O&M領域のDX化で、生産性と地球環境をより良く。「かっこいいプラント業界」を目指して

O&M領域のDX化で、生産性と地球環境をより良く。「かっこいいプラント業界」を目指して

2021.10.29

日揮株式会社 デジタルイノベーション室 金丸剛久氏(写真左)
株式会社Arent 代表取締役 鴨林広軌氏(写真右)


世界80カ国で2万件以上の石油精製、石油化学、天然ガス処理など各種プラント建設の実績を持つ世界有数のエンジニアリングカンパニー・日揮ホールディングス株式会社は11月、国内製油所や石油化学・化学プラント向けスマート保全サービスINTEGNANCEをアップデート。

3Dビューアによるプラント保全のスマート化を図る「INTEGNANCE VR」を開発、プロトタイプを11月1日にリリースします。「人と地球の健やかな未来づくりに貢献する」を掲げ、脱炭素社会に向けてエネルギー転換やライフサイエンスなど成長分野に取り組んでいます。

「INTEGNANCE VR」は3次元CADの開発力で建設業界のDX化をドライブする株式会社Arentによる最先端テクノロジーを活用。事務所にいながら360°パノラマ写真と3次元形状モデルを組み合わせた3次元情報でプラントの各設備を認識できる、まさにプラント向け“Googleストリートビュー™”。プラントのO&M領域(オペレーション&メンテナンス、以下O&M領域)でDXを進める意義やプロジェクトを進めることで得た気づき、今後の展望について日揮株式会社デジタルイノベーション室 金丸剛久氏、株式会社Arent 代表取締役 鴨林広軌氏にお話を伺いました。


O&M領域にこそDX化が不可欠。技術やノウハウをソフトウェア化して持続可能に


今回DX化に取り組まれているプラントのO&M領域、なぜここに注目されたのでしょうか。


金丸 ハウスメーカーや自動車メーカーは自社商品を必ず自社でメンテナンスするのに対して、プラントメーカーは建設しても、保全に関してはメンテナンス会社が行っている場合が多い。例えるなら「F1マシンは造るけれども、レースはドライバーとメンテクルーで走る」そのようなイメージです。私はそれではレースに勝てる強いチームになれない気がしていました。設計業務に携わる中で「現場の困り事が分からなければ、設計の進化は不十分だ」と感じ、現場に出ようと考えたのは大きなきっかけでした。

鴨林 O&MのDX化、この話を聞いたときに調べてみてまずわかったのはO&M分野は成長産業であることでした。建築コストよりもはるかにコストがかかる修繕と運用、オペレーション。そこに改善のし甲斐があるのではないかと。DX自体は人をなくすものではなく、人に力を授けるものだと思います。コスト面でも間違いなく圧倒的に大きいメリットがあるO&M領域のDXは正しい道筋だとお話を聞いたときから感じていました。

金丸 Arentさんとの取り組みを始めて感じたこととして、常に先回りしていってこちらの思考を読み取ってどんどん提案が上がってくるスピード感も大きな気づきでした。

鴨林 チームとして動くには、毎週のようにディスカッションさせていただいて、しっかりとやりとりしながら進めていくことが大切だと思っています。「今の進捗状況はこんな感じです。この辺りに関して違和感ってありますか?」というような感じです。



Arent社のカルチャーとして「一緒にやる方をエンハンスする」というカルチャーがあるように思いますが、どう考えていらっしゃいますか?

鴨林 そうですね。ベンダー側には業務知識はないけれど、IT知識はある。一方でユーザー様側は、IT知識はないけれども業務知識はある。この非対称性があるままに仕事を進めてしまうと良くないと思っています。なので一緒にそのギャップを埋めて、チームとして進んでいきませんか?というのが我々のスタンスですね。我々も業界についてキャッチアップをして、レベルを上げながら取り組んでいます。

金丸 Arentさんは非常に頭の回転が速く、柔軟性がものすごく高いです。やっぱり関係者が増えると利権や作法を気にする場合もあると思いますが、「前に進めるには何が一番最適か」ということをいつも考えていらっしゃるような気がします。

単なるITパートナーではなく、戦略パートナーとしての関係


今回Arent社にご依頼された経緯とその背景にあった課題感、ご一緒してみてのお互いの気付きを教えていただけますでしょうか。


金丸 O&M領域のDX化がお客様からお聞きしている課題の解決策になるのではないかという仮説を持っていたので、それを検証してくれるITに強い企業を探していました。その中で紹介されたうちの1社がArentさんでした。パートナー探しにおける一番のポイントは、我々の業界に精通し、我々の話す言語を理解してくれる企業という点でした。Arentさんがこの点に応えてくれたことは大きかったですね。

