子どもが欲しい」って人が現れたらそれはそれで幸せなことだし、それで子どもができたらそれはそれ。
人生の醍醐味って、自分が想像していなかったことが起こること。そういう意味でも、みんなもっと楽しめばいいのになって思います。

 当たり前ですけど、子どもを持つことが人生のすべてではないですもんね…。

子どもを持つことも個人の選択。

真理子 本当に子どもが欲しいって思ったら、私も精子バンクに行くかもしれません。
年上の友人で、彼女は「若くして結婚して、あまり考えずに子どもをつくったけど、今考えたらいなくても良かったかな」って言う人もいるし、もう一人の友人も、「子どもがいなくても寂しいって思ってことはないし、ハッピーな人生だったよ」って。そういういろんな価値観があることも知って欲しいですね。
同時に、「子どもができてこそ一人前」と日本の人に言われることもあります。その人にとってはそれが真実でしょうけど、それは誰にでも当てはまることではないと思うんです。私にとって一人前になることは、子どもをもつことに限らず、精神的にも金銭的にも自立したうえで社会に貢献することです。

竹中 結婚しているけど子どもがいない人に対して「なんで子どもをつくらないの?」っていう質問をするのも同じですよね。そこにはそもそも自分の考えがあり、二人の価値観がある。

真理子 価値観の押し売りみたいな感じですね……。

果林 個を尊重する、という教育って本当に必要だと思います。

竹中 疑問を持って、そこから対話が続くならいいのですが、「自分の価値観がすべて正しい! 普通!」みたいな人と話をすると、悲しくなります。

真理子 そういう意味でも多様な社会って大事だと感じます。こっちのいいところは、同性のカップルもたくさんいて、彼らは子どもを持つという選択をする場合、自然にできないから、カップルの関係性も含めて、自分たちの価値観で築き上げてきた。さっき話したように、同性カップル同士で子どもを持ったり、里親になることだったり、自分たちで声を上げ、新しい価値観を生み出しているように思います。

 そういう事例や情報をもっと日本人は知るべきだと思いました。

真理子 カップルの関係で言えば、世界には、ほかにもいろいろなカタチがあります。オープンリレーションシップとかポリアモリーってご存知ですか?

 オープンリレーションシップは、聞いたことがあります。メインのパートナーが存在しつつも、そのほかにも恋人がいたり。ポリアモリーは知らないです。

果林 直訳すると「複数の愛」。

真理子 複数の、そしてその全員と真剣交際している状態です。日本ではないですか?

竹中 そうですね。ニュースになってしまうかもしれません……。

真理子 デートアプリとかでも属性欄にそう書いている人も多いですよ。

 いろんな価値観があるんですね。同意できなくても、認めないといけない。日々勉強です。

果林 そういうあり方を認める認めない、ということではなく、自分とか従来とは異なる価値観をもつ人がいることを認識する、ということですね。

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桑原果林 くわはら・かりん
コーディネーター、翻訳者、通訳者。日本で日蘭バイリンガルとして育ち、2010年渡蘭。レインワードアカデミー美術大学文化遺産学科でミュゼオロジーを学び、在学中に姉・真理子と共に通訳・翻訳事務所So Communicationsをアムステルダムにて設立。メディア・教育・介護・農業・デザイン&アートなど多岐にわたる翻訳・通訳・コーディネート業務を行い、日本とオランダの交流のサポートにつとめる。
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桑原真理子 くわはら・まりこ
アーティスト。東京都生まれ。 父が日本人、母がオランダ人。19歳の時にオランダへ渡る。2011年、ヘリット・リートフェルト・アカデミー(アムステルダム)、グラフィックデザイン科卒業。過疎地域で出会った人々との対話を元に、ドキュメンタリー形式の出版物、映像作品を制作している。
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乾祐綺 いぬい・ゆき
編集者、フォトジャーナリスト。写真家でもあった祖父の影響から、幼少期より写真を始める。海、環境、暮らしなどを主なテーマに、日本各地はもちろん、海外への取材を続ける。未来をつくるSDGsマガジン『ソトコト』、ANA機内誌『翼の王国』誌上などで、写真と記事を掲載。日本と海外、それぞれのソーシャルグッドな文化や活動を双方向で伝えることをテーマに活動する株式会社ニッポン工房代表。

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