お金(金融)は範囲の広いジャンル。ローカルプロジェクトでお金が必要なときにも多様な調達方法がある。ここではお金を集めるためのさまざまな「分野」がわかる5冊を紹介。「おもしろいかどうか以上に、新しい視点づくりのために読んでほしい」と新井さん。
新井和宏さんが選ぶ、ローカルプロジェクトのアイデア本5冊
『人間主義的経営』は、イタリアの小さなまちを一企業がインフラも含めて担っている事例です。まちそのものを持続させながら会社もきちんと上場させている。大きな企業が地域のために活動し、それを応援する人たちが株主になっている稀有な例で、そのあり方には学びがあります。このように運営できないことを言い訳をしてはいけないという、メッセージとしても発信したいですね。
『茶色のシマウマ、世界を変える』は、インターナショナルスクールを設立した小林りんさんの活動を追ったノンフィクションです。おもしろいのは、資金調達の方法にふるさと納税を利用していること。今は地域振興につながる事業の支援もふるさと納税に組み込んでもらえるんです。そのための手法の話はありませんが、ふるさと納税は返礼品ありきで考えがちな風潮がある中で興味深く、健全な例を出せているといえます。
最新刊ということで『捨てられる銀行4』を選びましたが、このシリーズはすべておすすめです。銀行が数字で測れる担保だけで融資を決めていた時代は変わりつつあります。ローカルプロジェクトで金融機関に打診したけれど断られて……と閉塞感を覚えた方には、イメージとは違う金融があることも感じていただけるのでは。金融機関側の目線でファンドレイジングの苦労が語られてもいますので、視点を増やすのにもいいでしょう。
『「社会を変える」お金の使い方』は、お金を集めるのが苦手で、よくないことだと思ってしまいがちな人にとくにおすすめしたいですね。寄付をたくさん受けられるのは「バリューがあるから」という前提に立ち、寄付を受ける組織を運営していくために必要なこと、どうやって寄付する、されることが理想なのかなどが書かれています。
今回挙げたものは分野のほんの一部です。今後は金融も多様化していきますので、固定化された頭にならず、金融に対する認識をアップデートしてもらえればと思います。