あとこれは期待していなかった副産物なのですが、ArentさんはITに強いだけでなく、参謀や軍師のように戦略的な部分にもガチッと入り込んでリードしてくれる存在です。ITパートナーというだけでなく、何かを成し遂げるための「戦略パートナー」として、非常にいいパートナリングができたと感じています。

鴨林 弊社では様々なプラントエンジニアリング会社様との取り組みを行っていますが、各社でそれぞれカラーが違うんです。日揮様は外部の力を非常にうまく使われている印象もあります。ITの部分と「新しいデジタルビジネスを戦略的に生み出すにはどうすればいいか」という部分で弊社を活用いただいているように、他の部分でも色々な外部の方をフットワーク軽く使われています。ビジネスとして作りたいものがあるときに、自社に足りないものを外部から取り入れるスタンスがあるのを感じますね。金丸さんだからこそかもしれませんが、企業文化としてもそれが強い気がしています。

O&Mの効率化が脱炭素のカギ。DXの役割は「見える化」


今回開発された3Dビューア「INTEGNANCE VR」は、広大なプラント内の運用・保守業務を大幅に効率化するものですね。2030年度の温室効果ガス「46%減目標」について、プラント施設や大規模工場のO&Mの効率化がどれくらい必要なのか教えて下さい。


金丸 プラントには我々でいうEPC(Engineering、Procurement、Construction; 設計・調達・建設)の段階と、完成したプラントを使って生産するオペレーションの段階、設備を管理するメンテナンスの段階があります。それぞれの段階でCO2がどれだけ排出されているかというとおおよそ建設が10%ほどに対して生産が90%となります。

生産段階において化石燃料を使用する限り温室効果ガスは減りません。46%の削減を目指すのであれば、オペレーション領域の技術開発を進めていくことが一番早いということになります。それと同時にプラントのライフサイクルが何十年も続いていくことを考えると、メンテナンス領域も非常に重要になりますよね。このメンテナンスという領域は設備を持っている限り必ず関わってくるところです。

今はArentさんと一緒にオイル&ガス産業、特に国内の石油精製、石油化学に注目しています。ここで培ったO&Mの効率化のノウハウは、必ず大きな設備を持っている企業様でも横展開できるでしょう。「温室効果ガス46%削減」の目標は2050年にゼロにするための指標のはずです。「INTEGNANCE VR」はそのゼロに向かっていくプロセスを可視化するツールだと見込んでいます。



鴨林さんは今回「INTEGNANCE VR」のオーダーを頂いたときに、温室効果ガス46%削減の目標に対してはどう思われたんでしょうか。

鴨林 「ITの力でどこまでいけるのかは未知数だな」と正直思っています。ITだけでは当然だめで、プラントの根源的なところから変えないと達成できない数字だと思いますね。それでもITの力でどこまで改善できるのか、非常に魅力的なチャレンジだと考えています。



プラント業界は海外進出が活発ですよね。国によって気候や技術の質などにばらつきがあるとすると、その対応の難しさをどう見ていますか。

金丸 今肌で感じているのは労働力の減少にともなって設備をきちんと見られる人が減っていく中でなおのことDXに注目が集まっていることです。ただ我々が国内で成功したソリューションをそのまま海外展開しようとしても必ずしもうまくいくとは思っていません。それぞれ課題が異なるものです。そこで海外の事業主が抱えている課題は何なのか、生の声を聞いて掘り下げていく必要がありますね。



Arentさんは海外を見越して展開されていますが、そのあたりのお悩みをどう考えていらっしゃいますか。

鴨林 ITは「見える化」を期待されていることが多いです。そのため問題がどこにあるかを確認するためにもプラント全体の見える化は必須。これは国内でも海外でも変わらないですね。

金丸 労働人口が減少傾向にある日本でも人材豊富な海外でも、設備がある限り人をゼロにすることは当面できません。必ず現場での作業は発生します。その時、人がいかに効率的に正しく行動できるかをサポートするためにデジタル化やAIは役立つ技術だと思います。その点において鴨林さんが言う「見える化」の必要性は世界共通認識ですね。

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