角野史和さんが選ぶ、道の駅をつくる本5冊
そのため僕は、まちづくりコンサルタントとして、1つの課題だけでなく、そのほかも総合的に解決することを目指したり、より深く地域と関わりを持つために、一定エリアへの支援に特化した活動をしています。
まちづくり・場づくり、あるいは道の駅でも、たとえば「みんなで一緒に防災やりましょう!」といった、お仕着せ的な呼びかけで進むこともありますが、僕はそれよりも地域住民それぞれの興味の中から自然発生的に湧いてくる取り組みのほうがおもしろいと考えています。
『種をまく人』は、荒れた空き地に女の子が豆の種を植えたことがきっかけで、街の人たちが各自でさまざまな活動をしはじめた結果、空き地だけでなく、エリア一帯がとても魅力的な場所になったという話で、理想的なプロセスだなと思います。実は僕がコーディネートした神戸市の「多文化共生ガーデンプロジェクト」で、阪神・淡路大震災で被災して手つかずになっていた“空き地”を地域住民や定住外国人が交流する場として再生させたプロセスと似ているというので、友人から紹介してもらった本なんです。作中には“コーディネーター”のような立場の人も登場していて、僕の役割にも近く、拠点にはこんな人もいるといいです。
次にまちづくり、場づくりを進めるうえでは、その街の人たちのモチベーションの形成がとても重要だと考えています。たとえば、街を知るプロセスがあれば、次第に興味や愛着が湧き、守りたいと思うようになる。街を知り、愛することは地域防災の動機付けになるのです。
『路上觀察學入門』は、普通に街を歩いていても気づかないものを可視化する喜びと方法をまとめた本で、観光地と比べると自分が住んでいる街は面白くないなと思っていたとしても、この本を読んでから自分の街を歩くと、おもしろいものがたくさんあることに気づくと思うんです。
自分が暮らす地域のよさを知れば、「住んでいる街」から「わたしの街」へと少しずつ変容し、それが帰属意識や愛着、そして地域を守る防災意識にもつながるでしょう。もちろん、防災視点で真面目に自分の街を見るのもよいですが、まずは目的を決めずに、楽しく街を探索することから始めるのがオススメです。