弓削今日子さんが選ぶ、道の駅をつくる本5冊
そんな神山町の食について学べるのが『神山の味』です。昭和50年代に、神山町の主婦たちの『生活改善グループ』がまとめたレシピ集を復刻したもので、私たちの「バイブル」だと思っています。郷土料理のレシピは、鮎を川で釣ってくる、あるいは畑の大根を切って干す、そんなところから書いてあり、風土と食のつながりがとてもよくわかります。地域の方々がつないできた「神山の味」を、販売を通して、町内外の人に伝えていくことは、直売所の役割だと思っています。
「この商品のつくり手を知ってほしい」。2つの店での経験で、私がいちばん思うことです。この考え方に近いと感じたのが『おいしいものには理由がある』です。著者の樋口直哉さんが、さまざまな食材や調味料の背後にあるストーリーを紹介しているのですが、つくり手としっかりと関係を築き、取材し、まとめています。つくり手に寄り添っていることがきちんと伝わる内容で、私が商品を通して伝えたいことと同じだと感じます。オーガニックやグルテンフリーという情報も大切ですが、たとえば生産者から届く「冬、水道が凍ってとても難儀していますが、地元の人はびくともしていません」とか、「さとうきび畑を子どもたちが走り回っています」というささやかな日常をお客さまに伝えたい。それによってお客さまとの会話も弾みますし、生産者自身についても知ってもらえます。それができるのが直売所ではないでしょうか。
私たちの仕事は、つくり手とお客さまを“つなぐ”こと。いいことも悪いこともひたすら話しまくって、お互いの声を届け合うことで、商品を通したよりよい関係を築けると思います。