特集 | まちをワクワクさせるローカルプロジェクト
ローカルプロジェクトを起業(起業支援)するとき、読んでほしい本|山元圭太さん
スキルセットも、マインドセットも。東洋の考え方も、西洋の考え方も。まちを耕す手法も、自分を整える手法も。
「地域でプロジェクトを起こす人こそ、ひとつの考えに固執せず幅広い視野を持つことが大事」と話す山元さんが、バランスを意識して選書してくれました。
問題が複雑に絡み合ういまの社会には、個別組織の課題解決だけではなく、まちや地域などのエコシステムを豊かにすることも必要なのではと考えて、『喜代七』を創業しました。現在は「地域を育む生態系をつくる」を目的に、全国のまちづくりにも携わっています。
山元圭太さんが選ぶ、ローカルプロジェクトのアイデア本5冊
『ワーク・シフト』は、自分の独立起業の決断に大きな影響を及ぼした本です。この本には、「これからの時代を生き抜くには複数の分野で高度な専門知識を身につけ『連続スペシャリスト』になることが重要だ」と書かれています。RPGでも「魔法使い」と「剣士」を経験し、両方のスキルを備えた「魔法戦士」になることができますよね。これを繰り返すことで自分が貢献できる価値が上がっていく。僕も「経営コンサルタント」と「非営利組織のファンドレイザー」という経験をかけ合わせて「非営利組織専門コンサルタント」というマニアックで希少性の高い職業をつくりました。その職能が自治体や地縁組織から必要とされて相談を受けるようになり、いまでは「地方創生アドバイザー」もしています。ローカルプロジェクトを始めるというと、一大決心で取り組まなければ、と思うかもしれません。でも、「とりあえず5年やろう」という軽い気持ちで始めてもいいと思います。そこで得たスキルをもとに、次の5年はまた別のことに注力する。「そういうキャリアの重ね方もあるよ」と伝えてくれる本です。
ただ、地域で物事を進めていくと、思わぬ困難にぶつかるものです。「課題を特定し、対策を考え、優先順位をつけて取り組む」という従来のやり方が通用せず、精神的に参っていた僕を救ってくれたのが、『ネガティブ・ケイパビリティ』でした。「答えの出ない状態」を無理に解決しようとせず、受け入れ、漂い、味わう。その過程で共感力が育まれるし、好機となる機会は必ずやってくる。起業や起業支援で行き詰まったときにこの考え方を知っていれば、少し楽になるはずです。
『忠吉語録』は、僕がアドバイザーを務める島根県雲南市における伝説の社会起業家・佐藤忠吉さんの言葉をまとめた本です。雲南に限らず、どんな地域にもその土地の”魂“とでも言うべき人が必ずいます。地域を耕してきた先人の思想や哲学を無視して、合理的に見える手法だけ試していてもプロジェクトはうまくいきません。手記や伝記を読む、ご存命なら話を聞きに行く。「地域の魂に触れる」ことが大切です。
photographs by Yuichi Maruya text by Emiko Hida
記事は雑誌ソトコト2022年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。