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『鶴頸種苗流通プロモーション』代表|小林 宙さんが選ぶ、「農度」を高める本5冊

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私たちが日頃食べている野菜や果物、何げなく見ている植物も、始まりは種。中学生のときにそんな種に着目し、活動を始めたのが小林宙さんだ。小林さんの独自の視点から、種苗の世界に親しみやすい5冊を紹介。

小林 宙さんが選ぶ、「農度」を高める本5冊

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(左上から時計回りに)2.『新・種苗読本』/1.『伝統野菜をつくった人々 ─「種子屋」の近代史』/3.『日本の品種はすごい』/4.『菜の辞典』/5.『どんぐりノート』 
 今回の選書のテーマが「種苗」だと聞いて、ぜひ担当したいと思いました。実は、種苗に注目していただける機会はなかなかありません。僕がメインにしているのは伝統野菜で、「これを途絶えさせたくない」と2018年に起業しました。種はもちろん、その野菜の食文化も残していきたいと思っています。なぜ残したいかと言えば、単純に選択肢がたくさんあったほうが文化として豊かでおもしろいと思うから。これまでは主に科学化・工業化した方法でつくられた種によって豊かな食生活を営んできたけれど、その一方で品種の多様性が失われつつあるので、今は古くからある種を見直す時期にきていると思います。

 本格的な種苗会社は明治時代に生まれました。それまでは個人の農家が自ら種採りまで行っていたから買う必要がなかったのですが、よりよい種をつくろうとして商売が始まりました。そんな種子屋についてまとまっている良書が『伝統野菜をつくった人々─「種子屋」の近代史』です。現存している数軒の種子屋を軸に歴史が書かれています。明治時代以降、種は軽いので通信販売の先駆けとなり、全国各地へ普及して、どこでも同じ野菜がつくられるようになりました。こういう本から日本の歴史の知識が増えると、種苗の世界がよりおもしろくなっていきます。

 種子屋は一般の人にとって遠い存在ですが、今回紹介する5冊を通じて、種をつくっている人にも注目してもらえたらうれしいです。野菜を食べるときにそれを育てた農家さんに感謝する人はいると思うのですが、時間をかけて品種をつくった人も偉大だと僕は思うのです。

 種苗会社の現場の人が「種苗」について記した本は少なく、『新・種苗読本』が全体像を掴める唯一の本と言っても過言ではありません。種子や苗の生産や管理、種苗関連の法令など、俯瞰した正しい知識を身につけられる参考書としておすすめです。種苗に関わる人、興味がある人すべてに読んでいただきたいです。

 種苗に関心をもつ人は年々増えていると感じています。でも、一部には関連する法令や「種苗」に関する知識が不足したまま活動している人もいるので、知識を深める5冊を選びました。今後は種を売ることだけでなくて、各地で行われている種苗の交換会に積極的に参加し、各所の懸け橋となれるようになれればいいなと思っています。

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こばやし・そら●『鶴頸種苗流通プロモーション』代表。2002年、東京都生まれ。中学3年生のときに伝統野菜を主とする種と苗を販売する会社を立ち上げる。著書に『タネの未来─僕が15歳でタネの会社を起業したわけ』(家の光協会)がある。
photographs by Yuichi Maruya text by Yoshino Kokubo
記事は雑誌ソトコト2022年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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