鳥取大学地域学部准教授|大元鈴子さんが選ぶ、「農度」を高める本5冊
このように、因果関係が見えにくくなっている食の生産と流通を見えやすくするためのツールとして認証制度を役立てることができます。「ローカル認証」は、食と地域の課題の関連を見えるようにする仕組みです。例えば、兵庫県豊岡市の「コウノトリの舞」認証も、地域限定の「ローカル認証」です。減農薬や無農薬で米をつくることで、田んぼにカエルやドジョウなどの生き物が戻り、それを日本では一度絶滅したコウノトリが捕食するという地域の生態系を復活させました。農家は米と同時に、コウノトリの餌場をつくるという「共生関係」を築いたのです。「コウノトリの舞」認証は、この根拠を伴ったストーリーが流通の中で消えることなく消費者まで届くことを可能にしています。それは「地産地消」ならぬ、豊岡市という地域と生産者のことを知って買う「知産知消」と言えるでしょう。
また、ヴァンダナ・シヴァの『Who Really Feeds the World?』には、「フード・サヴェレンティ(食の主権)」という言葉が何度も出てきます。人々は、健康的で文化的なものを食べる権利を持つと同時に、生産者は、自分の土地にあったつくりたいものをつくる権利を持ちます。ほんとうに世界を養っているのは誰かという問いに、それは、大量の化学肥料や農薬の投入を必要とする工業化した農業ではなく、自然の摂理に沿って、ていねいにタネを継いできた小規模農家なのだ、ということを再認識させてくれる良書です。